▲鉄道中断点、白馬高地駅
▲「鉄馬は走りたい」
▲ゆったりした気動車
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ハイカーは途中駅で降りて行き、新炭里(シンタンニ)を出る頃には座ることができた。京元線には2003年、当時の終点だった新炭里まで乗ったことがあるのだが、昨年、白馬高地(ペンマゴチ)まで1駅延伸。この区間は初乗りとなる。
元を正せば京元線は、現在 北の管轄下にある元山(ウォンサン)までの路線である。白馬高地までの延伸は、南北分断で休止に追い込まれた区間の「復旧」と捉えられているが、実際は旧線を放棄して新しい線路を引き直している。車窓右手には、休止線から正真正銘の廃線になった、旧京元線の錆びた鉄橋が見えた。軍施設ではサッカーに興じる若い軍人たちの姿もあり、なごやかな雰囲気ながら、38度線より北側の緊張感があった。
KTXのような、真新しい立派な線路を走ること約10分、韓国最北の駅・白馬高地着。周辺は田んぼが広がる平和な風景で、38度線を越え、北朝鮮と対峙する街という緊張感は感じられない。「鉄道中断点」は新炭里から北へ移動し、北への鉄路延伸を願う「鉄馬は走りたい」と書かれた看板も、白馬高地に移った。韓国国民の願いは、北へと少し近づいたことになる。
緊張感のある、事実上の国境目前の地ではあるが、非武装地帯(DMZ)への訪問も、立派な観光資源の一つ。白馬高地駅からも、朝鮮戦争の戦跡地や北の展望台へ行ける「安保観光」のバスが出ており、11,000ウォン(1,100円)で参加できる。僕は2003年に新炭里から参加したことがあるので、今回は満員のマイクロバスを見送った。
賑やかな安保観光のバスが出て行けば、駅は急に静かになった。新駅なので、周囲にこれといったものはない。駐車場には何台もの車が止まっており、鉄原(チョロン)郡の住民にはパーク&ライドで便利に利用されているようである。駅舎二階に、地元婦人会が運営する食堂があったのは幸い。アツアツのキムチチゲをブランチにした。
帰路の列車は余裕があり、ゆったりしたシートにおさまって、ローカル線の風情を満喫。今度は逍遥山で電車に乗り換えた。列車用ホーム1本、電車用ホーム1本の小さな駅だが、駅舎はハイカーでいっぱい。京元線には、緊張感とのんびりさが同居していた。
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