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体感”スルッと”KANSAI3日間(1)

 

出た!27社局のフリーきっぷ

 昨年(1999年)の“秋休み”は、名鉄・近鉄・南海の「ワイド3・3・SUNフリーきっぷ」で、中京〜関西を乗り歩いた。その時にふと思ったのは「阪神や京阪みたいな民鉄も好きなんだよな。そっち方面のフリーきっぷがあればな〜」。それは2000年、「スルッとKANSAI3dayチケット」として実現した。

 スルッとKANSAI、それは関西圏27社局で共通して使える、カードシステムの呼称である。どの会社の自動改札でも、直接カードを投入して使える極めて便利なシステムだが、「3dayチケット」ではその27社局を、自由に乗り降りできるのだ。まさに前代未聞、無敵のスーパーチケット! 大学入学以来、4度目の関西旅行へ発たせるには、充分な動機となるきっぷだった。

 というわけで、集中講義も終えた10月1日、西大分港よりダイヤモンドフェリー「クイーンダイヤモンド」で、神戸へ旅立った。


1日目 海に山にニュータウン

アルミ特急快走・山陽電鉄

フェリーのりばからの送迎バスを降り、向かうは阪神電車の御影駅。駅事務室で、大分で買ったクーポン券をフリーチケットに引き換える。これから3日間、さあ乗りまくるぞ!

 御影駅の、相変わらず手狭なホームへ。数多い中間駅と、都市間輸送を両立しなければならない阪神電鉄は、とにかく列車種別が多い。運行する側もプロなら、乗客もプロ。梅田方面ホームには、先発する準急にも急行にも乗らず、10分後の特急を待つ人がいて、よく停車駅とスピードの関係を理解しているものだと感心してしまう。

 ステンレスのボディきらめく9000系で三宮へ移動、後続の直通特急・山陽姫路行きに乗り継ぐ。集団離反形クロスシートの山陽5000系だ。ラッシュ時で混み合う、神戸高速〜山電と続く地下区間を走り抜け、地上に出れば須磨浦の海岸線が広がった。国道やJRよりも一段高い位置を走り、爽快な眺めを楽しめる。明石海峡大橋を過ぎるとJRと位置が逆転、ちょうどJRの快速電車が現れ、抜きつ抜かれつのデットヒートとなった。新快速はともかく快速には抜かれるな、と思っていたが、明石到着はJRの方がわずかに早かった。後刻にも同じようなシーンを目撃していて、どうやら「そういう」ダイヤになっているようだ。

 明石を過ぎると、ようやく高速電車らしい走りになってきた。Max120kmに達しているようで、西鉄特急よりも速い感じだ。東二見、高砂などJRと離れた駅での乗降が多く、一度空いた電車は姫路に近づくにつれてまた混んできた。JRを渡り越し、大阪方面に向くように終点姫路着。知識として知っていたが、知らずに来れば混乱しただろう。

 姫路観光はわずか1時間40分。姫路城を眺め、駅地下で「明石たこ焼き」を食べ、ついでに関西電車旅必須アイテム「KATT関西圏全電車時刻表」を入手して終わった。姫路の方、申し訳ない。次に「普通のきっぷ」で来たときには、ぜひゆっくり見ますから・・・

飾磨まで乗ったガラガラの直通特急は、5030系だった。5000系、5030系ともよく似たクロスシートのアルミ電車だが、集団離反シート、転換シート、5030系はその3列シートと車内のバリエーションはさまざま。5030系の座席定員は少ないが、中間2列にわたる大窓が魅力で、ここから須磨浦海岸をみたらきれいだろうな・・・ 直通特急には阪神のロングシート車も入っているので、どれが来るのかはお楽しみといった所だ。

 飾磨から分岐する網干線は山電唯一の支線で、ここも乗りつぶしておく。飾磨駅は凹型ホームになっていて、本線の上下列車から階段なしで乗り換えられるのは便利だ。4両編成だがワンマン運転。扉を閉めて一秒もたたない内に発車して、完全に止まる前(?)に扉が開く。運転士はちゃんと安全確認しているのかな? ヨソ者として見ている分には面白いけど。

 ロングシートの線内特急に揺られ、明石へ。となり合うJR明石駅と一体になっていて、ここで早いJRに「乗り継ぐ」人が多いというのも頷ける話。しかもJRは、山電のホームに向けて「速さはJRのあかしです。」なんてウマイ看板を出している。三ノ宮まで14分、確かに早い・・・ JRの攻勢の中、迎え撃つ山電も大変だ。ガンバレ“準大手”山陽電鉄!


