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旅名人きっぷで九州再発見
その2
ぐるり松浦鉄道[前]

天神〜唐津は電車でも1時間!筑肥線ホリデー快速

 「旅名人きっぷ」の旅。2回目の今回は、佐賀県・長崎県は松浦半島の第3セクター鉄道、松浦鉄道に照準を合わせた。こちらは高校2年生の時に全線走破しているから、かれこれ10年ぶりということになる。その間に変化もちらほら見られるようなので、これを機会に再訪問してみよう。

 旅の始発駅は、2週間前と同じく西鉄井尻駅。今回は天神方面なので西口から入ったら、やはり「井尻(西)」の丸スタンプが押された。
 JR通勤の僕なので、西鉄の朝の通勤電車というのは初めてに近い。もっとも今日は日曜日で、大橋で乗り換えた急行電車も、吊り革をラクに探せるほどだった。薬院で、乗客の半分近くが降りていったが、博多方面へのバス乗り継ぎか、六本松の九大で資格試験でもあるのか。なにせ日ごろは使わないから、よく分からない。

 福岡天神駅の窓口で、今日から発売だった「3000系ローレル賞受賞記念よかネットカード」をゲットし、地下鉄の天神駅へ。JR発行の切符で、西鉄と地下鉄の改札を自由に通るなんて、新鮮かつ痛快だ。近い将来、いろんな共同企画きっぷが発売され、こんな事も当たり前になってほしいし、いずれそうなりそうな気がする。

 地下鉄姪浜から西唐津まで直通する次の電車は、筑肥線で1日5往復限定の快速電車。しかし駅の自動放送ではそのことに一切触れず、単に「西唐津行き」と案内しているのは、ちょっと不親切だ。後述するが、通過駅の多い快速電車なのである。
 朝の地下鉄とはいっても休日、しかも通勤と逆方向とあって余裕ある車内。姪浜で地上へ飛び出し、この先が快速運転区間だ。福岡市内の乗客が多い駅をすべて飛ばし、筑前前原まで止まらないのだから、車内放送ではしつこいくらい繰り返していた。

 姪浜のビル街を過ぎれば海岸に出て、まぶしい朝日をあびつつモーター音を鳴らして快走。駅の通過速度も速く、快速の名に恥じない走りっぷりだ。車両は103系で、首都圏から引退が相次いでいる車両だけに、関西の阪和線と並んで、「高速走行を堪能できる最後の103系」と言えるかも。看板列車なのだし、新型の303系を使えばとも思うが、303系は加速時の電力消費が少ないため、停車駅の少ない=節電効果の薄い快速には入らないのだとか。なかなかシビアな計算があるのだ。
 筑前前原では普通と接続を取り、これも本格的な快速といえる所以だ。この先の停車駅も少ないが、停車駅での乗降は多く、戸惑っている人も見られなかった。1日5往復とはいえ、2003年の快速復活から4年。地元でも定着しているようだ。
 唯一快速らしくない所といえば、浜崎駅の1つ手前の鹿家駅で、4分の運転停車(通過扱いだが、運転上の都合で扉を開けずに停車すること)をしたこと。すれちがった電車は、天神方面の快速電車だった。あちらはほとんどの座席が埋まるほどの盛況で、休日のショッピングに出かける人が主だろう。
 こちらは途中駅での下車もあり、だいぶ余裕が出てきた。東唐津、和多田と唐津市内の駅で連続停車し、ニーズに対応。唐津までの所要時間は、1時間ジャストだった。ライバル、昭和バスの高速バスとまったく同じ所要時間。運転本数は1日5本vs.1時間3本とまったく歯が立たないが、JRも快適さと景観を売りにした「特急」にでも成長してくれないかな…と思いつつ、次の伊万里行きに乗り換えた。



