▲TOP ▲鉄道ジャーニー
1日目2日目3日目4日目5日目

5日目【5月6日】
韓国の故郷の玄関口

ソウル→五松→釜山→博多→久留米



新首都の玄関口・五松駅


▲ソウル駅で並ぶ2世代のKTX


▲五松駅で降りる乗客は、思ったより多かった



▲巨大な駅コンコースは、ガランとした雰囲気

 最終日はゆとりを持って、朝8時起床。海路&陸路のコースで最後の朝をソウルで迎えると、最終日はほとんど移動に費やされてしまう。でも可能な限り寄り道して、最後まで「往路」の気分で旅をしたい。

 忠武路レジデンスにレストランやカフェはないが、朝食にコーヒーとサンドイッチを貰える。韓国のサンドイッチは留学生の頃、あまりのまずさに驚いたものだが、あれから10年。やはりまずかった。好みの違いなのだろうか。

 地下鉄でソウル駅まで出て、下りKTXの人になった。東大邱(トンデグ)までの区間列車で、京釜線では珍しい新型KTX山河の運行である。区間列車とはいえ月曜朝のKTXは、満席近い。スーツ姿のビジネスマンばかりで、9時50分という出発時間を考えると、一度出社して出張に向かう人たちなのだろう。かといって、新聞をめくる音しか聞こえない朝の東海道新幹線とは違い、話すのがはばかられるような雰囲気ではなかった。

 ソウル駅から約40分で、五松(オソン)駅着。KTXの全線開業とともに、既開業区間に設けられた新駅である。停車する列車は多くないのが、案外、大勢の人が降り立った。僕らも続く。新線上の蔚山駅の様子は観察したが、既開業区間に設けられた新駅の様子を観察しようという狙いである。

 五松駅は、在来線の忠北線の駅に併設された。五松駅は僕が10年前に留学していた忠清北道にあり、忠北線もよく利用した思い出の路線。当時の五松駅は旅客扱いを休止しており、駅周囲も閑散とした雰囲気だったように記憶しているが、今はビルが立ち並んでいる。九州新幹線の筑後船小屋が、普通電車のみの停車から、一気に大阪行き新幹線の停車駅に昇格した駅として話題になったが、それをも超える躍進劇だ。

 駅のホームには仮囲いが巡らされており、その壁には、
 「湖南高速鉄道第1−1工区建設工事」
 の文字が。建設が進む様子を見てきた湖南線KTXは、ここ五松駅で京釜線と分岐駅することが計画されている。全通の暁には、乗り継ぎ拠点として重要な駅となるだろう。



 しかし駅舎に出てみれば、ガラン…。店舗もほとんどなく、蔚山駅とは比較にならないほど閑散としていた。駅そのものは大きく立派なのだが、それに見合う乗客で賑わっているかといえば、NOである。大きな駅舎は道の玄関口としての威信でもあるだろうし、将来的な需要増を見越しての投資でもあるのだろう。本領発揮できる日がくるといいのだが。数少ない店舗の中には鉄道テーマカフェ「DEL TREN」があり、鉄道ファンなら退屈することはなさそうである。

 駅を出てみれば、ビル街は少し離れており、駅前はやはりガランとした印象。高架下には駐車場も設けられているが、蔚山ほどは利用されていないようだ。

 ただ五松駅は、韓国の行政機能移転先として計画された世宗(セジョン)市の最寄り駅という、大きなる期待を背負っている。世宗市へのアクセス路線として、4月15日からBRT(専用道を使ったバス高速輸送システム)が走りはじめたばかりだ。BRT乗り場の案内はあちこちにあり、オレンジ色の新型バスが発車していった。

 実はBRTについて知ったのは現地に着いてからで、調べてみればソウル市内や日本の気仙沼・大船渡線のBRTとは違い、クリチバのような立体交差もある本格的なBRTとのこと。事前に知っていれば、乗るように予定を組んだのに! 現在のところは20分間隔での運行、、それもガラガラで走っているような状態だったが、行政機能移転が進むに従って活況を呈していくのだろう。

 忠北線ホームにも降りてみたが、こちらは1日上下各9本の発着しかなく、人っ子ひとりいない。留学当時とほとんどダイヤは変わっておらず、KTXのフィーダー路線として育てていこうという機運にはないようなのは残念だ。個人的には、僕の留学先だった忠州へのアクセスに一番便利なルートであり、いずれまたこのホームから列車に乗る機会もあることだろう。

 KTXの一期開業の際に設けられた光明、天安牙山は、年月とともに発展を続け、停車するKTXの本数も増えてきている。今のところは静かな五松も、この先10年で、大きな変貌をとげていくことだろう。


▲駅からビル街へはほど遠い


▲新行政都市へのアクセスはBRTが担う


▲忠北線のホームは時がとまったかのよう


ガラガラのビートルで日本へ


▲ぐっと雰囲気がよくなったKTX山河の特室


▲ガラガラで心配になるビートル


▲この景色を見ると、福岡に帰ってきた気分になる


 五松からは、再びKTX山河に乗り、一気に釜山まで下る。京釜線のKTX山河は区間運行の列車に限って運用されており、この列車もソウル南部の光明(クァンミョン)始発である。無駄な駅と揶揄された光明も、今や4往復の始終着列車を擁するに至った。それも、ほぼ満席状態である。

 今回の旅最後の列車でもあるので、特室(グリーン車)を奮発してみた。とはいえKRパスと特典で半額になり、邦貨で800円そこそこ。

 接客設備が改善されたKTX山河だが、特室車は従来型KTXと同じ3列の回転式。それでも「ただ広いだけ」で高級感に欠けた従来型に比べ、木目調の壁や間接照明など、ぐっと調度に意が注がれている。リクライニングは電動だ。KTX山河なら普通車でも充分と思ったが、実際に特室に乗ってみると、やはりレベルが違った。

 ミネラルウォーターなどの特室サービス品は、従来型のような自販機からの「取り放題」ではなく、スナックコーナーで受け取る方式に。普通車の客による、無断持ち出しが後を絶えなかったようだ。ただKTXの運行開始当初は、専属の女性客室乗務員が乗り込み、サービスにあたっていた。契約職から正規職への転換を求めストに入り、そのまま解雇。以後復職もかなわず、公社側も「もうこりごり」となったのか、代替要員の採用も行われていない。

 快適に過ごすこと2時間で、釜山着。たまたま釜山に遊びに来ていた友人も合流し、釜山駅新コンコース2階の食堂でランチにした。釜山港を一望できる環境はいいけど、値段の割に味はイマイチな参鶏湯だった。

 乱暴運転のタクシーで港に戻り、2階席へ。連休最終日の午後便という、満席必至の便にも関わらず、2階席はガラガラといっていいほどの乗り具合だった。年間フリーパスや早割など次々に割引を打ち出しているビートルだけど、窮状の裏返しといえば、それも真だろう。

 波高0〜0.5m、つまりほぼ波がないという航海は快適そのもの。映画を見ながら、あっという間の3時間だった。

 博多に着いてみれば、こちらはまだGWラッシュの続きである。「さくら」の自由席の空席に潜り込み、久留米へ。最後の最後だけはGWらしい、5日間の旅だった。

▽目次に戻る
inserted by FC2 system