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名鉄・近鉄 全線乗車
0~1日目
名鉄の名古屋以東を巡る

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 中京から近畿まで、地方を越えて路線網を伸ばす日本一の私鉄・近鉄。相次ぐ路線廃止で2位の座からは陥落したものの、中京圏をくまなくネットワークする3番手の私鉄・名鉄。この地域を訪れるたびに両社の路線には少しずつ乗ってきたが、気付いてみればあと少しで全線乗車というところまできていた。
 そこでお盆休みの5日間で、名鉄・近鉄の全線乗車を目指す旅に出ることにした。都会の通勤電車だけの私鉄とは一味も二味も違う、大いなる私鉄を追った暑い夏の日々の記録。

バスを新幹線で追い上げる

 社会人はお金で時間を買える。

 8月10日、旅立ちの日は、定時まで仕事をした後に天神へ出て、8時の夜行バスで名古屋に向かう予定を立てていた。しかしこの日、職場関係での飲み会、それもちょっと大事な会が入ってしまった。仕事のスケジュールを考えると、盆休みをずらすこともできない。

 そこで天神から小倉までゆっくり走る夜行バスを、新幹線で追い上げることにした。久留米発21時25分の「さくら」に乗れば、博多で「こだま」に乗り継いで、小倉までわずか40分弱。なんとか高速バスを掴まえることができる。2次会に流れることはできないけど、1次会までなら充分に「義理を果たす」ことができる。

 当日、急いで帰宅して旅のスタイルに着替え、仕事着の輪の中に突入。夜行バスの旅が控えているので、酒の量をセーブしようと思っていたのだが、1杯飲み始めればそんな理性のブレーキが効くわけもない。普段通り2時間、楽しく杯を酌み交わした。

 このまま2次会に流れてしまいそうな気持ちだけは自制して、六ツ門からバスでJR久留米駅へ。インターネット予約で押さえていた指定券を、券売機で引きかえる。小倉までの時間はわずかで自由席でも充分なのだが、ネット予約だと同額で指定席に乗れるので、使わにゃソンというわけだ。

 予定より1本早いN700系の「つばめ」に乗れて、指定席のゆったりした4列シートに身を委ね、一気に博多へと上る。乗り継いだレールスターの「こだま」も帰宅客で混雑していたが、4列の指定席で快適な時間を過ごせた。小倉までの運賃・料金は3,730円。なかなか高い時間の買い方ではあったけど、それなりの価値はあったろう。

 小倉駅でのバスへの乗り継ぎ時間は11分しかなかったけど、定時運行のおかげで余裕を持ってバス停を探すことができた。長距離バスはもちろん、福岡行きなど短距離の高速バスが頻繁に発着する小倉駅前なのだが、バスターミナルと呼べるものはなく、一般の路線バス停と同じような広告付きバスシェルターから発着する。名古屋行きを待つ中国人の2人組も、本当にここでいいのだろうかといった表情で待っている。

 しかし時刻どおりに、名古屋行き高速バス「どんたく号」が入ってきた。白地に黒のパターンがシンプルながら、落ち着いた印象のあるバスだ。快適さでは定評のある西鉄高速バスだが、今宵の座席は1A席。運転席の直後で展望が広がるのはいいけど、足元が狭く窮屈で、のちのち泣かされることになる。

 天神を出発して2時間、車内で上映中の映画も終盤に入り、すっかり落ち着いている車内なのだが、時刻や車内設備の案内は小倉駅を出発してから。交代要員で乗務している運転士さんが丁寧に、数分に渡って説明していく。関門海峡を望む、めかりSAで休憩。甲子園行きの応援バスで駐車場はいっぱいになっていて、後続のバスに休憩場所を変えるよう、運転士さんは無線で指示を出していた。

 関門橋と関門海峡の夜景を目に焼きつければ、九州ともしばしのお別れ。リクライニングを大きく倒して、眠りの体制に入った。

 


▲新幹線でバスを追い上げる


▲名古屋までのはるかなる旅は「バス停」から


▲この橋を渡って、九州とお別れ

繁華街ど真ん中を結ぶ瀬戸線

 窮屈さと強い冷房に熟睡できないまま、朝を迎えた。三重県の御在所SAで、朝の休憩。以前に同じバスで休憩に立ち寄って以来、2年ぶりのSAだが、見違えるように「デパ地下」風へとリニューアルされていた。民営化以降のSAの変化には、目を見張るものがある。木曽三川を渡り、名古屋高速からシャチホコの載る愛知県庁をのぞめば、名古屋の中心・栄はもう目の前だ。

