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九州新幹線1周年大追跡
3月17日
5日遅れの「1周年記念日」

3月12日3月17日


 九州新幹線の1周年記念イベントは、開業日から初の週末を迎えた17日に準備された。この日は、恒例のJR全国ダイヤ改定の日。九州新幹線でも、多くの駅で新大阪直通が増便する「ハレの日」でもあり、各駅とも祝賀ムード…かと思いきや、日頃と変わらない表情を見せる駅も。
 1周年記念の1万円フリーきっぷを手に、スタンプラリーのスタンプを押しながら、各駅の様子をウオッチングしてみた。

イベントなし・筑後船小屋駅

 九州新幹線1周年を記念して、今日から4日間限定で利用できる「九州新幹線一周年限定 乗り放題きっぷ」が発売された。九州新幹線の博多~鹿児島中央間の自由席に乗り放題で、1万円とはまさに激安。1周年記念日となった今日は各駅でイベントも開かれているし、全駅がチェックポイントになったスタンプラリーも開催中だ。そこで各駅のイベントの時間も計算に入れ、行ったり来たりの記念旅行をプランニングしてみた。

 まずは朝8時59分、久留米から下り「つばめ」に乗りこんだ。日頃ガラガラのイメージがある「つばめ」だが、今日は自由席を中心にまずまずの乗り具合。フリーきっぷの効果だろうか。わずか9分、座席を温める暇もなく、筑後船小屋駅に到着した。

 1周年開業の「祝賀日」になった今週末、各駅では開業1周年イベントが準備されたのだが、唯一筑後船小屋駅だけは、これといった告知がなかった。改札を出てみても、1周年らしいのは各駅共通で飾られている「ひな人形」くらいなもので、装飾もなし。九州新幹線新駅の中でも、特に苦戦が伝えられる駅ではあるが、めでたいのか、めでたくないのか…。

 ただ休日朝ということで、お出かけの様子の一般利用者に、1周年記念の全駅スタンプラリー参加者も加わって、開業日以来のにぎわいが見られた。日頃から、これだけの利用があればいいんだけど。
 


▲自由席乗り場には、ちょっとお出かけ風情の人で行列が

華やかなテープカットで新たな出発・新鳥栖駅

 上り「つばめ」に乗り、久留米を飛ばして新鳥栖駅へ。階段を降りると、1年前にも見た覚えのある、有田焼で作られた「さくら」ミニチュアが待っていた。コンコースでは、将来の長崎新幹線(九州新幹線西九州ルート)で採用予定のフリーゲージトレインの説明模型も飾られている。いずれも佐賀県西部に関する展示ではあるけど、新鳥栖は佐賀県唯一の駅。広く「佐賀と新幹線」をPRしている。

 駅前は、開業イベント真っ盛りで、その名も「元気増発!さくら祭り」。今日のダイヤ改定は、新鳥栖駅にとって新大阪直通便が大増発される記念日でもあり、うまくかかっている。1年前の開業日に使わわれぬまま撤収されたテントだが、今日は大活躍だ。

 駅はお祭りムードに沸きながら、日頃の任務も淡々とこなしていく。鳥栖市の新しい玄関口としてはもちろん、熊本・鹿児島方面と佐賀・長崎方面の乗り換え拠点も、鳥栖駅から引き継いだ大切な役目だ。長崎本線の特急が発着するたび、新幹線改札へは太い人の流れができる。そして乗り換えの合間にすするうどんも、鳥栖駅から引き継がれた風物詩の一つである。

 節目の日にふさわしく、10時23分、新たに新大阪直通になった「さくら548号」の出発に合わせて出発式が開かれる。開業100日目の「百日(ももか)祝い出発式」ではテープカットの最前線で見学することができて感動したものだが、今日は「規制線」がだいぶ手前に引かれていたので、向かいホームから見学することにした。

 百日祝いでは元気なおじいちゃんがカットしたテープカットだが、今日は一日駅長のミス・インターナショナル日本代表がつとめることに。佐賀県知事も姿を見せ、華やかな雰囲気だ。乗降に手間取ったのか、一日駅長の発車合図からやや間をおいて、新幹線らしい長いタイフォンとともに、ゆるゆると「さくら」が発車。記念すべき一日を象徴する、ワンカットだった。

 


▲クロスポイントらしく、長崎や大分からの出店も見られた


▲ミス・インターナショナルの合図で記念列車が発車

お祭り騒ぎは今日に限らず・博多駅

 「つばめ」でさらに上り、博多駅へ。飛び石連休の初日を迎えた九州の中心駅のにぎわいは格別で、九州新幹線も大増発。発車案内のLEDには、「さくら」のピンク色の字が、ずらりと並ぶ。この1年間、博多~熊本間ではやや苦戦したものの、震災の影響もなんとか食い留め、好調に推移した。それも安全輸送あってのこと。増発列車も、信頼の証である。

