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旅は道連れ ~ゴールデンウイークを韓国で遊ぶ~
5日目
これも経験

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 ■ 2時間ミッション

 河回村に、今日も新しい一日がやってきた。朝もやこそかかっていないが、爽やかな風が流れ、気持ちいい空気の中を散歩した。

 今朝は朝一番のバスで出ることにしていたので、宿と食事代の勘定は昨晩のうちに済ませておいた。おばさんは、僕らが遅くまで食べていたので、夜も遅くなったのだろう、まだ起きられていない。先に寝ていたおじさんは起きていたので、よろしくと伝え民泊を後にした。

 7時15分発のバスはあまり飛ばさず、さりとて行きより時間がかかったわけでもなく、安東市内へと戻る。さらに高速バスを乗り継いで、東大邱へと戻った。

 KTX全盛の中で、希少な存在になってきた京釜間直通のセマウル号に乗り、釜山へ。座席周りのゆとりはKTXの比ではなく、子供の日とあって家族連れを中心に満員の盛況だった。ただセマウル号の場合、立席券の販売がないため、ぎゅう詰めの混雑になることはない。KTXに対する在来線列車として一括りに語られるセマウルだが、やはり今でも別格の列車である。

 ムグンファだと立席客で埋まる列車カフェも、本来の姿を保っていた。体中がこっているたっちゃんを、マッサージチェア(10分1,000ウォン)にご案内。僕はその間、ネット接続のPCでメールとSNSのチェックを行う。移動する列車なので携帯電話網を使っているはずだが、500ウォンで10分とまずまず安い。動画の視聴は難しかろうが、一般的なネットサーフィンならば支障なく使える。さすがはネット大国である。

 11時40分、釜山着。予約の船は14時30分なので、手続きの時間を考えれば2時間もない。地下鉄で南浦洞(ナンポドン)へと出て、市場の中に飛び込む。さすがは釜山の旧市街、祭日とあってソウルに負けず劣らず、人でごった返している。そしてこちらも負けずに、日本語での呼び込みが激しい。

 自分たち用のお土産を物色していたら、たまたまCD屋、というか古びていてレコード屋と呼んだ方がぴったりの店にぶち当たった。クラキチの所望の品、まさかないだろう…と思いつつ、店主に聞いてみたら、あったよFT Islandの3集!それも、レジの後ろに大切に取ってあった。日本人にも人気が高いFT Islandだけに、大量に確保しておいているのかもしれない。クラキチに壮大なる貸しができた。

 さらに歩くと、「ロッテスーパー」にぶち当たった。入ってみれば、ロッテならではのクオリティを持ったスーパーマーケットで、これは大発見だ。というのも釜山駅、釜山港の周辺の町で、一般的な大型スーパーがこれまで見当たらなかった。お土産には、韓国の人が普通に買うような食品が一番なのだが、これまではスーパーが見つからず、コンビニで済ますか、わざわざ凡一洞(ポミルドン)駅直結の現代百貨店まで出向いていた。

 豊富な品揃え、良心的なお値段。たっちゃんも、土産全部揃うじゃんとばかりに、次々と買い込んでいく。クラキチから頼まれていたもう一つの土産、かぼちゃ粥も発見し、ミッションを果たしたとばかり、満足満足。店員さんに聞いてみればやはり、昨年秋にオープンしたばかりだとか。便利になった。

 隣のこじゃれた食堂でビビンバを食べれば、短いようで長かった韓国の旅も終わり。さすがに大荷物が辛く、タクシーで港までの道を飛ばす。南浦洞に新規オープンしたロッテ百貨店は、大きく建築的にも面白そう。第2ロッテワールドの計画も進んでいるし、また訪ねてみなきゃなあ…



▲朝の河回村


▲典型的な田舎の古いターミナル、安東ターミナル


▲KTXに伍して活躍続けるセマウル号


▲思いの他スムーズな列車カフェのインターネット

 ■ 非常事態に気付く

 ところで、港に着くまでの間、どこか寝覚めの悪いような感覚を抱いていた。というのも、食堂でカバンの中を見たところ、パスポートが見当たらなかったのだ。まあ、奥底にでも紛れ込んでいるだろう、港に着いてから探せば出てくるさと、楽観視はしていたのだが。

 携帯を返却し、チケットカウンターに向かう前に、荷物をひっくり返してみたのだが、パスポートがないのである、本当に。第三者の視点でたっちゃんにも探してもらったが、やはりない。決定、今日中には帰れない。忙しいたっちゃんを巻き込むわけにはいかず、申し訳ないけどと詫びて一人で帰ってもらうことになった。

 さあ、まずは確認だ。携帯は返却してしまったので、売店でテレホンカードを買い、泊まってきたホテルに連絡。パスポートの落し物はなかったか、大使館から連絡はなかったかと問うて見ても、はばかばしい返事はなし。他に確認すべき場所もなく、終了。

 今日は祭日だけど、ひとまず釜山の日本領事館に連絡しようと、案内所で番号を調べてもらい電話。予想通り留守電になったが、緊急の場合は案内センターへ転送できるというので従ってみたら、男性職員につながった。恐らく、東京に転送されたのだろう。ひとまずこちらの連絡先が必要とのことで、さっき返したばかりのレンタルケータイを、同じ番号で再レンタルする。
 「パスポートはお持ちですか?」
 「そのパスポートを無くしたので、借りたいんです」
 SKテレコムのお姉さん、苦笑い。もう一度レンタルされましたのでと、おまけの歯磨き粉を頂いた。