 栄では電車に乗り始める前に、ちょっと気になって東海テレビの本社を訪ねてみた。1週間前、放送史に残るであろう大きな放送事故を起こしており、その会社がどんな様子なのか気になったのだ。結果から言うと、朝早すぎて中に入ることもできなかった。会社の前には謝罪文がなかったけど、中に入れれば、今の会社の雰囲気を感じられたかもしれない。

 さあ、名鉄電車乗りつぶし旅行のスタートだ。名古屋の都心、栄に乗り入れる唯一の路線、瀬戸線の栄町地下駅に降りて、有人窓口で「名鉄電車2DAYフリーきっぷ」3,800円なりを購入。広大な路線網が乗り放題で、別料金を払えば特別車に乗ることもできる。名鉄各線をくまなく回るのならば間違いなくお得なきっぷだけど、それ以外の用途はなかなか思いつかないきっぷではある。

 到着した電車から降りる人波に揉まれ、都市通勤路線の勢いを感じながらさらに地下のホームへ。待っていた電車はステンレスに赤帯を巻いた姿で、意表をつかれる。名鉄といえば赤い電車という時代は、昔語りになりつつあるようだ。

 ラッシュとは逆方向の電車とはいえ、それなりの乗客を乗せて準急電車は瀬戸へ向けて出発。大曽根までは地下から高架へと立体交差の立派な線路が続くが、その先はぐっとカーブが増えて、スピードも思うように上がらない。駅ごとに利用者は多く、ローカル線的な雰囲気と都市通勤路線の顔が混在する。

 名鉄で独特だなと感じるのは、ドアが閉まる時の、
 「ドア閉めます」
 という表現。車掌でも自動放送であっても、この言い回しである。ドアはひとりでに閉まるのではなく、車掌が意志を持って閉めるのだから、表現としてはこちらが正しい気もする。全国的に「閉めます」派は、どのくらいの割合になるのだろうか。

 30分少々で尾張瀬戸駅に到着。瀬戸といえば瀬戸物の街だが、駅舎は瀬戸物を模したわけでも、歴史を感じる建物でもなく、こざっぱりした小ぶりなタイル張りの建物が出迎えてくれた。駅前には行政主導と思われる、再開発ビルも立っている。駅から伸びる道には瀬戸物の専門店が続き、ほとんどの店は開いていなかったけど、陶都の雰囲気だけは味わった。

 折り返し8時43分発の急行電車は、駅ごとに乗客を乗せて、ラッシュ時に近い賑わいがあった。栄町着は9時を過ぎる電車なのに混んでいるのは、買い物に行く人や、オープンの遅い店に通勤する人が多い証で、繁華街行き電車の証である。途中駅で普通電車を追い越さないのが瀬戸線の準急・急行の特徴ではあるが、それでも早く、大曽根まで25分で結んだ。

 


▲ラッシュ時の混雑ぶりをうかがわせる改札機の台数


▲名鉄ばなれ?した瀬戸線のニューフェース


▲瀬戸を着地とする人も多い

緑豊かな通勤路線・豊田線

 JR、地下鉄、名鉄に加え、ガイドウェイバスまで乗り入れる一大ターミナル・大曽根。次なる目的・名鉄豊田線へショートカットすべく、地下鉄名城線乗り場へ降りた。名城線は本邦唯一、完全な環状運転を行っている地下鉄だ。「内回り」「外回り」でなく、「右回り」「左回り」という表現を使っているのが目新しい。

 ただナゴヤドーム前から先の運行本数が、昼間10分間隔というのは、都市の地下鉄としてはちょっと寂しい。独立した路線ならば、電車の編成をもう少し短くして頻発運行するのだろうけど、名古屋の都心に乗り入れることから長大編成は必須で、難しいところではあるだろう。環状運転で折り返しの時間がないからか、車内の中吊り広告の交換を走行中に行っていたのは驚きだった。

 八事で、名鉄豊田線直通の鶴舞線電車に乗り換え。昭和50年代デビューでちょっと懐かしさを感じる、地下鉄の3000形電車だった。車内は薄い茶色の壁で、少し阪急っぽさも感じる上品な色合いだ。

 赤池を境に名鉄に変わり、途端に発車の合図を伝える「チンチン」という音が聞こえ始めた。名古屋の都心と、自動車都市の豊田を結ぶ路線だけに、家並みは途切れないのかなと思っていたが、高架の上からは思いのほか緑濃い車窓が広がる。

