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1日目2日目

2日目【5月19日】
大阪周遊パスで大阪おのぼりさん

大阪市内⇒門司⇒久留米



街びらき間もない「うめきた」を歩く


▲快晴の六甲アイランドを快走する六甲ライナー


▲駅の中で堂々と商売するチケット自動販売機



▲「赤胴車」もほとんどがニューカラーに変わった

 夜景が見えるように開け放していた窓から、さわやかに朝陽が差し込み迎えた2日目の朝。激安プランで泊まった高級ホテルとはいえ、ホテル内で朝食ビュッフェなんて食べていたら お金がいくらあっても足りないので、すきっ腹を抱えたまま宿を出た。どんなにいい所に泊まろうとも、根っこが貧乏性である。

 チェックアウトしてアイランドセンター駅に行くと、コンコースに面白いものを見つけた。切符の自販機、と書けば当たり前のようだが、チケットショップが置いている阪神やJR線の特割きっぷの自販機である。

 関西はチケットショップが充実していて、小さな駅の駅前でも「角のたばこ屋
」的雰囲気で切符を売ってる所もあるのだが、いくら他社線とはいえ駅のコンコースで堂々と売っているとは驚きである。六甲ライナーと他社もスルっとKANSAIで協力関係にあるのに、文句は来ないのだろうか。ありがたく、阪神魚崎〜梅田間の240円きっぷ(40円引き)を買っておいたが…

 今日も快晴。山の緑とビルの白が明確なコントラストを描く神戸の風景を見ながら、六甲大橋を渡り「本土」に戻った。魚崎駅は特急が停まるが、ライナーと阪神電車の乗り継ぎ駅として停車しているようで、駅前は「住宅地」という雰囲気。小さな喫茶店でモーニングにありつき、ようやくお腹が落ち着いた。

 直通特急に乗り、一路梅田へ。もともと阪神都市間にしか路線を持たない会社だけに、立体交差化率は高い阪神だが、さらに高架化工事が進捗中。住宅地の真ん中を高速で突進していく車窓は、少なくなりつつある。淀川を渡れば、水の都・大阪だ。

 梅田着。さて今日使う格安チケットは、「大阪周遊パス」である。大阪市内の地下鉄、バス、民鉄線も乗り放題で2千円。これに大阪市内の観光施設の入場券が大量に付いてくる。割引券だけではなく、「入場券」そのものも多いのがミソで、とても1日ですべては見て回れない。そこで今回はテーマを「大阪お上りさん」に定め、展望スポットを中心に巡ってみることにした。

 阪神電車を降りた足で、阪神梅田駅の駅事務室へ。しかしこちらには、大阪市内に加え阪神電車全線も乗り放題になる「阪神拡大版」しか置いていないとのこと。「今日もう阪神に乗られないんなら、地下鉄の駅に行ったがええですよ」と親切だ。お言葉に従い、梅田駅の定期券売り場へ。入場券・割引券がどっさり入った封筒を受け取った。

 駅を出ると、HEP5ビルの屋上にどんとそびえ立つ赤い観覧車が目に入った。この観覧車も無料で乗れるのだが、男二人で観覧車もあるまいとパス。駅北側へと歩みを進めた。5月の午前中とは思えぬ暑さで、じんわり汗をかく。

 梅田駅の北側といえば梅田スカイビルくらいしか印象になかったのだが、いつの間にやらヨドバシカメラがオープン。博多のヨドバシを想像していたら度肝を抜かれる規模の高層ビルで、太い人の流れができていた。そしてその後ろ、JR大阪駅の北口に先月26日オープンしたばかりの複合施設が、グランフロント大阪である。

 こちらは街開きから2回目の週末ということで、買い物客というか見物人が大挙押し寄せていた。超高層ビル3棟をデッキでつなぎ、これまでになかった「街路」が貫く。人の多さもだが、それをすっかり呑み込んでしまう施設の規模にも唖然だ。

