僕は明日、月曜日に代休を当てているけど、同行者は出勤日。ぼちぼち、東京に帰らねばならない時間である。しかし鉄道旅行派たるもの、帰路も「往路」の気分で楽しみたい。そこで三陸までを夜行バスで倹約した分、帰りはちょっと贅沢してみることにした。
久慈駅に進入してきたのは、八戸行きの団体列車・東北エモーション号。肥薩おれんじ鉄道の「おれんじ食堂」に続き、昨年10月にデビューしたレストラン列車である。料理を沿線レストランからケータリングしてくる「おれんじ食堂」と異なり、車内に調理設備を備えた本格的食堂車。八戸発はランチ、久慈発はデザートビュッフェを味わいつつ、移動を楽しめる列車である。
団体列車のため乗車券は一般販売されておらず、JR東日本の旅行センター「びゅう」の旅行商品という扱いである。しかし片道乗車のプランもあり、久慈→八戸間はデザートビュッフェ付きで4,000円と、比較的お手頃に楽しめるのはいい。
1号車は個室車、3号車はオープンダイニング車。テーブルにはすでに食器がセッティングされ、乗客の登場を待っていた。2号車の調理室は「ライブキッチンスペース」で、車内からはもちろん、車外からでもコックさんの調理の様子を伺い見ることができる。
ホームにはレストランよろしく赤い絨毯が敷かれ、出入口にはサンシェードがかかる。はやる気持ちを抑えて、さっそく乗り込む…ことができないのが残念!ぜひ乗りたかったのだが、2ヶ月前にはすでに満席になっており、キャンセルも出らず、ついに切符を入手できなかったのだ。直前にキャンセルがあったかもしれないが、三陸沿岸各駅の「びゅう」は土日休みばかりで、再チャレンジすらかなわなかった。いつか乗ってみたい。
隣のエモーションをうらやましく眺めつつ、僕らは後続のリゾートうみねこ号に乗った。1両だけの指定席も早くから埋まっており、改札に早くから並んで、眺めのいい海側の自由席を確保。窓が大きく、席を外に向けて座ることができる展望重視のジョイフルトレインだが、普通乗車券で乗ることができて、かなりお得感のある列車である。
ただリゾートうみねこは、もう3度目の乗車。隣の東北エモーションを眺めていると、やっぱりあちらに乗りたかったと改めて思う。エモーションのデザートビュッフェの代わりに、道の駅で買い込んだ地酒を開けて、出発進行だ。
僕らと同じく、三鉄全線開業に立会いに来た帰路の人も多いようで、指定席・自由席とも満席状態だ。八戸線は、太平洋とつかず離れず走る絶景路線で、それだけに津波の被害も大きなものだった。他の路線と違いわずか1年で全線復旧できたのは、移設を伴わない現地復旧だったから。代わりに万一への備えには万全を期し、列車には避難ハシゴ、沿線には高台への避難階段が整備されている。
海辺に並べられたドラム缶には「ありがとうJR」の文字が書かれており、沿線の人々の気持ちが伝わってきた。午前中は晴れていた空も、青森県に入ると曇り空に。ウミネコ島が見えてくれば、八戸市内である。
|
▲東北エモーションを待つスタッフたち
▲ライブキッチンではデザートの準備が進む
▲海岸に並んだ「ありがとうJR」の文字
|