 博多駅の記念イベントも盛大なもので、「ありがとう福岡春祭」と銘打ち、ステージに物販にと大賑わいである。ただ博多駅そのものの規模が大きいだけに、相対的にあまり目立たなかった印象も持った。日頃から、お祭り騒ぎの駅なのである。

 残念だったのは、月曜にはあったコンコースの「1周年記念写真」の巨大垂れ幕が、JR九州のクレジットカード「JQカード」のものに置き換わっていたこと。もはや、鉄道は「副業」とまで言えるほどになった民営JR九州。商魂たくましいのは結構だけど、せっかく沿線の人に呼び掛けて集めた「笑顔」だったのだから、せめてイベント最終日の春分の日までは、そのまま飾っていてほしかった。



▲大きな駅ビルで相対的に小さく見えたイベント会場

素朴な手作り出発式・久留米駅

 再び下りに乗って、スタート地点の久留米駅へ。こちらでは12時6分の「さくら304号」に合わせての出発式があるので、この時間に合わせて舞い戻ったのだ。JR側が準備した出発式は百日祝いと同様、各県を代表する博多・新鳥栖・熊本・鹿児島中央の4駅だけだったのだが、福岡県南の代表都市・久留米も負けじと?独自の出発式が企画された。

 こちらの1日駅長は、近隣4校の小学生なんと86人!式辞を述べるのはJRの久留米鉄道事業部長と、新鳥栖に比べれば地元密着の感がある。発車合図は駅長「たち」の振る小旗で、何度かのリハーサルでようやく久留米駅長の「100点」をもらい、準備完了。狭い久留米駅ホームゆえ、ぎっしり子ども駅長で埋まったホームに発着する新幹線の乗降には、苦労の様子も見られた。

 記念列車が入線。停車時間はわずかで、司会者の声を受けて発車合図。応えるようにタイフォンが鳴り響き、ギャラリーからは歓声が上がった。元気に揺れる小旗に見送られ、800系新幹線はゆるゆると博多へ…新鳥栖のような華やぎは薄かったけど、暖かな手作り感のある出発式だった。願わくば、「駅長たち」の将来の利用にもつながりますように。

 開業日のイベントは各駅が「中止」するなか、「延期」という形で夏に改めて催された久留米。今回の1周年イベントも力が入っており、春分の日まで4日間に渡って開かれる。出店以外にも、新しい西口ではブルトレのヘッドマーク展やミニチュア新幹線の運行も行われ、鉄な親子も楽しめるイベントだ。また後日、足を運んでみよう。

 4日間のイベントの幕を切っておろす開会式も開かれ、市長や議長に続き、某大物国会議員も姿を現してびっくり。六ツ門の都市プラザへの期待の他、久留米大の大矢野教授とJRの石井元会長の持論である「夜間物流新幹線」計画を推す発言もあって、興味深いものだった。今後の政局次第では九州新幹線、大化けするかもしれない。

 またこれまで東口・西口とだけ呼ばれていた出口にも、新たな愛称の銘板がお披露目された。その名も「まちなか口・水天宮口」。永く、定着していきますように。

 


▲1日駅長「たち」に見送られ出発


▲新しい出入口の愛称がお披露目

人手の通ったイベントでおもてなし・新大牟田

 地元・久留米の盛り上がりに後ろ髪を引かれつつも、下りつばめで新大牟田駅へ。5日前には、とにかく寂しさばかりが印象に残った駅だったけど、今日は乗降客の姿も多く、駅の内外もイベントの見物人が集まっていた。

 中止になった開業日のイベントでは、駅の東西に会場が用意されていたけど、東側の空き地は宅地として売りに出てしまったので、今日は西口広場がメイン会場。テント数台にステージの、規模としてはささやかなものだった。地元の人向けの感謝の催しといった装いだ。

 駅の1階改札内コンコースでは、本格的なお抹茶の振る舞いが行われており、日頃たしなまない口ではあるけど、経験と思って一服頂いてみた。地元のお茶の会のご婦人方なのだろう、たまにはいいですねなんて会話を交わしながら、ほっと一息。せかせかとスタンプ押しに回るのも一興だけど、イベントには積極的に飛び込んでみるのも、ハレの日の楽しみ方だ。

 駅のホームに上がると、なにやら人だかりが。通過する新幹線が多いことを逆手に取った、「新幹線のスピードを計ろう」というイベントだた。おのおのがストップウオッチを手に通過時間を計測、「はじき」の式で通過速度を計算し、スピードガンで計った速度と答え合わせ…という、なんとも知的で理系なイベントである。これが意外にも、盛り上がっていた。