 乗り越し精算のために車掌さんが車内を回っていたのだが、電車はもう駅に着くところ。このままじゃ車掌室まで戻る時間がないよと思って見ていたら、おもむろに客室内の壁のボックスを操作して扉を開けたものだから、驚いた。窓も開くようになっており、なかなか効率的なつくりである。

 豊田線の電車は梅坪駅から一駅、三河線の豊田市駅まで乗り入れるが、猿投方面の電車に乗るため、梅坪で下車。島式ホーム1本ながら高架の立派な駅なのに、駅自体は無人で驚いた。電車自体もワンマン運行で、駅ホームにはセンサーを設けて事故防止に努めている。合理化策としては一歩踏み込んでいる印象で、決して余裕があるわけではない台所事情が察せられる。

 猿投方面の電車まで時間があったのでトイレに行っていたら乗り遅れてしまい、さらに15分待つくらいならと逆方向の電車で豊田市へと下ってみた。今回初め乗る赤い色の電車で、ようやく名鉄電車に乗ったというリアリティを感じた。

 豊田市は、ご存知トヨタ自動車のお膝元。駅前にはペデストリアンデッキが伸び、大型デパートやホテルが立ち並ぶ様は、なかなかの勢いを感じる。ただ人口40万人を誇る街としては、いささか駅前に人通りが少ないような気も…やはり市民の主たる移動手段は、くるまなのだろうか。

 


▲昔の地下鉄電車のスタイルを守る3000形


▲梅坪駅は立派な高架ながら無人駅


▲愛環の駅まではペデストリアンデッキで続く豊田市駅

本線を挟んで別の表情を見せる三河線

 改めて、1本後の三河線・猿投方面の電車に乗る。なんと4両編成のワンマン電車。ホームの安全対策は取られているとはいえ、本当に大丈夫なんだろうかという気もする。通勤電車とはいえ、横引きカーテンのかかった車内は上品な雰囲気。車との戦いを強いられてきた名鉄だけに、電車のグレードは高い。

 終点、猿投着。この先8.6km、西中金まで続いていた線路は過去のもので、2004年に廃止になっている。初めて集中的に名鉄電車に乗ったのは1999年。あの頃は岐阜市内の路面電車を初め、多くのローカル線が健在だったのだが、一気に廃止が進んでずいぶん寂しくなってしまった。

 猿投駅前はなぜか空き地が多く、勢いは感じられない。豊田市だけに、市内を走る車はトヨタばかりなのかなと注目していたが、特に多いという印象は受けなかった。それよりも、軽自動車に占めるダイハツ車の割合の高さが気になる。ダイハツもトヨタの関連会社ではあるのだが、関連はあるのだろうか?

 折り返しの電車は2両ワンマン。猿投から知立を結ぶこの電車こそ三河線の「本流」ではあるのだが、豊田市では豊田線の電車を受けるため、5分停車した。午前中とはいえよく乗っているように感じるのは、2両編成である故か。車窓には新興住宅地が目に付くが、田園地帯を挟んで駅とは距離があり、電車の利用に結びついているのかはよく分からない。

 名古屋本線を立体交差でまたいで、終点・知立着。本線をまたいで猿投~碧南を結ぶ三河線だが、運行系統は知立で分かれている。てっきり直通できない配線になっているのだろうと思っていたが、線路は続いているようだ。知立をはさんで乗り継ぐ人もゼロではなく、路線通りに直通させた方が合理的では?と思ったが、いろんな事情があるのだろう。

 というわけで階段を昇り降りして、碧南方面の電車に乗り継ぎ。豊橋方面からの特急の接続を受けて、発車した。平日昼間なのに、この電車もつり革が埋まる混雑。沿線も家並みが途切れない。

 駅ごとに降りる一方で、だいぶ余裕が出てきたと思ったら、終点・碧南着。中国人グループとともに、懐かしい雰囲気を感じる木造駅舎の改札をくぐった。碧南から先、西尾線の吉良吉田まで結んだ区間も過去帳入りしていて、赤さびた線路が痛々しい。今は名鉄の200円バスが、後を受け継ぎ走っている。

 朝から電車に乗り続けてきたが、昼の12時半を回り、お腹も泣き出した。駅前の割烹店に、碧南名物という「卵でとじないカツ丼」の舌代を見つけ、サクサクした食感を楽しむ。なかなかおいしかった。

 碧南の街は歴史があるようで、駅前からぐるりと歩くと、古い街並みが続いていた。古いだけでなく、街の雰囲気に合わせて落ち着いた色合いの現代建築「藤井達吉現代美術館」も、いいアクセントになっていた。

