▲TOP ▲鉄道ジャーニー

体感”スルッと”KANSAI3日間(2)

2日目 地下&空中 新路線めぐり

複々線カッ飛びロマンスカー・京阪電鉄

 朝ラッシュを終えつつある9時前、地下鉄御堂筋線で淀屋橋へ。ちょっと暗い感じの京阪電車乗り場から乗るのは、京都行き特急電車だ。テレビカーや二階建て車両まで連結されて、いろいろな楽しみ方のできる京阪特急だが、今回は先頭へ歩みを進める。複々線の走りを、最前列から楽しもうという魂胆だ。

 地上に出ると、運転席後ろの遮光カーテンがスルスルと上がる。京橋で多くの人を飲み込んで、京都に向けてノンストップ! ・・・だったのは過去の話で、今年の夏から途中の中書島・丹波橋に停車するようになってしまった。これで京阪間をノンストップで結ぶ都市間電車はなくなったことになり、ファン的には残念な気もする。が、これも時代の流れか。京橋からは複々線が続く。先行する普通電車を、次々と追い抜いてゆく。迫力満点、京阪最高!

 やがて複線になり、都市が見えてきたと思ったら枚方市を通過。高槻市と隣接していて、JR新快速・阪急特急はそちらに停まるのだが、京阪特急はもっと京都寄りが停車駅だ。京橋〜中書島は28分無停車なので、広義の京阪間ノンストップといえるかもしれない。

 というわけで、新たに追加された停車駅で、宇治線の分岐する中書島で降りた。ここで、降りるわ降りるわ。出入口付近の補助椅子に座っている人達と、足が錯綜する。宇治線に乗り換えて、終点宇治へ。高架駅で、丸を基調にしたちょっとユニークなデザインになっていた。

 折り返して、黄檗(おうばく)でJR奈良線に乗り換える。同名駅でも位置はまったく違うなんてこともままあるが、KATT時刻表には「隣接駅」を示す点線が表されていて、これは便利だ。

 103系に揺られて、京都へ(もちろんこの区間は別料金)。1年ぶり2度目の京都駅は、あいかわらず「すごい」「でかい」と感じ、「さて京都にある必然性は?」と疑問を持つ。何十年後か、この近代建築物は、名実共に「京都の顔」となりえるのだろうか。2000年の自分には判断がつかない。


雅な地下鉄東西線・京都市営地下鉄

 20分ほど京都駅を眺めてから、市営地下鉄烏丸線乗り場へ。相互乗り入れしている、近鉄奈良線の電車だった。烏丸御池で、地下鉄東西線に乗り換える。同じ駅でも、東西線ホームにはホームドアが設けられているので、雰囲気は大きく違う。発車メロディは琴の音、そして電車の椅子も紫色に菱形模様と、「雅」な地下鉄だ。ここまで地域色の出ている地下鉄もそうないが、他都市で特色ある地下鉄を作ろうにも難しそうだ。

 終点で、JR嵯峨野線(山陰本線)との接続駅でもある二条へ。JR駅は木造りドームがホームを覆う、おもしろい構造になっている。JR電車が到着すると、東西線乗り場へ太い「流れ」ができた。東西線が込むか否かは、JR嵯峨野線接続電車かどうかで決まるようだ。

 折り返し、烏丸御池を通り越して、京阪との接続駅・その名も三条京阪で降りた。三条大橋郵便局なる素敵な名前の郵便局があったので、37局目の旅行貯金。本来は空欄になる「お支払い金額」の欄にぺたりと押されたゴム印は、三条大橋の欄干を象った特大サイズだった。

 京阪の鴨東線で終点、出町柳へ。ここから接続する叡山電鉄は「スルッとKANSAI」圏外のため利用できない。ガラス張りの素敵な展望電車「きらら」が手招きするが、今回は泣く泣くパス! きっとまた、ここまで来るぞと誓った。

 こうして半日の(しかも観光らしいこともしていない)京都滞在は終了。ふたたびロマンスカーに揺られて大阪方面へ。七条を出ても空いていた車内だが、丹波橋・中書島と客を呑み込み、満席近くなった。今の状態を見ると、これまで停まっていなかったのが不思議といえるかもしれない。もう、伝統にこだわっている時代ではなくなったのだ。


民鉄串刺し空中散歩・大阪モノレール

 天満橋で、地下鉄谷町線に乗り換える。社会科見学の小学生達の喧騒に囲まれること二十数分、終点大日着。接続するのは、総延長世界一のモノレール「大阪モノレール」だ。とりあえず一駅隣の終点、門真市へ向かった。

 折り返し電車(モノレールも電車と表現するんだと妙に感心)に乗り込み、大阪空港方面へ。他の鉄道路線と交差する場所では、マンションを「見下ろして」走るほど高い場所を走る。交差する民鉄全6路線と接続駅を設けているにも関わらず、JR京都線だけは完全に無視しているから面白い。

 「太陽の塔」が見えてくれば、彩都線との分岐駅・万博公園駅だ。その彩都線は、今のところ1時間に2.5往復、1列車がピストン運行するだけの閑散路線。複線に敷設されたレールも「意味ないじゃん!」。終点は阪大病院前。休診日はガラ空きだろう。