 渋谷ヒカリエや東急直通化といった東京の「今」は、東京ネットのテレビに親しんでいる九州人としても、耳に覚えのある話題である。しかし大阪の情報となると、よほど注意深く聞き耳を立てていないと入ってこない。梅田の百貨店競争や大阪駅北口再開発「うめきた」の情報も、ネットで見聞きしたものだ。地理的には近い大阪と九州。九州新幹線開業で関西から南九州へぐっと注目が集まったが、九州から大阪へももっと関心が向かってもいいのでは?と感じた「うめきた」の賑わいだった。

 一方、グランフロントと新梅田シティとの間にあった梅田貨物駅は廃駅となり、上屋や線路は残るが、ガランとした空間にさみしさが募る。やがてはこの土地も、開発の波に呑まれていくのだろう。貨物駅跡をくぐる地下道は殺風景だが、再開発で不要になるものなので、あえてそのままにしているのだろうか。

 地下道をくぐり、梅田スカイビルへ。1993年オープンと、大阪駅北口では老舗?ともいえる高層ビルである。2棟の連結部分に広がる、大阪の代表的展望スポット「空中庭園」も、周遊パスの効力内だ。足元がすくわれるような「空中エスカレーター」を登れば展望台。鉄っちゃんとしては、地上を行き交う阪急やJRの電車が、模型のようで楽しくなる。洒落たカウンターで大阪の街を見下ろしながら食べるアイスの味も、また格別だった。

 しかし空中庭園のなによりの名物は、オープンエアの屋上。地上170mの風と音を、生身で感じることができる広場だ。特に、神戸・京都・宝塚へと阪急電車が3線同時発車で淀川を渡っていく時は、鉄橋で奏でる3重奏が響いてくる。他では、なかなか聞けない音である。

 来た道を戻ってもいいのだが、市内の阪急電車も乗り放題なので、阪急淡路駅へと歩いた。梅田から北へ一駅、神戸線と宝塚線の普通電車が頻繁に発着する駅である。なのに駅前は、横切る梅田貨物線が圧倒的な存在感を示すばかり。駅内はモトコーが思い出される時代がかった雰囲気で、昼間から飲んでもおかしくない雰囲気の店が入っていた。


▲巨大空間に息をのむ阪急梅田ビル


▲グランフロントと梅田貨物駅跡


▲淡路駅は時代がかった雰囲気


プリンセストヨトミの舞台を歩く


▲馴染みのある「赤い看板」がお目見え


▲空堀商店街は小説そのままの世界



▲典型的な戦前型庁舎の大阪府庁舎


▲ビジネスパークの高層ビル街を望む
 マルーンの電車に1駅揺られ、梅田駅へ。民鉄最大、10面のホームが並ぶ駅の規模は圧巻で、電車が到着すれば一気に人が押し出されてくる勢いも健在である。乗客減に悩む関西圏の私鉄ではあるが、やはり絶対数が大きい。

 そして阪急梅田駅といえば、昭和46年まで使われていた地上駅跡の連絡通路が、荘厳な雰囲気でお気に入りだった。阪急百貨店の建て替えとともに過去のものとなったのは残念だが、新しい百貨店でも大空間は健在。阪急百貨店ならではの豪華な装飾も、日々の通勤を豊かなものにしてくれそうである。返す返すも、阪急って「ブランド」だと思う。

 ぐっと庶民的な雰囲気に変貌する、地下鉄の東梅田駅へと歩みを進める。外郭団体が運営していた駅の売店は、「橋下改革」の一環でコンビニに変貌した。ファミマとともに運営権を手にしたのは、中国・九州ではお馴染みの「ポプラ」である。

 九州でも勢力が衰えてきている印象のあるポプラ、しかも関西での知名度はいま一つだったとのことだが、地下鉄への出店は認知度向上に大きく寄与していることだろう。起死回生のため、社運を賭けた出店だったのではと思う。大手コンビニに先駆けEdyを導入したり、お弁当に温かいご飯を詰めてくれたりと、実は個性光るコンビニでもあるポプラ。大阪から波に乗ってほしいものと思う。