 派手やかさはないけど、人手の通ったイベントが印象に残った駅だった。

 


▲テントは地元からの出店がメイン


▲通過する新幹線を見つつ、真剣にストップウオッチを押す

1年前と変わらぬにぎわいの中に・新玉名

 新大牟田からの下り「つばめ」には、振り袖姿も美しい花嫁とご家族が乗り込み、1周年に花を添えた。「つばめ」も新800系で、妻壁に金箔の装飾が施されたスペシャル仕様。和服姿にも、よく似合ったのではなかろうか。

 数分で新玉名着。駅前で開催中のイベントは「たまな菜の花フェスタ」と銘打ち、ステージにも無数の菜の花が飾られていた。駅近くの田んぼに菜の花を植え、新幹線で通過するお客さんにも春の風景を楽しんでもらうと頑張っていた玉名の気持ちは、イベントでも花開いた。

 新玉名は1年前、軒並み他駅がイベントを中止する中、唯一「チャリティーイベント」に舵を切って開業イベントを実現した駅である。テントが並ぶ駅前の様子は1年前と同じで、なつかしいと感じさせるものだった。人出も1年前と同様で、久留米駅をしのぐほどだ。午後2時過ぎとあって、玉名ラーメンやB級グルメブースなど、めぼしい食べ物は売り切れていて残念だった。

 今回初登場は、今や全国区キャラクター「くまモン」の巨大風船で、子どもたちはキャアキャアとはしゃいでいた。

 


▲巨大くまモンもお出迎え

くまモンが3会場を盛り上げる・熊本

 新玉名から熊本へは、下りは1日1本しか停車しない「さくら」に乗った。「つばめ」も混雑したこの日だが、大阪直通「さくら」ともなると、さすがに自由席も満席近い。熊本駅もまた、人の渦だった。

 熊本駅の開業イベントは、駅東西の広場と駅前の再開発ビル「森都心」前の3会場だが、駅の規模を考えればかなりささやかなもの。新幹線口はお茶の振る舞いがあっていたようだが、夕方になったからか店じまいの風情だった。白川口では、県内各地の物産展が開かれていた。

 そして森都心前ステージでは、1日駅長の「くまモン」のステージが多くの見物人を集めていた。今や全国区のキャラだがご当地での人気も絶大で、着ぐるみとは思えない身のこなしが身上。「くまもん体操」はお馴染みなのか、ステージ前の子どもたちも一緒に踊っていた。ステージ後は、自ら歩道橋を渡り、白川口の物販コーナーへ。多くの観客も引き連れ、営業効果は絶大!?

 北部の各駅をめぐるだけで、時間は16時を回った。しかし全駅スタンプのミッションを果たすべく、下り「さくら」に乗り、さらに南を目指す。

 


▲ホームは人波の中にあった


▲多くのギャラリーを集めた「一日駅長」のステージ

盛り場・鹿児島中央

 今日は1周年記念ということで、JR九州内の区間ではホットコーヒーが100円でサービスされている。ここまでは、車販のない熊本止まりの列車ばかりだったので、ようやく熊本~鹿児島中央間でありつくことができた。名刺大の記念カードも配られ、ちょっとしたものだけどいい記念になった。

 ダイヤ改定までは最徐行で通過していた新八代だが、路盤が安定したのか、全速力で通過。今改定では博多~鹿児島中央間の3分短縮が実現しており、ますます九州が縮んだ。新八代駅手前は黒煙に包まれており、その中を突っ切る形になったが、「SL人吉」が停車中だったようである。

 あっという間に、鹿児島中央着。こうも九州を又にかけて、それも新幹線の高速移動で1日を過ごしていると、遠くに来た実感がない。降りる人の数は「人波」といえるほどで、他のどの駅も圧していた。

 それは駅前の賑わいも同様だった。17時を過ぎているが、ステージイベントはまだまだ続くようで、盛り場のようだ。新幹線全線開業1年、独り勝ちとも言えるほどの集客を誇った鹿児島の1年だったが、その勢いそのままの姿である。この成功をどうつなげていくのか、「勝ちすぎた」鹿児島の2年目、3年目の課題だろう。

 出店もまだまだ盛況なのだが、食べ物関係はほとんど品切れ。本格焼酎振る舞いコーナーも17時までだったようで、残念だ。1時間もないとあっては天文館まで出る余裕もなく、西口に新しくできた立ち食い郷土料理の店?で、黒豚丼を食らい、焼酎バーで薩摩焼酎のロックをぐっと1杯を飲み干し、鹿児島に来た証とした。
 


