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1日目【2月28日】 佐賀→仁川→ソウル→平澤

LCCらしくない?スムーズさで韓国へ


新たな活路を見出したLCC空港・佐賀へ


▲空港へ続く真っ直ぐな道(停車して撮影)


▲佐賀空港ターミナル着



▲大行列ができていたt−wayカウンター

 韓国のLCC・t−way航空が、昨年12月、新たに佐賀〜仁川線を就航させた。t−wayは、前身の韓星(ハンソン)航空から続く、韓国LCCのパイオニア。一時は経営難に陥ったが、現在は海外にもネットワークを広げ、新千歳や福岡、台湾松山などへ就航している。

 一方の佐賀空港は1998年の開港以来、東京線こそ本数を増やしてきたものの、名古屋線と大阪線は休止になり、あまり好調とはいえない状況。そこでLCCの誘致に活路を求め、2012年には春秋航空の上海線、続いて2013年の12月にはt−wayの仁川線が開設された。

 夏には、春秋航空の国内線・成田行きも就航を予定しており、にわかに活況を帯びてきた佐賀空港。福岡空港から1時間強という立地を背景に、成田や関空のようなポジションを目指し、鋭意「営業」が続けられているようである。

 さてt−wayの佐賀就航に際しては、就航記念の特別割引運賃が設定された。その最低運賃は、何と片道1,000円。当然人気は高く、10月の発売開始と同時にあっという間になくなってしまった。同時に2,000円、3,000円運賃も設定されており、これにはしばらく余裕が。特に韓国への旅を急ぐ理由はないけど、せっかくの機会、旅立ってみるか!

 佐賀便は、昼過ぎに仁川→佐賀への便が飛び、夕刻に折り返していくダイヤ。どちらかといえば韓国から利用を想定した時刻設定だけど、運航は水・金・日なので、金曜日の午後に休めれば週末2泊3日の旅を楽しめる。2,000円席が残っていた2月最終の金・日の席を抑え、数ヶ月後の旅立ちを心待ちにしたのだった。

 佐賀空港への公共交通機関は、佐賀駅からのバスのみ。LCCの運航日には福岡からの直行高速バスも設定されているけど、久留米に住む僕には無縁である。しかし佐賀空港のなによりの持ち味は、広大な無料駐車場だ。久留米からなら、車でちょうど1時間。マイカーさえあれば、福岡空港よりも便利に使える空港である。

 これまで佐賀空港には、ドライブコースとして何度か立ち寄ったことがあるけれど、実際に飛行機に乗るのは開港16年目にして、初めてのことだ。当日、午前中はいつも通りの仕事をこなし、帰宅後荷物をまとめて出発した。

 筑後川沿いを大川市へ下り、佐賀市に渡って田園地帯を南下。筑後地域の道路標識にはきちんと「空港」の文字があり、ナビなしでも迷うことはない。干拓地帯に入ると、どこまでも真っ直ぐな道が続く。北海道の大平原のようではあるが、地盤の弱い干拓地では地盤沈下が見られ、橋梁の前後には大きな傾斜が生じていた。

 4時過ぎに空港へ到着。無料駐車場は満車近かったが、たまたま出て行った車があったようで第1ターミナルにほど近い位置に空きを見つけた。ターミナルの入口までは、車から1分。これなら荷物が多くても、ラクラクだ。

 ターミナルに入ってみれば、見慣れないt−wayのカウンターに長蛇の列ができていた。出航1時間前だったが、僕は最後の乗客だったようである。手続きの開始は1時間半前、締め切りは30分前と、国際線にしてはギリギリまで対応してくれて、次回はもう少し遅く来ても大丈夫かもしれない。LCCながら手荷物は無料で預かってくれるが、2泊3日ではさほどの量ではないので、機内に持ち込んだ。

 手続きを終え、2階のショップに行って、知人への土産を品定め。今は福岡人になったけど、佐賀出身者としては「佐賀錦」が最適だろう。ターミナルには有明海を一望するレストラン兼喫茶もあるので、はやめに行っても手持無沙汰になることはない。

 ソウル線就航を期に建設された国際線ターミナルへは、国内線ターミナルから舞台裏のような通路を渡って行く。荷物検査、出国手続きの窓口は1つのみで、出航時刻が迫る中、審査官はテキパキと審査していた。

 事実上のLCC専用になる国際線待合室は、ガラス面が大きく気持ちのいい空間。壁面に使われている木は、県産材なのだろう。免税店もあり物色していきたくなるが、待合室にたどり着いた時には出航時間が数分後に迫っており、いそいそと搭乗した。

 t−way佐賀線に使われる機材は、ボーイング737-800。189席を有する、中型機である。LCCだけにシートピッチは狭く、通路側の席には先客がいたため、窓際の席へ入るのには苦労した。全体的にボロな感じはないのだが、前の席からは綿がはみ出していて、大丈夫かなと気にはなる。

 団体さんが搭乗していたお陰で、席は8割以上は埋まっていた。まずは盛況にほっとするものの、席が狭いLCCだと、ギッシリ詰め込まれた感はある。審査を通過し、最後の乗客が搭乗したのは出航3分前。LCCにありがちな遅れはなく、何とか間に合った。


▲案内の文面はハングルの方が大きい


▲解放感がある国際線待合室


▲出航を待つt−way機


今回の旅のルート
スムーズに機外へ、ソウル市内へ


▲短距離路線としては充分な機内サービス


▲シャトルに乗ってターミナルへ



▲快速・快適な直通列車


▲週末帰省客で賑わうソウル駅

 定刻にブリッジを離れた飛行機は、滑走路の東端に向かって進み始めた。大きな空港のような並行誘導路はなく、滑走路の端でおもむろに方向転換すれば、即、離陸体制である。本数の少ない地方空港ならではで、他の航空機の出航待ちもない分、きわめてスムーズだ。離着陸が錯綜すると影響は大きいだろうけど、佐賀空港の本数ならその心配はないだろう。