 谷町線を谷町4丁目で降りて、空堀商店街へ。小説「プリンセストヨトミ」の舞台となる商店街で、一度訪ねてみたかったのだ。小説で描かれていた通りの、庶民的な雰囲気ただようアーケード街。アーケード内にアップダウンがあるのが、平野の民としては物珍しい。財団法人OJOはもちろん、お好み焼き「太閤」もなかったが、代わりに お洒落でちょっと高めのお好み焼き屋で昼食とした。

 谷町線で天満橋へ戻り、大阪城のお堀へと出てきた。皇居に例えれば、東京だと霞が関にあたる地区になるのだろう。歴史的建築物である、大阪府庁もここに立つ。玄関先で「断じて、大阪国を認めない!」と叫んでみたくなるが、警備員さんに怒られそうなのでぐっと我慢。アーチ式の玄関を横目に、並木道を歩いた。

 お堀を渡り「入城」した大阪城は、普通の週末ではあるのだが観光客で溢れていた。中国人をはじめ外国人の割合も多く、円安のいい影響も出始めているのだろうか。ありがたいお客様である。天守閣の真下で繰り広げられる、関西弁の外人大道芸人のパフォーマンスが馬鹿馬鹿しくも面白く、ついついラストまで見入ってしまった。

 大阪の代表的観光地の一つである大阪城も、もちろんパスで無料。あまりの見学者の多さに、エレベータは順番待ちになっていて、若ぶって階段で上がった。息を切らし自力で登って眺めた大阪の街が、美しくなかろうはずがない。皇居周りに負けない、豊かな都心の緑が気持ちいい景色である。筋肉痛に悩まされたのは、二日後の話だった。

 大阪城下の売店でアイスを食べ会計検査院の気分を味わってから、大阪城公園を、森ノ宮方面へと抜けた。天王寺までJRなら環状線で1本というのは分かっていたが、パスを有効利用するため地下鉄乗り継ぎで移動。中央線と谷町線を乗り継いだ。

 天王寺駅の外に出ると、建設中の超高層ビル「あべのハルカス」が天空を貫いていた。すでに高層ビルでは日本一の称号を得たビルだが、九州での知名度は今一つ。それだけに実物を見た時の衝撃は大きい…というか、もはや実感として掴みづらいスケール感である。ビルのまだ「根本」ともいえる部分に貼られた「100m」の表示が、地元では最高峰の久留米市役所の高さのはずだが、とうてい信じられない。オープンの暁には、周遊パスの無料施設に名を連ねてほしいものである。

 御堂筋線で1駅、動物園前へ。まだ夕方4時過ぎというのに、ジャンジャン街は立ち飲み屋も囲碁センターも、所謂「大阪のおっちゃん」でいっぱいである。ただ立ち飲み屋の中には、若い女の子の「立ち飲みガールズバー」的な店も数軒あり、どこも賑わっていた。囲碁センターにしても、おっちゃんオンリーではなく、20代らしき人もチラホラいる。来てみなければ、分からないこともある。

 ディープな大阪に飛び込んでみてもいいのだが、少々たじろいでしまった僕らは、観光客向けの串カツ屋で「おやつ」にした。串カツにプレモルは合わない気がしたし、まわりの店に比べればちょっとお高めだったけど、それでもお手頃だったのは さすがジャンジャン街である。

 タワーとは高さだけではない、そのシンボル性も、地域を代表するランドマークになるために不可欠だ…さほどの高さではないけど、大阪を代表する観光地として名高い通天閣も、もちろん無料。しかし展望台の入口に行ってみれば、45分待ちの行列が出来上がっていた。翌々日の朝日新聞「天声人語」には、ここ最近通天閣の入場客が増えているとの記事があり、時間によっては1時間待ちもザラらしい。残念だったが、帰路の船の時間も迫っていたので、1階のお土産屋で買い物をしただけで退散することにした。