 改めて緊急案内に電話をかけたところ、必要となる書類を教えてくれた。警察での紛失証明、パスポート用の写真、帰国のチケットを揃えなければならないとのこと。日本で韓国のパスポートをなくした韓国人が帰国に2~3日を要したと言っていたので、そのくらいの日数を覚悟していたが、必要な書類さえ整えれば、1時間程度で臨時渡航書を発給できるとのことだ。

 いずれにせよ今日は祭日なので、明日以降の手続きになる。ビートルの窓口に聞いてみれば、明日の便まで満席とのこと。カメリアライン(釜山~博多の国際カーフェリー)は空席があるとのことで、ひとまずこちらを押さえた。ただし夜行船なので、帰国は明後日になってしまう。仕事にも支障するし、それは避けたいが、帰路の切符がないことには渡航書の発給も受けられないとのことなので、1枚買っておいた。

 ■ 警察とひと悶着

 案内所で聞いた警察署への道すがら、写真館を見つけて証明写真(9,000ウォンなり)を撮影する。よく撮れたので、臨時渡航書はもちろん、パスポートの再発行の時にもこの写真を使おうと思う。

 中部警察所で、かくかくしがじかと説明したところ、落し物の申告は派出所へとのこと。たしかに、日本でも落し物の届出は交番である。手近な中央派出所を教えてもらい、足を向けた。

 立ち番をしていた警察官がいたので、声を掛ける。
 「あの、旅券をなくしたんですが」
 「どこで?」
 「それがハッキリしないんです、ソウルか、釜山か」
 「そんなんじゃ、受付けられんよ」
 「でも実際にそうなんですよ」
 「よく調べろ」
 「調べました。ソウルのホテルにも釜山のホテルにも電話しました、ありませんでした」
 「でもなくした場所も分からないんじゃ、受付けられないから」
 「紛失証明がなければ、再発行も受けられないんですよ。帰るなと言うんですか」
 「場所が分からなきゃどうしようもない」
 「分かりました。なくしたのは釜山です、中央洞です」
 「どうして分かる?」
 「そう言わないと受付けられないんでしょ?」
 「だからよく調べろって」
 「これ以上、何を、どう、誰に聞いて調べるんですか」
 「ソウルに戻って調べろ」

 公文書や公的な手続きにおいて、決まりごとがあるのは万国共通。しかし身分証の所持義務のある韓国で、唯一の身分証を無くした外国人を、そのまま追い返すって、警察としてまっとうな対応なんだろうか?飲酒運転しましたと申告した車を、いいから行けと言うようなものではないか。

 中部警察署に、休日開庁している苦情受付センターがあったのを思い出し、中央派出所の所轄署だろうからと引き返してみた。こちらの担当警察官は、親身に対応してくれて、どういういきさつなのかと中央派出所に連絡してくれた。

 どうやら、旅券紛失という本人過失にも関わらず、申し訳なさそうな態度が見られないことから、厳しい対応になったらしいとのこと。その対応が、追い返すことですか…。

 ちゃんと対応するように伝えたので、お手数ですが再度派出所へということで、短くない距離を引き返す。さっきの警官、どう応対してくれるんだろうと思ったら、開口一番、
 「ガイドはどうした?」
 は?何の話?
 「いくらアンタが韓国語できるって言っても、通訳者がいなきゃ細かい話しまでは通じないだろ。×××がゴニョゴニョ…」
 確かに、僕の韓国語力ではこの警官の話はよく聞き取れない。しかし隣の警官は、
 「おいおい、ちゃんとした言葉で話してやれよ。オレらだって、ちゃんと語尾をはっきり言わないと、分からないことあるじゃないか」
 と助け船を出してくれた。どうやら、ワザと分かりにくく言っているらしい。

 とにかく聞き取りによる聴取は不可と結論付けられてしまい、書類作成に必要な事項を書き出すことになった。住所、氏名、住民登録番号…住民登録番号!?長期在留でもない外国人が持っているわけもないのに、試されているのだろうか?
 「なし(日本に住民登録制度なし)」
 と嫌味のように書いたら、本紙にもそのまま印刷された。

 なんとか紛失証明を手にしたが、どっと疲れた。本来なら今日は、日本に帰っているはずだった日。日本に帰った気分だけでも味わいたくなり、目の前にあった東横イン釜山中央洞にチェックインした。1泊55,000ウォン。何も考えずにゆっくりしたくて泊まってしまったが、ベッドに横になってから、高かったなと思う。

 釜山駅まで歩き、駅前ホテルのサウナに入ったら、7,000ウォンの割に汚く設備も貧弱。しかしこのホテルは1泊35,000ウォン程度だったらしく、サウナも無料だったとのこと。どうも、ついてない。大賑わいの駅前食堂でテジクッパを一人寂しくつついて、大人しくホテルに引きこもった。

 


▲ビートルを見送る(涙)


▲いつの間にやら釜山駅前にチャイナタウンが


▲釜山港の眺めが広がる東横イン


▲夜景もご覧の通り

▼延長戦に続く
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