▲100円でサービスされたコーヒーと、記念カード


▲大屋根広場は大賑わいだった

巨大なイベント会場に驚愕・川内

 18時台の鹿児島中央は、00分の新大阪行き「みずほ」のわずか4分後に「さくら」、さらに27分にも「さくら」が続き、いずれも新大阪直通列車となっている。19時台にも2本の大阪行きがあり、ダイヤ改定の告知では知っていたが、実際にLEDの発車案内に「新大阪」の字がずらりと並ぶと、強いつながりになったなと思う。

 「みずほ」自由席はかなりの混雑になったようで、僕の乗る04分「さくら」へ逃げてきた人も多かったようだ。

 川内着。鹿児島の通勤圏として、新幹線もすっかり日常の足として定着している地域である。それだけに、全線開業もそんなに関心がない地域だろうと早合点していたのだが、駅東口を見てびっくり仰天。広大な敷地に、ズラリとテントが並んだイベント会場が準備されていたからだ。新鳥栖、新大牟田はおろか、熊本すらしのぐ規模ではなかろうか? もちろん6時半とあってすでに閉鎖中だったが、いかばかりの賑わいだったのか、見てみたかった。

 


▲ズラリと並んだテントに圧巻の川内

静かな1年目・出水

 川内から出水までの「さくら」も、新大阪行き。夜も遅くなり、自由席にもだいぶ余裕ができてきた。

 出水駅のホームを見て初めて来た土地だと感じたのも道理、新幹線ホームに降り立つのは、開業8年目にして初めて。これまでは在来線の「肥薩おれんじ鉄道」で訪れてばかりの土地だった。鶴の飛来地として有名だが、駅からもレンタルサイクルでほど近い武家屋敷群のたたずまいも良く、九州新幹線沿線でおすすめの街の一つである。

 ただ今日は、もう夜7時。駅内の店もキオスク以外は店じまいしており、駅前にもめぼしい店が見当たらず、行き場を失ってしまった。17時まで開業イベントが行われていたはずだが、その痕跡もなし。1周年記念撮影コーナーが、唯一メモリアルな日であることを伝えてくれた。

 


▲手作り感もある記念撮影コーナー

明日のイベント準備は?新水俣

 新鳥栖~久留米間は新幹線として異例の近さの駅として知られるが、出水~新水俣間も16kmとなかなかの近さ。両駅間、ものの7分である。

 新水俣駅は、JR20周年記念スタンプラリーのスタンプ設置駅だったので、1度降りたことがある。今回は夜なので全容は掴めないが、流れるようなデザインの駅舎が美しい駅だ。駅の近くにはファミレスのジョイフルくらいしか見当たらない…という駅前の環境も、数年で大きな変化は見せていない。

 開業記念イベントは唯一、明日の開催になっている当駅ではあるが、駅のどこを見回しても、それらしい様子は見られなかった。明日の朝、準備するのだろうか。

 


▲1周年を前後に、各駅に飾られた雛人形

新たなジャンクションとしての1年・新八代

 新八代駅に到着し、全駅下車を達成。みどりの窓口でスタンプを押せば、1周年記念スタンプラリー完遂である。東西300kmの12駅をわずか1日で、よく集めたものだ。スタンプ用紙を駅員さんに見せて、はがきを貰って応募すれば完遂証明書が貰えるという手順なので、駅員さんにはがきへの交換をお願いしたら、ずいぶん戸惑われてしまった。新八代駅で初達成者だったのだろうか。

 全線開業まで新在乗換え駅として機能していた新八代駅だが、新幹線が1本通るだけの「ふつうの新幹線駅」になって1年を迎えた。在来線が発着していたホームは新幹線の軌道に改められたが、フェンスで囲われ、まだ新幹線が発着できる状態にはない。

 新八代駅に与えられた新たな役割、宮崎方面のバス「B&Sみやざき」との連携は、開業3日目に見た限りでは先行きが不安になるものだったが、今夜は宮崎からのバスからは13人降り立ち、まずまずの体を成していた。出張帰りのグループがいなければ、また寂しい姿だったかもしれないが…今ダイヤ改定では接続時間が見直され、さらなる時間短縮を実現しており、メインルートとして育ってほしい。

 ひとっとび久留米に飛べば、北へ南へ九州縦断した長い1日は終了。規模の違いはあれ1周年を祝う雰囲気に包まれていて、1年前に見ることができなかった「祝賀ムード」にひたることができた。2年目、3年目の節目を経るに従って、だんだんと「普通の日」になっていくのかもしれないけど、折に触れて盛り上がれる機会があったらと思う。九州のみんなとともに、全線開業した新幹線なんだから。

 


▲新・バス連携輸送を実現するB&Sみやざき


▲旧在来線ホームは使われぬまま
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