▲光州松汀に入線するムグンファ1954列車
▲交換駅でのひととき「早く乗って!」
▲田舎の駅でも駅舎は立派
▲レンタルサイクルシステムも都市景観に華を添える
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日本にも増して首都一極集中型の韓国にあって、地方都市同士を結ぶ路線は精彩を欠く。慶全(キョンジョン)線もその一つで、釜山〜順天〜光州という主要都市を結ぶ路線でありながら、順天〜光州では1日にわずか4往復の列車しかない。ソウル、釜山からの距離もあり、なかなか乗ることのなかった路線である。
木浦(モッポ)発、釜山の釜田(プジョン)まで全線を走破するムグンファ1954列車は、全区間に乗れば7時間を超える偉大なるローカル列車だ。大柄なディーゼル機関車に引かれた列車は、客車3両、電源車1両の4両編成。乗車率はざっと3割といったところか。
ほぼ各駅に止まる列車とはいえ、設備的には特急格とされてきたムグンファ号だけに、鈍行といった雰囲気ではない。地域輸送は市外バスが担っており、列車の乗客はちょっとお出かけといた風情の人が多い。
光州市内は線路の付け替えがあったようで、高層アパート団地を見ながら立派な高架橋を駆ける。日本なら無人駅が続きそうな路線だが、RC造の立派な駅が続き駅員が詰めている。日本人から見るとなんとも不可解ではあるのだが、貨物輸送もあり、日本に当てはめられない事情があるのだろう。
地図を見ると、南海岸沿いを走るように描かれている路線だが、実際は海を臨める区間はない。平坦な田園風景が棚田に変わったかと思えば、トンネルで峠を越える。その繰り返しだ。並行する道路は、たいした通行量もないのに高規格化の工事がたけなわ。韓国ローカル線の、典型的な車窓風景である。
これといった車窓の見どころがあるわけではないが、街路樹の並ぶ田舎道や、自然そのままの渓流、新緑に覆われた山など、都会では見られない風景が現れては、消える。スッタタン、スッタタンと刻む車輪のリズムに身をゆだねていると、やっぱり乗ってよかったと思う。
1時間走った梨陽(イヤン)駅では、特に放送での予告はなかったが長時間停車。スマホに入れておいた時刻表を見てみると、姉妹列車ともいえる木浦行1951列車と交換するようだ。ホームに降りて、入ってくる列車を待ち構えていたら、ホームに降りていた車掌さんから早くのるよう促され、乗ったと同時にドアが閉まった。対向列車の到着を待たずして、発車してしまうようである。
瓦屋根の並ぶ、春の陽を浴びた集落の風景に安らぎつつ、2時間半で順天(スンチョン)着。全羅線と交わるターミナル駅だけに、半分以上の乗客が降り支度を始めた。光州以来、初めてみた都会らしい都会である。僕らも、地元の人に続いた。
順天駅は4年前に降りたことがあり、日本の40年代の地方ターミナル駅を彷彿させる駅舎の横で、新駅舎が工事中だった。駅舎のみならず、ホームまで一新されており、以前の面影はない。KTX乗り入れを期に、まるごと作り変えられたようである。
駅前広場も再開発が進んだようで、ヨーロッパで見られるようなしゃれた自動レンタルサイクルのシステムもお目見えしている。順天湾国際庭園博覧会が開催されているらしく、駅前にもよく手入れされたミニ庭園が設けられていた。総じて美しくきれいな街というファーストインプレッションを感じさせられ、こんちゃんもこの街はすごいと目を見張っていた。何事も、第一印象が大切である。
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