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3日目【3月2日】 天安→ソウル→龍遊→佐賀

空港から1駅先へ…通勤電車の観光列車


KTXでショート・トリップ


▲副都心?新都心?発展続く天安牙山駅前


▲ソウルまでの短区間利用者も多い



▲ボックスシートでモーニングコーヒー

 週末の気軽な韓国旅行は、3日目の3月2日(日)が早くも最終日。帰路の仁川~佐賀便の出航時間は、14時50分である。もう少し遅ければ、最終日も「1日」として楽しめるのにと思うが、韓国の航空会社ゆえ、韓国側の事情に即したダイヤになるのは致し方ない。空港での手続きの時間を考えれば、自由になるのは午前中いっぱいである。

 天安市街地の友人・鋼男君の家で目覚め、準備もそこそこに出発。昨日はだいぶ飲んだ上に、動画サイトを見ながら遅くまで鉄道談義で盛り上がったが、仕事とあれば仕方がない。仁川空港までは直行で結ぶリムジンバスが便利だが、やはり鉄道を使いたくて、KTXの天安牙山(チョナン・アサン)駅まで送ってもらった。

 天安市と牙山市の境界に位置する天安牙山駅は、10年前のKTX開業当時は光明(クァンミョン)駅とともに2駅だけの存在だった、KTX独立駅…つまり他線と接続しない、KTXだけが停車する駅だった。両駅とも、開駅当初は少ない乗客に泣いており、駅周辺も開発用地が広がるのみ。駅ばかりが立派で、特に光明駅に関しては韓国内でも無駄との批判が高かった。

 それが今はどうだろう。周囲には超高層のマンションとオフィスが林立し、市役所やスポーツ公園も立地。天安の新都心として、発展を続けていた。近郊電車が発着するようになったのも発展に拍車を掛けたのだろうが、やはりソウルまで35分という速度が評価されているに違いない。立派なKTXの駅舎内も、以前はガランとした印象だったのだが、今はテナントで賑わっている。

 天安牙山駅への停車列車もダイヤ改定の度に増えている印象で、休日の9時台もソウル行きの列車が雁行する。あえて1本送らせて、KORAIL自慢の新型KTX「山河」の運用列車を狙った。席も満席近いようで、自動券売機できっぷを買ったところ、(進行方向の)「逆方向座席」が指定されていた。全席回転式シートになったことが、山河の何よりの改善点のはずなのにと、鋼男君ともども首を傾げた。

 改札口(といっても信用乗車方式なので、改札機はない)で鋼男君と別れ、ホームへ。前の列車からわずか15分後にも関わらず、数十人の乗客がソウル行きの列車を待っていたことからも、KTXの短距離利用が定着したことを物語る。天安からソウルまで、急行電車で1時間半、特急でも1時間10分の距離を35分で結ぶKTX。運賃は邦貨でも1,300円を超え、韓国の交通費の相場を考えれば相当に割高なはずだが、時間を買う人は着実に増えている。

 指定された席は、カフェコーナー隣りのボックス席だった。スタンドライトが置かれた広めのテーブルが備えられ、グループ旅行には最適の席だが、KTXでもバラ売りされているようだ。同じボックス席でも、観光列車なら家族席、KTXだとビジネス席と呼ばれるのは面白い。走る会議室という設定意図なのだろうが、カフェの隣なので、レジャーにももってこいの楽しい席である。

 相席になったのは、兵役中の若者2人と、英語圏の大学教授だった。軍服を着ていても、日本であれば青春を謳歌している年代である。優秀な学生さんなのだろう、一人の英語はとても流暢で、内容はまったく分からぬ世間話を聞きながら、時速300kmでソウルへと向かった。

 巨大な光明駅に停車。トンネルをくぐれば在来線と合流し、通勤電車と併走しながら漢江を渡れば、首都の玄関口・ソウル駅に到着である。カフェコーナーでは、車掌さんと客室乗務員が「もうすっかり春だよ」と話していたが、その言葉に違わぬ青空である。