 離陸した飛行機は、一路進路を韓国へ…と思いきや、有明海上を何度も旋回して高度を稼いでいく。佐賀平野の北側には1,000m級の脊振山系がそびえており、ストレートに超えて行くことはできないようだ。窓の外には、有明海のノリ養殖場や平成新山が見えて、なかなか楽しい眺めだった。

 水平飛行に移ると、飲み物と菓子のサービスが始まった。このあたりを省略して経費を削減するのがLCCのスタンスなのだが、t−wayは「LCCらしくないLCC」と呼ばれる。菓子は外国製(韓国製でもない)のチップスで、機内のあちことからボリボリという音が響き始めた。

 機内誌も分厚い立派な体裁で、日本語のページもある。佐賀の特集を組んでもらっているのは、地元民として嬉しい。「新福岡空港」的なポジションを狙う佐賀空港とはいえ、佐賀県にカネを落としてもらってナンボである。初めての日本で佐賀に時間を費やすこともなかろうが、2度目、3度目という個人旅行者には、ぜひ佐賀の魅力も味わってもらいたいものと思う。

 仁川まではおおむね安定した飛行で、遅れもなく、定刻前には仁川空港へ着陸。規程の到着時刻の2分後、18時32分には韓国の地を踏むができた。ただLCCだけにターミナルは遠く、本体ターミナルから離れたコンコースAに到着。地下を走るシャトル列車で、ターミナルへと移動する。

 シャトルトレインは、無人運転。5分間隔の運行なのだが、エスカレータを降りたところでちょうど到着、すぐに折り返しの列車が発車した。全線地下で車窓の楽しみはなく、釜山の地下鉄4号線のようだった。

 入国手続き場はがら空きで、あっという間に審査が完了した。荷物は持ち込んでいたので、ストレートにゲートへ直行。銀行で両替して空港鉄道の駅に着いたのが、18時50分だった。こんなにスムーズとは思ってもおらず、間に合えば御の字と思っていた19時発のソウル駅行き直通列車に、余裕を持って乗ることができた。

 空港鉄道は今、新幹線格のKTXの乗り入れ準備を進めており、改札口にははやくも「KTX」の文字が現れていた。一般・直通で別れていたホームも、KTXに1本を譲り渡すべく、統合されている。停車位置を前後にずらし一般と直通の乗り場を分けているのだが、停止位置が重なる一部の号車では乗降できず、成田空港の第2ターミナルビル駅のようになっていた。

 全線開通で、ソウル駅まで最速の交通機関となった空港鉄道。全席指定、ノンストップの直通列車は30分に1本で便利なのだが、不人気なのか8,000ウォン(800円)の特別割引運賃は継続中だった。乗車率は半分程度と、まずまず好調なのだが。

 空港鉄道のソウル駅は地下深く、地上駅を発着する長距離列車との乗り換えに時間がかかるのは泣き所。地下鉄1・4号線に乗り換えようと思えば再度地下へ降りなければならず、なぜこんな不便な位置に作ったのかと思う。数分遅れたこともあり、乗り継げるかなと期待していた19時50分の急行電車(特別快速格の通勤電車の急行)には間に合わなかった。

 各駅停車に乗っても時間がかかるばかりなので、後続の長距離列車「ムグンファ」で、ソウル南部の水原(スウォン)を目指すことに。郊外への通勤客に加え、帰省客も多い金曜夜の列車は満席で、立席券を求めた。

 ホームにも、明らかに座席定員を超える人々が待っている。入ってきた列車に「カフェ車」が連結されているのを見つけるや、ホームで待っていた人が大挙動き始めた。夜8時台ではカフェ車も営業休止状態で、皆カフェの「席」を自由席代わりに求めていたのだ。それもあっという間に埋まると、遠慮なく床に座り込む人が目立った。

 カフェ車には10分1,000ウォンで利用できるマッサージチェアの部屋があり、営業していれば癒されながら水原に向かおうと思っていたが、休止状態ではそれもかなわず。ぎっしり満員のカフェ車に居場所はなく、最後尾のデッキに居場所を求めた。

 ソウル駅を発車した時点では空席が多く、座ってしまおうかとも思ったのだが、サブターミナルの永登浦(ヨンドンポ)にはソウルと同じくらいの人が待っており、ぎっしり満員に。通勤電車に乗っていれば、もっと混雑していただろうと自分に言い聞かせながら、水原までの40分間を、じっと耐えた。

 水原で、下りの普通電車に乗り換え。「老弱者席は常に空けておき…」という放送が入り、「優先席」でないことを知る。結局、目的地の西井里(ソジョンニ)に着いたのは9時半頃だった。空港で素直にリムジンバスに乗っていれば、9時過ぎには着いていたことだろう。それでも列車に乗りたいのが、鉄っちゃんである。

 西井里駅前でタクシーを捕まえ、友人宅へ。いつの間にか初乗り運賃は、3,000ウォン(300円)にまで値上がりしていた。日本よりはまだまだ安いとはいえ、僕が留学していた10年前に比べれば倍以上の値段である。

 夜10時前、真新しい高層マンション団地の「ハヌルチェ」に到着。友人家族の家に、御厄介になった。友人夫婦の結婚式以来だから、もう5年ぶりの再会である。二人にも子どもも生まれ、お互いの環境は激変したのだが、旧友に会えば気分は青春時代。夜は遅かったが、話は尽きなかった。


▲カフェ車に群がる乗客たち


▲西井里駅前の照明は鮮やか


▲高層マンション街「ハヌルチェ」に到着


▼2日目に続く
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