▲TOP ▲鉄道ジャーニー

旅は道連れ ~ゴールデンウイークを韓国で遊ぶ~
1日目
異国のモーターショーに潜入

1日目2日目3日目4日目5日目延長戦
 ■ 結成、韓国旅行団

 昨年9月の渡韓から8ヶ月。少し頻繁な気がしたが、ゴールデンウイークも玄界灘を渡ることにした。いつも通り、ビートル&コリアレールパスを利用しての4泊5日の旅だ。

 今回の違いは、旅の仲間が4人いること。もともとは、職場の同期と共に行こうと募集をかけていたのだが、思うように集まらず離脱者もいて、残ったのは2人。一方で福岡の友人も行きたいと言い出し、旅は道連れ!と両者をくっ付けて、総勢5人の韓国旅行団が結成された。

 自由は利かなくなるグループ旅行ではあるけど、自分一人では行かないような場所に行けたり、他人の感性やモノの見方に触れられたりするのは、また違った楽しみでもある。「いつもの韓国」とは一風変わった側面を見ることができそうだ。

 今回の登場人物とプロフィールは、以下の通り。
・こんちゃん…職場の同期。旅好きで韓国も3度目。
・クラキチ…職場の同期。ボランティア仲間でもある。
・たっちゃん…福岡市在住の建築家。最近上がり調子。
・おかちゃん…大牟田在住の自動車屋。今回初対面。

 ■ 味気なくなったきっぷ

 5月1日、近所の西鉄天神大牟田線・花畑駅から旅はスタートした。

 クラキチは、県南の西鉄沿線住民なので、車内で合流。西鉄電車は朝の上りに特急電車の設定がなく、小まめに止まる急行電車に揺られること40分で福岡へ。バスで港に出れば、JRで先着していた こんちゃんが待っていた。ややあって、南区からタクシーを飛ばしたたっちゃん、おかちゃんが到着。無事集合、幹事は安心。

 繁忙期には大行列になるビートルのカウンターだが、今回は行列が短く、喧騒も薄い。往復のチケット予約のために、キャンセル待ちをかけたり、何度も予約電話をかけたりとだいぶ苦労したのだが、便数が例年に比べると絞られた分、人も少ないようだ。

 今回も旅で利用するチケットは、お馴染みコリア&ビートルパス。ビートル往復に韓国鉄道パスが付いて5日間有効、2万8千円で、ゴールデンウイークでも割増がないのが嬉しい。毎度ワンパターンだとは思うが、福岡から渡って韓国を自由に楽しむなら、一番お得なチケットだ。

 10時発のビートルは、定刻に博多港を離れた。大海原に踏み出せば、3時間の洋上の旅。昨日は職場の歓迎会だったので少し眠く、1時間ばかりうつらうつらしたが、毎度ながら退屈な時間ではある。薄めの文庫本1冊でも持ってきていると、ちょうどいいかもしれない。

 しかし釜山港内に入ってからの風景は、毎度ながら圧倒される。長崎市の規模を10倍にすればこうなるかなと思える、山の上にまで並んだ高層住宅街が迎えてくれた。その数も、来る度に増えている印象を受ける。港を一跨ぎにする巨大釣り橋も建設中で、次に来る時にもまた違う景色が広がるのだろう。

 細いタラップを通って韓国への一歩を踏み、5人とも問題なく入国手続きを終える。両替、携帯のレンタルと、いつも通りの手続きを踏んで、僕は再び、韓国市民へ戻った。

 あれやこれやで昼も2時前、いい加減お腹も空いたので、港から駅への道すがらにあった食堂で、汁物系を5杯頼んで味比べをしてみた。豆腐チゲは辛すぎとの声、一番口に合うのは、これも「やはり」のプルコギベースの汁だった。さっそくの韓国らしい食べ物に、一同、この先ちゃんと食っていけるだろうかとの心配が湧き上がっていた。まあ最初は、そんなもんさ。

 道に出ると、レッカー車が路上駐車の一斉撤去に乗り出していた。違法駐車の多さは取り締まりの甘さが原因の韓国で、この手の作業に出くわしたのは初めて。その乱雑さたるや衝撃だ。車輪を引っ掛けきれずに落とすわ、サイドブレーキそのままで無理矢理動かすわ、警報装置ががなり立ててもお構いなしだわ。車屋のおかちゃん曰く、まず間違いなく車はダメージを受けているはずとのことだ。

 釜山駅に出ると、広大な駅前広場を真っ赤な集団が埋め尽くしていた。今日は5月1日、メーデーだ。各労組が集まり、労働者の窮状を熱く訴えていた。違法駐車の一斉撤去も、メーデーでの混雑を見越してのものだったようである。