 


▲なぜか空き地が目立つ猿投駅前


▲昔ながらの木造駅舎がなつかしい碧南駅


▲続いていた線路はプッツリと途切れて

門前町へと結ぶ豊川線

 知立に戻る。知立駅は本線の特急も止まる拠点駅だが、鉄骨むき出しのホーム上屋は、ちょっと懐かしい大手私鉄の駅の雰囲気があった。

 JRの快速と激しい競争を繰り広げる名鉄だが、豊橋方面はJRと離れている区間が多く、知立も独自の駅勢圏があるようだ。乗降客は3万人を数えるとかだが、それにしては駅前に賑わいを感じない。車で送迎する人が多くて、駅前へ人が流れていないんだろうか。

 特急「パノラマスーパー」の自由席に乗り込む。転換式クロスシートが並ぶ車内は快適で、雰囲気もよく、自由席であっても「快速」ではなく「特急」の雰囲気を味わえる。ただ座席は少なく、補助席に座るとちょっと気分が削がれる気も。

 車内の照明は落とされており、昨今の電力不足への対応かなと思っていたが、東北や関東のように「節電へのご協力のお願い」の放送がない。西鉄と同様、以前から取り組まれているのかも。近鉄電車の中吊り広告が揺れているのも印象的である。ほとんどライバル関係にない両社だけに、相互の誘客にも取り組んでいるようだ。

 国府で豊川線に乗換え。ステンレス製の3300系電車で、車内は半分がロングシート、半分が転換クロスという近年の名鉄電車独自の座席配置になっている。クロスばかりでは混雑に対応し辛いし、かといってJR四国の千鳥配置もクロスに座るとロングからのぞかれているようで落ち着かない。名鉄の半々配置は、なかなかうまいと思う。

 田園地帯を突っ切ったかと思えば、高架に上がって下がって、ピタリと道路沿いに走るなど、短い割には変化に富んだ路線である。支線とはいえ、2本に1本は急行として名古屋方面に直通し、利便性も高い。

 名鉄の駅を見ていて気付くのは、支線の小さな駅の駅前であっても、名鉄協商のコインパーキングが設けられていること。全国大手のコインパーキングを寄せ付けない充実ぶりで、名鉄自らパークアンドライドに積極的に取り組んでいることが分かる。車社会の中で生きていく電鉄会社の知恵であり、生き残り策なのだろう。

 豊川稲荷駅着。JR飯田線の豊川駅は立派な橋上駅舎なのに、名鉄は昔ながらのこじんまりした終着駅である。参道を豊川稲荷へ。「なつかし青春商店街」のキャッチフレーズ通り、昔ながらの味わいある店が並ぶ。日本三大稲荷の一つとされる由緒ある豊川稲荷だが、時間もないので駆け足で参拝。むしろ無礼にあたったかもしれない。

 


▲クロスとロングをミックスした独特な3300系の車内


▲カーブを描く豊川稲荷駅


▲懐かしい雰囲気の商店街が続く豊川稲荷の門前町

ビーチへと結ぶ知多新線

 豊川稲荷からの折り返しの赤い電車は、小ぶりなクロスシートが並ぶ3500系電車だった。名鉄の「クロス主義」は何も今に始まったことではなく、車と戦うべく長い歴史を持つ。ただ席の向きも変えられず、背ずりも低い座席は、昨今の転換クロスに比べると快適とは言いがたい。

 国府からは、神宮前乗換えで内海を目指す。いずれも特急で長丁場になるため、特別車両券「ミューチケット」を準備しておいた。値段は350円で、しかも乗り継ぎの際には「乗り継ぎμチケット」として1列車分の350円でOK。内海まで約1時間半、快適な旅を楽しめそうだ。

 神宮前までの特急は、展望室が最後尾になることから、平屋の一般席を押さえた。展望席は視界を確保するために背ずりが低く、座り心地の点では一般席に分がある。座面は他の電車に比べて低いようで、どっしりした乗り心地だ。快適な座席に、夜行バスの寝不足が加わって、あっという間に夢の世界へ…。

 神宮前では18分のインターバルを置いて、内海行き特急に乗り継ぐ。名古屋本線と同じ、特別車の後ろに4両の自由席を連ねた「一部特別車」編成である。以前までは、一部特別車はJRとの競争が激しい本線のみで、他線の特急は全車特別車だったのだが、特急政策の見直しに伴って、空港特急以外はすべて一部特別車へと変わった。利用者にとっては選択肢が広がり喜ばしいことだが、空いている特別車を見るたび、大丈夫かなとも思う。