▲休日でも通勤客で溢れる福岡天神


▲玄界灘を望む


▲唐津駅で並んだ筑肥線東西の列車
佐里の湯につかり、分断駅の現状を見る

 伊万里行きは、1両運転のワンマンカー。6両の筑肥線快速から見れば親と子以上の差があるが、同一ホーム3分の接続で発車し、福岡〜伊万里間の移動も充分考慮されたダイヤになっているようだ。
 乗客は20人程度といったところだが、1時間に1本あるかないかというローカル線にしては、健闘しているともいえそう。山本まで唐津線を走り、ここからは再び筑肥線となる。山本を発車しても、数kmを唐津線と並走。一時、両線の列車が山本を同時発車するダイヤが組まれていたことがあり、「仲良し並走列車」として地元紙の話題になったこともあった。唐津線の本牟田部駅を横目にするが、こちらに駅はなく、やがて立体交差で唐津線をまたいで伊万里へと進む。
今の地図だけ見ると、なぜこんな複雑なことになっているか分からないが、これはかつて筑肥線が東唐津から山本へ直行し、そのまま伊万里へ続いていたという歴史による。今では、山本〜伊万里間の通称・筑肥西線は、東線とまったく異なる姿になってしまった。


 山本から3つ目の佐里で下車。変哲もない無人駅で、駅舎らしき建物には駅名ではなく「秋櫻館」の文字が。地元自治体が待合室を建てる際、民間企業JRへ駅舎を寄付したことにしないため、駅名でない他の名前を掲げることがあるが、ここもそうだろうか。いずれにせよ、分かりにくいことだ。
 駅から線路沿いを2分ばかり歩いたところにあるのが、佐里コスモス園。北部九州では名の通ったコスモスの名所で、秋も深まってきた折、公園全体に咲き乱れている。素直にキレイだとは思うけど、男一人で見てても寂しい人に見られてしまうだけなので、同じ敷地のの佐里温泉へと動いた。
 佐里温泉はかけ流しか循環か判然としなかったが、檜の露天風呂のある肌触りがいい温泉。特に秋の爽やかな天気となったこの日、露天風呂に浸かる気分は格別だった。昨日まで仕事に追われた疲れが、すっと抜けていくようだ。僕が入っている間に入ってくる人が少なく、最初30分くらいは貸切でのんびりできたのも最高。コスモス園は朝10時というのに人出は多かったが、温泉まで来る人は少ないのかな。

 かれこれ1時間のんびりして、次の列車へ。同じくイエローワンマンの1両編成だが、駅ごとに乗客が増えていき、伊万里へ付く頃には満席近くなった。特に列車交換がある大川野駅からの乗客が多く、駅舎も新築されていて活気を感じた。お年寄りだけでなく中高生の姿も多く見られ、バス代わりの地域の足になっているようだ。1日数本だからと見くびってはいけない、大切な地域の足なのである。

 頭端式の終着駅、伊万里着。2002年の駅舎改築までは、接続する松浦鉄道と一体だったのだが、駅裏へと貫通する都市計画道路を通すため? に分断され、終着駅の雰囲気になった。駅の表裏の解消は街づくりの大きな課題で、財力があれば鉄道の高架化、なければ広い歩道橋の設置などで対処する所が多いが、「分断」という手法はそんなに例がないはずだ。駅前通りだった道が市の貫通道路に化けたわけで、駅は車にとって通過点となった。
 JRの駅と松浦鉄道の駅はそれぞれ「東ビル」「西ビル」と呼ばれ、双子のよう。双方は歩道橋で結ばれ、乗り換えの時は歩道橋を渡るよう案内されているが、実際には横断歩道もない道路を渡ってしまう人が多いようだ。目の前すぐの距離にある出入り口に背を向け、階段(かエレベーター)を登れと言われても抵抗感のある話。押しボタン式の横断歩道を設けるのが、現実的ではないだろうか。
 筑肥線から松浦鉄道への接続はあまり考慮されておらず、有田方面は30分、平戸方面は40分待ちだ。この時間を利用して、駅前へ出てみた。伊万里市は佐賀県内4番目の市で、中心性も持っているのは鉄道の流動を見ていても分かる。3番手の鳥栖市にもない、歩行者専用のアーケード街まであるのは意外だった。まあ人の少なさは、これまで見てきたアーケードの中でも散々なものだったが…

 駅前通りはきれいに整備されていて、橋の欄干に焼き物が載っているのは、さすが世界の伊万里である。窯元巡りも楽しそうだが、今日は鉄道の旅。松浦鉄道の駅へと引き返す。

 


▲コスモス満開の佐里


▲終着駅風情の伊万里


▲JR・MRの分断駅舎

▼[2]に続く

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