 今日は列車に乗らないが、明日から利用するチケットを入手するため、釜山駅のカウンターに並んだ。1枚でも時間のかかるバウチャー(引換券)からKRパスへの交換だが、5枚ともなると、かなりの大仕事。指定券の発行まで、ゆうに30分は要した。まわりを見れば、同じように交換を求める日本人だらけで、いつの間にやらKRパス、すっかり定着してしまったようである。繁忙期には、専用窓口を設けても良さそうである。

 座席指定券は、これまでの自動改札機対応のカードタイプから、レシートのようなペラ券に変わっていて残念。現在の韓国鉄道は、車内改札はもちろん、駅での改札も原則廃止になっており、自動改札を噛ませる必要がないならというわけで、簡易な様式に変わってしまったようだ。感熱紙なので保存もきかず、切符を記念にしたい向きには残念な変更である。

 なお車内改札がないとはいっても、予約のない席に座っていれば車内改札は回ってくるし、正当な乗車券を持っていなければ10倍の罰金が課される。異国でのキセル乗車など、ゆめゆめ企てませぬよう。



▲いつも通りの博多港から出発


▲出航を待つビートル


▲違法駐車の列。この直後、一斉撤去されることに…


▲人垣集まる釜山駅

 ■ 異国のモーターショーに集う

 さて、今日最初の目的地は、海雲台で開催中の「釜山モーターショー」。ビートル船内の西日本新聞で開催を知り、車屋のおかちゃんから是非行きたいとのリクエストがあったのだ。西日本新聞に会場の場所までは書いてなかったが、案内所で聞いてみれば、予想通り海雲台(ヘウンデ)のコンベンション施設、BEXCOとのこと。海雲台方面はもともと行く予定だったので、異存はない。

 しかも海雲台方面には、2階建て観光地周遊バスの「釜山シティツアー」が走っており、ぜひ2階から海雲台のビーチリゾートを眺めてみたいと思っていた。ところがKRパスの引き換えに手間取ったお陰で、発車時間ギリギリにバス停に着いてみれば、既に満席。2階がオープンデッキになっている楽しいバスだっただけに、かなり残念だ。しかも次のバスは40分後で、モーターショーでの時間を考えれば待ってもおれず、タクシーに転進してみた。

 5人なので、模範タクシー(1クラス上級のタクシー)乗り場でバンのタクシーがないか聞いてみたが、今は駅周辺にいないとのこと。模範タクシーなら大型なので、そのまま5人乗ってしまえば一般タクシーより安いとのありがたい?言葉を受け、ギュウ詰めで黒塗りタクシーに乗り込んだ。韓国、車の「定員」という概念はあまりないように感じている。

 勢いよく走り出したタクシーは、釜山駅の裏手に回り込み、海岸を爆走。よく見れば運ちゃん、メーターを倒しておらず、明瞭会計がモットーの模範タクシーがこれでは困る。もっとも料金確認を事前にやったし、無理して大勢で乗ったのだから、細かいことは言うまい。

 広安里(クァンアンリ)のビーチをまたぐ釜山のシンボル、広安大橋を渡る。ぜひ一度渡ってみたかった橋で、遠く右手にビーチのリゾートが広がる。2階建て構造の橋で、海雲台方面は1階。空は広がらず、ちょっと残念ではあった。

 BEXCO周辺は、モーターショーの影響でか大混雑。運転士さんは混んでない方向に迂回するとか言っていたが、大回りしたところでそこも大渋滞だ。駅のタクシープールのおじさん曰く、30分くらいで行けるとのことだったが、結局40分以上かかって着いた。請求額はなぜか4万ウォン。もめるのも面倒になり、そのまま払う。

 モーターショーのチケット売り場の列もはるかに長く、いったい何時間かかるものやらと気が遠くなったが、手際がよくどんどん進み、15分くらいで入場券を入手できた。BEXCOに来るのは2度目だが、中まで入るのは始めてのことで、楽しみだ。

 入ったとたん、スバルのブースがあり、日本勢も頑張っているなと嬉しくなる。近年、輸入車の売れ行きが好調な韓国、それも日本車の売れ行きが上々で、モーターショーでのアピールにも力が入っているらしい。

 しかし、やはり主役は韓国の国内メーカー。スバルとは比べものにならないほどの会場規模で、売れ筋の車からコンセプトカーまで、まさに最先端の車が並ぶ。車よりも、明らかにコンパニオンへレンズが向いているカメラ小僧が多いのも、日本のモーターショーと変わらない。

 個人的に興味があるのは、コンパクトカー。韓国の軽自動車の代名詞とも言えるマティズは、軽自動車の1000ccへの規格緩和を受けて、かなりしっかりとした車にモデルチェンジされていた。特に後部ドアのノブが、高級外車よろしく窓の横に付いており、あたかも2ドア車のように見えるようになっているのは特筆もの。これなら、韓国で嫌われていた「軽」のイメージを、だいぶ払拭できたのではないかと思う。