 内海行きは特別車が先頭なので、展望席に座を占めた。運転席は1階、客席が2階という独特な展望席は、天井に届かんばかりのワイドな窓から、迫力ある車窓が楽しめる。もう少し窓ガラスがきれいならば、胸のすくような眺めだと思うのだが…常滑線・河和線は路線図だけ見ると「支線」のような感じを受けるのだが、走りは早い。乗降客も多く、「本線」クラスの路線である。

 富貴からは知多新線へ。快調な走りは変わらなかったが、上野間を過ぎるとなぜか急にスピードが落ちた。単線の路線ではあるが、高架やトンネルといった構造物は複線分確保されている。ただこの様子を見る限り、複線分の構造物が生かされることは、まずないだろう。展望席から広がる海の景色を楽しめるだろうと楽しみにしていたのだが、線路は海から遠い高台を走っていて、線路沿いは草が伸びていることもあり、思うように景色を楽しめなかったのは残念だ。

 内海駅着。2面4線の「ターミナル」とも呼べそうな立派な駅だが、がらんとしている。階段を降りるとコンコース部分はオープンエアになっており、この規模の駅では珍しい。そろそろクラゲも現れ始める頃とはいえ、まだ海水浴シーズンの真っ只中。時期を考えればもっと賑わってもいい駅なのだろうが、海には車で行く人がほとんどだろうし、海水浴というレジャー自体が下火でもある。数少ない海水浴客は、車を持たない中高生たちばかりだった。彼らにとっては、大切な思い出作りに欠かせない足ではあるだろう。

 


▲展望席がウリ、一般席もゆったりのパノラマスーパー


▲複線分の幅が確保された知多新線のトンネル


▲開放的な構造の内海駅

海路へと結ぶ河和線

 富貴へ戻り、今度は河和線を河和方面へ。知多新線では右手に見えていた海が、河和方面では左手になる。海への距離では、こちらの方がずっと近い。知多半島の細さが分かるが、津波災害への備えは、より厳重に必要な地域なのだろうなとも思う。

 河和駅は、4本の線路の車止めがある、ターミナル型の終着駅だった。内海駅とは違い、バスターミナルを併設し、スーパーも入居していて街の匂いがする。歩けばすぐに海に出られ、港から篠島や日間賀島への高速船も接続している。終着駅ではあるが、中継点としての役割が大きいようだ。港の側には小さな砂浜があったが、打ち上げられたゴミの量が半端な量ではなかった。港から駅までは徒歩で5分くらいなのだが、無料の送迎バスが出ており、せっかくなので便乗させて頂いた。

 18時36分発の、名古屋方面急行に乗る。小ぶりなクロスシートが並ぶ電車で、6両を連ねているが、名古屋口では満員になった。特急だと自由席が4両しかないため、混雑は一層でないかと思う。大江駅からは未乗の東名古屋港線が出ているが、日もとっぷり暮れていまい乗りつぶしても無意味なので、明日の朝に回すことにした。

 名鉄名古屋駅着。今回の旅で、名鉄の中心駅たる名古屋駅に来たのは、1日目も終わりの今が初めてだ。3面2線の通過型の地下駅で、およそ私鉄のターミナル駅らしさはないのだが、ひっきりなしに入っては出て行く電車を見ていると、名古屋に来たんだなという気分が高まってくる。

 地下伝いに近鉄名古屋駅へ行って、明後日から使う「近鉄週末フリーパス」を買い求めた。当日でも買える「名鉄2day」と違って、「近鉄週末」は前日までの購入になっており、忘れてしまうと大きな痛手を被ることになる。

 もう一つの名古屋駅、JR側は、ツインタワーの賑わいに加えて帰省ラッシュもぶつかり、盛り場のような雑踏に包まれていた。栄と並ぶ繁華街になった名駅界隈が、今宵の宿。雑居ビルの中にあるという、めずらしいカプセルホテルのキャビンタイプに納まった。カプセルホテルのお楽しみ、サウナがないのは残念だが、ビル内の飲食店での夕食も付いて3千円代というお得感には勝てなかった。

 せっかくの名古屋の夜ではあるが、夜行バス疲れもあるので、今日は大人しくしておこう。

 


▲終着駅スタイルの河和駅


▲船への接続も河和線の大切な役割


▲漂着物が目立つ河和の海岸

▼2日目に続く








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