 帰路は彩都線唯一の中間駅、公園東口で降りて、万博公園の中を歩いて万博公園駅に向かった。そびえ立つシンボルは「太陽の塔」。思っていたよりもずっと大きい。明るい未来に向かって、疑うことなく躍進を続けていた万博当時の人々と、世紀末の今同じ塔を見上げる自分の気持ちに、さてどれくらいの違いがあるだろうか。

 万博公園駅から、ふたたび空中散歩。彩都線からの接続も受けて、空港方面の電車はかなりの混雑をみせた。ちなみに、ここまで乗った電車はすべてロングシート。すれ違った電車にはクロスシート車が多く、あちらに乗りたかった。

 阪急宝塚線との接続駅、蛍池を出ると線路はぐっとカーブを切り、大阪空港に到着した。駅と空港ターミナルは短い歩道橋で結ばれていて、極めて便利だ。空港ターミナルの展望デッキはウッディ調でまとめられていて、しかも無料。ショッピングゾーンも充実。こりゃ気軽に遊びに来れていいや! タイミングが悪く飛行機の離発着は見られなかったが、遠く梅田スカイビルを望む眺望に満足した。


一味違う「阪急電車」・能勢電鉄

 大阪空港からは、気分を変えて大阪空港交通のリムジンバスを利用した。梅田、京都、三宮や関空など各方面に走るリムジンバスだが、スルッとKANSAIに加入しているのは川西方面のみだ。前後に扉のついた一見路線バス風の車両だったが、いざ乗り込んでみると高速バスの雰囲気だった。バイパス道路を快調に走り、賑わう川西ターミナルに到着した。

 ここからは、能勢電鉄に乗り込んで終点・妙見口に向かう。川西能勢口駅の改札は、阪急宝塚線と共通。車両も阪急の中古(もっとも色が違うので、一見分からない。それだけ阪急=マルーンのイメージが強いわけだ)で、しかも10分間隔の運行とあっては、ほとんど「阪急能勢線」のノリである。5時前でラッシュタイムにはまだ早いが、乗客はいっぱい。それでもワンマン運行なのだから、鉄道経営ってラクではないのだなと思う。

 しばらく阪急の雰囲気のまま平地を走っていたが、やがて山へ山へ・・・ こんな路線は阪急にはないぞ! 山下で日生方面への乗り換え客を、山の団地の光風台、ときは台でも住人を降ろしてゆく。終点、妙見口まで乗り通した人はわずかだった。

 だが、山間の集落に静かに佇む妙見口駅こそ、今回初めて出会った終着駅らしい終着駅だった。夏の夕暮れという時間が絶好だったのかもしれないが、虫の声を聞きつつ涼風に吹かれる電車の待ち時間は、なんともいえない風情が漂っていた。

 折り返し、2両ワンマンの電車で山下まで戻り、同時刻発車の日生中央方面電車へダッシュで乗り換え。いきなりトンネルをくぐって、田んぼの中を高架線で駆け抜ける・・・ あれ、もう何度見た光景だっけ? 予想どうり、日生中央はニュータウンの核となる駅だった。同じ始発駅なのに、こうも表情の異なる終着駅を持つとは、なかなか奥深い電鉄だ。

 電車の姿を写真に収めていると、休憩中の運転士さんに声をかけられ、運転台に入れてもらえたのに加えて、いろいろと能勢電事情を聞かせくれた。内容については伏せておくが、「4両のワンマンはきつい」という事は、現場の声として記しておいてもいいだろう。このざっくばらんな運転士さんのおかげで、好きになった能勢電をますます好きになってしまった。


夜の車内も駅もひっそり・大阪市営地下鉄千日前線

 川西能勢口で阪急宝塚線・梅田行き急行を待っていると、梅田発・能勢電日生中央行き直通特急「日生エクスプレス」が入ってきた。6両編成でクロスシート車も連結した、立派な「特急」電車が能勢電を走る、失礼だがなんだか信じられない気分だ。

 急行で、キタのターミナル阪急梅田へ。できれば今春から走りはじめた特急に乗りたかったが、神戸線・京都線と違ってデータイムのみの運行のため、叶わなかった。もっとも川西からでは、所要時間・停車駅とも急行と同じではあるのだが。

 大阪らしく「きつね」うどんの夕飯を済ませて、御堂筋線でなんばへ。千日前線に乗り換えて、南巽方面を「乗りつぶす」。夜になっては車窓も望めず、それならどちみち車窓のない地下鉄を乗りつぶしてしまえという魂胆だ。我ながらグットアイデアだと思ったが、車窓のない地下鉄はやはりつまらない。なぜそんな電車に乗るのかと問われそうだが、そんなの自分だってよく分からない。

 終点、南巽周辺はそこそこ建て込んではいたが、ひっそりとして寂しい。市バスの試乗を試みたものの時間が合わず、隣の北巽でも振られてしまい、結局どんな場所を走っている地下鉄なのか分からずに、乗りつぶしただけで終わってしまった。しかし二度と来ることもないだろう。

 今宵の“宿”は、難波のとなり桜川駅前の健康ランド。わずか1800円で夜明かしできるのだから、仮眠室へ吹き込むすきま風が寒かろうが、阪神高速の騒音が耳障りだろうが、文句は言えない。疲れているから眠れたようなものであった。

つづく

inserted by FC2 system