▲どこまでも続く飛騨トンネル
▲今宵の宿・伊三郎(左)と落ち着いた集落
▲雨に煙る合掌造り集落を見下ろす
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おばちゃんの飛騨牛トークを聞いていたら、いつの間にかバスの時間が迫っていた。高山の古い街並みも魅力的なのだが、今回は10秒見ただけでパス。駆け足でバスセンターへと戻る。
高山から白川郷へは、濃尾バスを利用する。金沢直通便はノンストップの座席指定制だが、各停便は一般路線バスの扱いで、満席になれば続行便を出すとのこと。九割を観光客が占めるが、下校の女子高生も数人が乗り込んできた。路線バスタイプの車体ではあるが、シートはリクライニングで快適である。
高山市内は初乗り運賃が100円と安い。市内のバス停にも小まめに止まり、近距離輸送にも精を出すが、乗降客はほとんどいない。ところが郊外の新しい病院を出発すると、運賃表は一気に2,400円に跳ね上がった。事前に切符を買っていたので驚きはしなかったが、それにしても唐突だ。観光客からも、笑いが起こった。
それにしても、高山〜白川郷間はわずか50分である。2,400円だなんてべらぼうな値段だ、観光客の足元を見た暴利だ!なんて憤慨していたのだが、バスは一般路線バスなのに東海北陸道に入った。真新しい高速道路は、谷を渡り、長大トンネルをくぐる難路。特に飛騨トンネルは11キロと、国内の道路トンネルとしては三位の長さを誇るとか。大変な場所へ走るバスだったのか、高い運賃も仕方がないなと反省。
白川郷の一つ手前・荻町で下車。時間は15時前だが、とりあえず荷物を置きたいので、今夜の宿・合掌造りの民宿「伊三郎」へと登った。白川郷に数ある民宿からここを選んだ理由は特になく、観光協会のホームページで部屋の条件と値段を入力して申し込んだところ、指定されてきた次第。歩きの旅人にはちょっと不便な街外れではあるけど、その分落ち着いた雰囲気の集落である。
予告なく早く着いてしまったが、おかみさんは嫌な顔ひとつせず歓待してくれた。通された部屋は玄関のすぐ横で、畳の部屋には年月を重ねた柱のツヤが光る。縁側からは涼しい風が吹きこんできて、エアコンなんて無粋なものは不要だ。絵に書いたような田舎の家のたたずまいに
すっかり落ち着き、夜までごろごろしたくなってしまうが、一念発起。荷物をまとめて、まずは宿裏手の城山展望台へと登り始めた。
展望台への道はさして広くはないが、展望台に向かう車が行き交い、歩行者は避けつつ歩く。高台まで出ると、棚田に稲穂が整然と頭をそろえていた。水路には水がざあざあと流れ、豊かな土地であることを思い知る。
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