駅ビルが覆いかぶさり、暗い博多駅ホームにあって、885系は今もって新鮮な白い車体を輝かせていた。「ミレニアムエクスプレス」のキャッチフレーズの通り、2000年に登場した車両なので、はや14年選手だが、今もって新鮮さは失われてはいない。車体下部のラインが黄色い「かもめ」、青い「ソニック」と区別されていた885系も、今は共通運用になり、塗装もエンブレムも統一された。ただ先頭のエンブレムは「かもめ」のシルエットが残されており、2000年デビューの1次車であることが分かる。
自由席まで革張りシートという、883系とは違う意味での衝撃があった885系だが、こうした車両ほどグリーン車で差別化を図るかに苦心するもの。その答えは、他に例を見ない完全独立3列シートである。進行方向右側の2列の距離は近いけれど、片方だけ回転させることができるので、3人グループでの利用にもうってつけだ。テーブルは床からそれぞれが独立して立っており、華奢にも見えるのだが、登場から14年故障もなく使われているのだから、それなりに丈夫なようである。
先頭となるグリーン車は運転席とガラスで仕切られており、ソニックのような前面展望を期待するが、走り始めても、座ったままだと前を見通すことはほぼ不可能。半室グリーン車の「狭苦しさ」を解消するための、「見せる運転席」というコンセプトである。
ちなみにこのガラス、事故の際の「衝撃的なシーン」を乗客が見なくて済むよう、非常ブレーキの作動時には曇る仕掛けがなされている。駅停車時に非常ブレーキをかけた際にも作動し、手品のような光景だった。
グリーン車への入口右手には、雑誌や新聞、おしぼり等のサービス品が置かれたサービスコーナーがあり、携帯電話もここでと案内されている。木のカウンターの下には冷蔵庫があるが、中身はからっぽ。登場時にはフリードリンクサービスということで、缶入りの飲み物が置かれていたのだが、普通車から出張してきて拝借する不届きものが多かったらしく、ほどなく他の列車と同じ客室乗務員からのサービスに変わった。それも廃止され、グリーン料金は変わらぬままサービスダウンとなっている。
色あせない885系だが、15年の時代を感じる部分もある。最近の特急では当たり前の設備になってきたコンセントは、2号車にこそ全席装備だが、その他は車端部にしかない。2号車の装備すら、登場時には先進的に映ったものだが、スマホ時代の今は全席に要請される設備になっている。883系でもグリーン車には全席装備だったが、これとてリニューアル時に取り付けられたものだ。鉄道車両の寿命に比べて、時代の流れは早い。
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▲ソニックと共通運用になっても残る「かもめ」エンブレム
▲今もって新鮮な「書」のギャラリーコーナー
▲完全独立シートが並ぶグリーン車内
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