▲ガイドさんの説明に耳を傾けながら、無人の集落を行く
▲次第に自然物に浸食されていく人工物
▲酒瓶はあちこちに積み上がっていた
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野崎島のある小値賀町は、「アイランドツーリズム」を標榜し、古民家ステイや自然体験など、さまざまな過ごし方を提案している。野崎島でも、まずはガイドツアー(4,200円)に参加して、島を一通り学習することにした。宿への荷物は車で運ばれ、身軽になって散策スタートである。
地元・小値賀のガイドさんは、島の歴史から動物、植物にまで精通されていて、すみずみまでガイドしてくれるのはもちろん、どんな質問にも答えてくれる。まずは野崎島でも最大の集落だった、港周囲の野崎集落へと歩みを進めた。
野崎島には3つの集落があり、最盛期には650人が暮らした島だが、その後の経済成長や社会情勢の変化で人口が急減し、1990年代には事実上の無人島になった。最後の住民は、島の神社の神主さんだったとのこと。無人島になるとなにかと不都合という理由から、1人が島に籍を置いているが、定住者というわけではない。しかし人が離れて20年近いのに、生活の痕跡は今も色濃く残る。
例えば家屋の中には、離島の際に持って行ける荷物も限られたことから、テレビや食器といった「モノ」も、昭和の色のまま残されている。家の横にはビール瓶や一升瓶がごろごろ転がっていて、漁を終えては酒を酌み交わす漁師の姿が浮かんでくるようだった。
しかし主のいなくなった木造家屋は、急速に朽ちて行く。神主さんの家は、少しでも手を入れれば住めそうな気配だったが、最近になって梁が落ちた家もあり、崩壊も時間の問題のように見えた。壁も柱も木や土といった自然物で作られた家は、いずれ瓦だけを残して土へ還って行くのだろう。
同じ長崎県の端島・通称「軍艦島」には先週訪れたばかりで、あちらはRC造の高層団地が崩れかけていた。コンクリート造と木造という違いはあるが、生活の痕跡を残した島が朽ち果てている過程にあるのは、どちらも同じ。年々、姿を変えて行く途上にある島々である。しかし今もひょっこり島の人が姿を現しそうな区画もあり、どこか温かみを感じる野崎集落であった。
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