▲電車から大勢の乗客が吐き出されてくる朝の電鉄富山
▲進むにつれてローカル風情も満点に(電鉄黒部)
▲新幹線の駅もだいぶ形になってきた
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ダブルデッカーのバスにカメラを向けていたら、不意に背中を叩かれる。出向先の東京の職場から、新宿発の夜行バスで直行してきた、旅の相棒・ザキだ。昨日から着ているクールビズの仕事着そのままで、旅のスタイルとしては無粋この上ない。しかし着替えるような場所もなく、ひとまずそのまま富山地方鉄道(地鉄)の電鉄富山駅に向かった。
七時オープンの切符売り場で買ったのは、地鉄電車2日ふりーきっぷ。地鉄の郊外電車と路面電車が二日間乗り放題で、4,400円である。あまり値ごろ感はないし、明日も使うかというと非常に微妙ではあるのだが、地鉄の運賃は割高なのでモトは取れるはずである。荷物をロッカーに預け、身軽になって旅を始めた。
モータリゼーションで乗客は減少傾向と聞く地鉄だが、早朝七時過ぎというのに、頭端式ホームに到着する電車からは大勢の乗客が降りてくる。そのほとんどがICカード「えこまいか」のユーザーで、カードリーダーに軽く触れて街へと進んでいく姿は、大都会と変わらない。フリー切符の僕らは、アナログに有人改札に提示して改札をくぐる。
まずはザキが臭いので(!?)、温泉に浸かるため宇奈月行きの電車に乗った。元京阪の「テレビカー」で、古いながらも快適な転換クロスシートが身の上。途中駅の富山方面ホームは、通勤通学客で人が溢れる。単線ながら本数は密で、駅ごとに電車がすれ違っていく。
一方、宇奈月行きも逆方向の通学需要があり、次第に混み合ってきた。感心するのは高校生たちのマナーのよさで、多少はざわついているものの、九州のように騒がしいほどではない。身なりもキチンとしていて、好感が持てる。それを「いい」と思うあたり、我ながらオヤジ化しているのかもしれないけど、特筆しておいていい。
高校生たちは滑川市内で降りて行き、魚津、黒部と進むころには、だいぶ余裕も出てきた。地鉄は古い施設も大事に使っており、木造の駅舎や駅名板が昔懐かしい雰囲気を醸し出す。ローカル私鉄の旅を満喫。
一方で沿線では新幹線の工事が進んでおり、地鉄本線沿線でも、黒部宇奈月温泉駅が姿を現していた。地鉄にも接続駅が設けられるとのことだが、今のところその槌音は聞こえてこない。開設の暁には魚津、黒部、宇奈月方面へのフィーダー輸送を地鉄が担うことになるが、地方だと地元民は直接駅に送迎することが多いし、観光客も新幹線駅でレンタカーを借りてしまいがち。新幹線客を取り込むには、新幹線と必ず接続するダイヤにするとか、乗り継ぎ切符を設けるとか、積極的な誘客策が必要になってくるだろう。
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