 もう一つの関心はバスで、低床バスやハイブリッドバス、観光バスの最新車両が並んでいた。特に観光バスはミラー周りのデザインが優れており、日本車というよりはヨーロッパ車に近いイメージがある。ただ車内はお馴染みの安っぽいレザー張りシートで、特に従来の高速バスから脱却した印象はなかった。

 閉館時間ギリギリまで異国のモーターショーを楽しんだ後は、お隣の新世界百貨店も冷やかす。ロッテの牙城だった釜山の百貨店業界に殴りこみをかけ、「世界最大のデパート」という触れ込みも名高い新世界。なるほど大した規模で、使っている建材に投じられている費用も半端なものではないと察する。屋上庭園も気持ちいい空間に整備されており、都会の真ん中らしからぬ憩いの場になっていた。

 


▲高層ビルが林立する海雲台


▲一大コンベンション施設・BEXCO


▲後部ドア周りに工夫が見られる「マティズ」


▲ミラー周りのデザインがヨーロッパ調の大型バス


▲よく芝が手入れされた新世界の屋上庭園

 ■ 学生街で肉を食らう

 センタムシティー駅で、僕以外全員分の釜山交通カードを買い込む。釜山では切符で地下鉄に乗るのも難しくはないが、ソウルでは紙切符が廃止されて「1回用交通カード」に変わったため、カードがないと面倒なのだ。釜山とソウルの交通カードは共通化が図られたので、今のうちに買っておこうというわけ。 

 2号線から3号線に乗り換え蓮山洞(ヨンサンドン)駅へ。さらに1号線の上りに乗り継いだところで、おかちゃんがおじいさんから声を掛けられた。もちろん言葉は通じず、僕にパス。おじいさん曰く、ムルマンゴルがなんとか…

 ムルマンゴルって何だと一瞬思ったが、3号線にそんな駅があったことを思い出した。印象的な名前なので、記憶に残っていたのである。それは3号線の駅なので、さっきの駅で降りなければならなかったんですよ。次で降りて、反対側の電車で戻って、乗り換えてください。大変ですね、と必死に説明したが、さて分かってもらえたかどうか。釜山の地下鉄で道案内をしたのは、これで2度目である。

 東菜(トンネ)温泉最寄りの、その名も温泉場(オンチョンジャン)駅で下車。徒歩10分弱で温泉街へ。今日の泊まりは、泉一温泉ホテルなる温泉旅館だ。日本から予約して、2部屋で8,550円。一人当たりにすれば2千円にもならないのだから、やはりグループ旅行は経済的である。

 そして温泉ホテルだけに、1階には公衆浴場を兼ねた大浴場があるし、各部屋にもタイル張りの浴槽が付いている。ユニットバスでないのが嬉しいが、ひとまずは腹も減ったので、街に出よう。

 温泉場周辺にも飲食店街はあるのだが、賑わう街を見たくて、タクシーを飛ばし釜山大学へ行ってみた。釜山大学の正門には、斬新なデザインの巨大複合施設が…と思ったら、何とこれが釜山大学の持ち物のビルというから驚いた。3年前に来た時には、官民協同出資による駐車場整備を行っていたが、より民間活力を活かした整備を行っているらしい。

 学生で賑わっていたこぎれいなテーブル式の焼肉屋に飛び込み、まずはサムギョプサルをオーダー。本当に学生向けの安い店だと、薄い冷凍肉が凍ったまま出で来るものだが、ここは生の厚手の肉が出てきて、高級感がある。炭火焼というのも嬉しい。それでもたらふく食べて飲んで、一人千円少しなのだから、やっぱり海を超えて来た甲斐があるというものだ。

 肉を頼むと、つけ合わせの野菜、キムチがどさっと出てくるのも韓国の嬉しいところ。お代わり自由というのも基本だが、日本式のサラダバーよろしくセルフサービスになっていたのが目新しかった。お代わり方式ではどうしても残りが出てしまい、無駄との声も多いらしい。特に若者ならば、セルフ方式でも受け入れられるものではないかと思う。

 学生街の喧騒を楽しみつつ、地下鉄で温泉場へバック。ホテルに戻れば時間は0時を回っていたけど、せっかくの温泉がもったいないとばかりにお湯を貯め、ぐったり浸かる。強い匂いも、特徴的な肌触りもないが、かすかに感じる感覚は、まさに温泉水。良く温まり、バタリと眠った。

 


▲壮大な城のようなセンタムシティー駅


▲国立大学のものとは思えない釜山大学の複合施設


▲今日の夕食は豚焼肉


▲タイル張りの温泉浴槽

▼2日目に続く
inserted by FC2 system