 澄み渡る空に、日本人が設計した旧ソウル駅舎も美しい姿を見せていた。KTXの新駅が完成以降、廃墟のような姿になっており心痛めたものだが、2年前に文化空間として再生された。ただソウル駅前は、以前からホームレスのたまり場のようになっていて、華やかな首都の影が見える場所でもある。酔っぱらった親父さんが、駅内ロッテマートの店員に何やら食って掛かっていたが、若い店員さんは「出ていって下さい!」となかなか強圧的だった。

 そのロッテマートで、お土産を買い出し。お土産にするならお土産用の商品より、普通の菓子類を求めたいので、便利な場所にあるロッテマートは重宝する存在である。またマートではCDも割安な値段で買うことができて、流行の曲を買うにも良かったのだが、CDコーナーは棚一つ分にまで縮小されていた。MP3(違法を含む)の普及で、日本以上に縮小してしまった音楽市場の今を垣間見る。

 時間はまだ10時半だが、空港周辺で寄り道したい場所があったので、早めの空港鉄道に乗った。各駅に止まる「一般列車」で、とりあえず来た列車に乗ったら、途中の黔岩(コマム)駅止まりだった。ソウル駅への延伸とともに、空港アクセスだけではなく地下鉄網の一員にもなっており、区間利用も増えたのだろう。ただソウル駅は他線との乗り換えにも不便なためか、途中駅からの乗客の方が目立った。

 各駅停車とはいっても駅間距離は長く、一般列車も実質的には急行クラスと言ってよい。よく整備された線路を、すべるように快走する。黔岩駅で下車すると、目の前に、空港へは後続列車に乗るようにと言う案内が日本語でも出ていた。間違えて乗ってしまう観光客も、多いのだろう。

 改めて後続の電車に乗り、永宗島に渡る。どこまでも続く干潟が車窓に映り、空港アクセス鉄道という利便性本位の路線ながら、なかなか風光明媚でもある。

 終点・仁川空港駅に到着。ほとんどの乗客が降りてしまったが、1両に10人ずつ程度の乗客が残った。週末だけの臨時駅、龍游(ヨンユ)駅までの旅の始まりである。



▲各地へのKTXが待機するソウル駅に到着


▲威厳ある姿を見せる旧ソウル駅


▲快走続く空港鉄道の一般列車


空港の1駅先には豊かな自然


▲階段だけの臨時駅に到着


▲手前が臨時駅の駅舎、奥はリニア新駅



▲砂州を歩いて行ける離島

 列車の行き先には仁川国際空港としか書かれていないのに、さらに1駅を走る週末だけの臨時列車。愛称を、「西海・海列車」と呼ぶ。龍游(ヨンユ)駅は空港鉄道の車両基地の片隅に開設され、回送列車に乗客を乗せる形。九州で例えるなら、博多南線のようである。この珍しい週末臨時列車に乗るために、はやめに出てきたのだ。

 1時間に1本の電車にどの程度の乗客がいるのかと思っていたが、なかなか盛況である。冬季の運休を経て、今シーズンの運行が昨日から始まったばかりで、メディアへの露出が多かった影響かもしれない。

 地下駅の仁川空港を出発すると、列車は20km以下の速度でそろりそろりと動き始めた。快速を誇る空港鉄道も、通常は乗客を載せない車庫への引き込み線とあって、最徐行を守るようである。地上に出ると車両基地が見えてきた。日頃は見られない車庫の風景を見られるのも、鉄っちゃんにとっては楽しい風景だ。

 仁川空港から10分弱で、龍游臨時駅に到着。開かれるドアは、先頭の一ヶ所のみである。ドアの位置にはホームというか階段が備わるだけで、臨時駅にしても思い切った最小限の施設である。

 車両基地の敷地内を歩き、正門まで行くと、小さな駅舎が現れる。小さいながら、自動改札や自動券売機、飲み物の自販機も備わっていた。トイレこそないが、検修庫のものを借用できるようになっている。