ニュータウンへの郊外電車・神戸市営地下鉄北神急行

 板宿を出た、神戸市営地下鉄・西神中央行き電車の車窓からは、時折チラチラと明かりが入ってくる。どうやら地下トンネルから、山岳トンネルに変わったようだ。「地下鉄」にしてはスピードが出ていて、地上区間を疾走する姿は「西神高速鉄道」とでも呼びたい雰囲気だ。平日の昼間だというのに、お年寄りを中心に乗客は多い。

 西神南を出ると田んぼが見え、完全に郊外だなと思ったが、乗客はたくさん。いぶかしく思いながら終点・西神中央に着くと、そこはまったくの別世界だった。地下鉄のものとは思えぬ大きな駅ターミナルビルを出れば、高層アパートが立ち並び、バス乗り場からは市バスがじゃんじゃん出てゆく。この後、折り返し訪れた、名谷も似たようなものだった。「ニュータウン」「神戸市株式会社」「山、海へ。」なるほどね・・・ ちなみに、西神中央駅のテナントは「西神そごう」で、つぶれないよう祈るのみである。

 折り返して、地下鉄で三宮方面へ。板宿以降の地下区間こそ、本来の地下鉄の姿だと思うが、むしろ乗客は少ないようで、面白い。三宮で「神戸牛ステーキランチ」の誘惑を振り切り、かき揚げ丼の昼食を済ませた後、北神急行直通で谷上へ。北神急行は、全線のほとんどが六甲山を貫く山岳トンネルダ。建設費が相当かかったようで、以前の運賃は450円だった。市の補助を受けて350円に値下げしたが、それでも谷上〜三宮8.8kmで520円はかなりキツい。なんて文句みたいに書いているが、フリーチケットを持っていればまったく無関係でいられる♪ 神戸電鉄と合わせ大きな谷上駅に、電車はすべりこんだ。


山越え準大手・神戸電鉄

 谷上駅の中間改札を抜け、神戸電鉄有馬線・三田方面に乗り継ぐ。車内は阪急グループらしく、木目調、緑のシート、ヨロイ戸と落ちついたものだった。山の中へ分け入っていく感じだが、越えた所にはちゃんと街が待っている。どんな小駅にも自動改札機が入っていて違和感を覚えるが、これらの設備が“スルッとKANSAI”を支えているのだ。

 分岐駅、岡場は1面2線の小駅で意外。公園都市線はトンネルを抜けると、ニュータウンの道路の真ん中を走ってゆく。つい数時間前、どこかで見たような光景だ。もっともこちらは、4両のワンマン電車で、しかも乗客はまばら。絶対人口が少ないのだろうし、この辺りまで来るとマイカー依存度が高いのかもしれない。公園都市線の電車はすべて、JR宝塚線と接続する三田直通で、大阪への通勤輸送主眼といった所か。

 有馬口まで戻り、有馬温泉へ。著名な温泉地だが、オフシーズンの昼間とあっては静かなものだった。折り返し準急は新開地行きだったが、有馬口で新開地行き快速が先行、接続したので、そちらに乗り換えた。そう、神鉄では快速の方が、急行より上位の列車なのだ。もっとも山岳電鉄の神鉄、飛ばせるわけもなく、停まらない分早い程度だが。

 さきほどは北神急行でショートカットした谷上〜新開地間だが、こちらも山合いを走る路線だ。特に菊水山駅は、普通さえ大半が通過する。スピードも上がらず、北神急行の存在意義を実感した。分岐駅・鈴蘭台からは見習い運転士が乗務。指差確認の声が客室まで響いてきて頼もしいが、時々首をひねっていたので恐ろしかった。


赤胴車が走る支線・阪神電鉄

 ハーバーランドやJR神戸駅舎を眺めて、神戸に来たことを実感。もう日も暮れてきたが、フリーチケットの旅は終わらない。阪神の支線区乗りつぶしだ!

 まず狙いは武庫川線。高速神戸〜西宮は直通特急、西宮〜甲子園は快速急行、そして準急に乗り換えて接続駅の武庫川へ到達した。全電車時刻表かせあればこそできた芸当だが、地元の人は何も見ずに同じ行動ができるのかな?

 鉄橋上の本線ホームから、中間改札を通って武庫川線ホームへ。通勤客らを乗せて、雨の中を2両の電車はひた走る。つい昨日(10月1日)からワンマン運行が始まったそうだ。中間2駅は無人駅。この2駅間相互の利用客は、運転士に申し出るように呼びかけているが、事実上無賃乗車を黙認しているとしか思えない。

 一方、尼崎から出るのは、環状線西九条へ向かう西大阪線だ。阪神の電車は性能に合わせて、普通=青胴車、急行=赤胴車と別れているのだが、西大阪線も武庫川線も各停なのに赤胴車。なぜかな?

 ツーマン運行で複線の続く西大阪線は、武庫川線よりも“格”が上のようだ。さらに最近、にわかに実現の兆しが見えてきた難波延伸が果たされれば、西大阪線にも阪神にも、大きな飛躍が待っている。が、今の所はホームを一面閉鎖した、暗い西九条駅が終点だ。

 ここでフリーチケットの旅を一時中断、JR大阪環状線で梅田まで出て、キタの新スポット・梅田スカイビル「空中庭園」からの夜景を堪能。地上180mの風と音を感じられるというのが、とても新鮮だった。また、展望台に行き着くには必ず、恐怖の「空中エスカレーター」を通らなければならないというのが面白い。京都駅ビルも同じ設計者なのだが、あちらの「空中街路」も恐怖だったことを思い出した。

 大阪市営地下鉄で、難波へ。道頓堀のネオンも届きそうなカプセルホテルに投宿。フリーチケットの旅はまだまだ続く・・・。

つづく



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