 臨時駅の背後には、立派な駅舎が立ちあがっていた。空港鉄道のものではなく、試運転中の都市型リニアモーターカーの駅である。今年の8月には開業予定とかで、その際には空港鉄道の臨時駅もお役御免になることだろう。リニアになれば本数も増えるだろうし、発展的解消といえる。防音壁のないリニアは眺めも良さそうで、早く乗ってみたいも。ただ各地の新交通は開業が遅れるのがお約束で、しばらくは今の状況が続くかもしれない。

 観光列車が走るほどの場所なので、臨時駅周辺は風光明媚だ。駅から歩いて数分の海岸には「刺身センター」なるビルがあり、刺身屋や海鮮鍋の店がずらりと並んでいた。昼食時とあって、お店は呼び込みに懸命だ。韓国への出国、帰国の際にはもちろん、トランジットの間に1駅電車に乗って刺身ランチというのも、オツかもしれない。

 さらに数分を歩くと、島に渡る砂州に出てきた。のどかな風景は、アジアのハブ空港とも呼ばれる巨大空港の近所とは思えない。映画でお馴染みの実尾島や、天国の階段ロケ地の舞衣島へも、渡し船ですぐそこである。留学中の11年前に訪れた時は、船着き場までのバスが少なく苦労した長峰島へも行ける。今回は時間もなく、砂州の途中で引き返してしまったが、飛行機に乗る前の島歩きなんてのも面白いかもしれない。

 すっかり島旅気分を満喫し、帰路の列車で仁川空港駅へ。海への行楽から帰るには早い時間で、電車はガラガラだった。なお本数の多い空港鉄道だが、海列車の本数は限られているのでご注意を。仁川空港から龍游臨時駅への列車は、8時~18時の毎時32分発。龍游臨時駅からは、9時から19時の毎時27分発である。

 仁川空港に到着すると、開いたドアの目の前のホームドアが閉まっており、びっくり。直通列車(指定席の空港特急)の乗車口となる後部2両からは降りられないようだが、そのような案内案内は一切なかったので、面喰う。一瞬状況を理解できず、発車されても困るので、非常操作でホームドアを開けようと思ったのだが、開いているドアを見つけて小走りに飛び出した。

 空港駅からターミナルへは歩いて数分かかるのがタマに傷で、巨大な駅とターミナルをとぼとぼ歩きT-wayのカウンターへ着いた。手続き開始となる出航2時間前だったが、佐賀空港の行列が嘘のような閑散ぶり。3分で搭乗手続きが終わり、国際線の手続きの最短記録である。

 おかげでランチの時間を取れたのはありがたく、せっかくなので韓国のソウルフード・ロッテリアを探したのだが、ターミナルでは見つけられなかった。仕方ないので「本粥」で、お粥をランチに。韓国内でも割とメジャーなチェーン店で、リゾット風の「粥」も多くて楽しめる。ちなみにロッテリアは入国手続き後のエリアにあり、さっさと手続きをしてしまえばよかったらしい。

 改めて出国手続きに出向けば、行列もなくスムーズ。免税店で上司へのタバコを買い込み、シャトルで搭乗棟へと向かった。こちらにも土産物屋や飲食店が軒を連ねており、ターミナルよりずっと空いてるので、穴場といえるかも。

 帰路の佐賀行きは4割程度しか席が埋まっておらず、窓側席でも出入りに不自由せずありがたい。ただあまり空きすぎていると、今後も続いてくれるか不安でもあり、ほどほどには乗っていてほしい。

 遅れがないのは往路と同じで、逆に12分の早着で佐賀空港へ。所定の着陸時刻の10分後には空港の外に出ることができ、コンパクトな空港の面目躍如である。韓国で温泉に行けなかった代わりに、大川の温泉に立ち寄って帰り、旅の疲れを落としてきた。

 半日休暇で気軽に旅だった割には、久々に会った友人らと語らえて、気分はすっかりリフレッシュ。さすがに2,000円で乗れるのは今回だけだろうが、機会を見つけてまた充実の週末を過ごしたいものである。


▲列車後部はホームドアだけ開かず面喰う


▲T-wayの背後にはライバルの済州航空


▲LCCばなれしたT-wayも座席サイズはLCC仕様


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