 ただ通天閣は、外から見ても楽しい建物である。たとえば足元。なんと公道になっており、鉄骨の間を車が行き交うタワーなんて、本邦唯一ではなかろうか。先代の通天閣が、凱旋門の上にエッフェル塔を載せるという奇抜なデザインだった名残りと思う。また通天閣本通は、キン肉マンの街として売出し中。通りにはキャラクター像が経ち、グッズショップは「店内撮影自由」を宣言していて大らかだ。

 堺筋線、中央線、ニュートラムを乗り継いでトレードセンター前へ。最後の「お上りさん」は、大阪府咲洲(さきしま)庁舎。かつてワールドトレードセンターと呼ばれた超高層ビルである。巨大な超高層ビルなのに、人が少なくガランとした内部は寂しいの一言。空きテナントも目立つ。ただ公共施設なのだから、休日に人が少ないのは、当然といえば当然かも。

 経営不振による買収だとか、府庁舎全面移転の頓挫とか、明るくない話題も多い高層ビルではあるのだが、細かいことを考えなければ、眺望は素晴らしいの一言。夕暮れの大阪湾を背景に、広大な平野に広がる大阪の街並みが一望できる。展望台に上がってくる人も少なく、ゆっくりできるのもいい。

 再びニュートラムに乗り、フェリーターミナルに着いた時点でパスの利用は打ち止め。地下鉄と阪急に乗り、3つの展望スポットに登った運賃、入場料は3,050円相当となり、1.5倍分を活用した。今回は乗らなかった遊覧船や、大阪泊まりなら使いたい温泉施設も無料施設に名を連ねており、工夫すればまだまだトクができそう。また使ってみたい。


▲あべのハルカスと通天閣


▲おやつに串カツ


▲人影少ない未来都市を行くニュートラム


▲大阪湾の夕暮れを一望


夜景のきれいな船に泊まる


▲今日の「宿」にチェックイン


▲こぎれいな1等寝台個室



▲セルフの生ビールサーバー


▲明石海峡大橋に見送られ
 帰路は、名門大洋フェリーに乗って九州へ戻る。大阪南港は、ニュートラムの駅から歩道橋を歩いて5分という立地のよさだ。今回はパスがあったので地下鉄とニュートラムを乗り継いできたが、大阪と京都方面からは、ウィラートラベルの格安直行バスもある。

 フェリーに乗る時はせいぜい2等寝台までなのだが、今回は友人が格安で1等室を抑えてくれた。関釜フェリーの1等室には乗ったことがあるけど、国内航路での1等室は初めてである。船内の案内所で鍵を受け取り「チェックイン」。もうホテルに泊まる感覚だ。タオルと歯ブラシセットも貰えるので、手ぶらで乗れる。

 重い扉を開けてみれば、4人室だったのでびっくり。2段ベッドが2つずつに、小上がりが付いている。お茶用のポットや浴衣もあり、テレビでは船内の案内も流れている。地上の宿泊施設とそん色ない快適さである。

 船内には大浴場もあり、さっそく1日の汗を流しに行った。ちょうど出航の時間になり、流れる港の夜景を見ながらのお風呂は、オツなものだ。揺れるお湯に身を任せるのも、船旅の妙味である。

 風呂を上がれば、ご飯の時間。船内レストランは、カレー500円、カツオのたたき600円など、場所を考えれば良心的な値段である。食堂には生ビールサーバーもあり、冷蔵庫で冷やしたジョッキにセルフでそそぐ方式。こちらも500円と、市中の居酒屋価格に近い。窓の外に揺れる夜景を見ながら、いい気分でぐいぐい飲んだ。船内の飲み物自販機も市中価格で、経営努力に敬意を表したい。利用者としても持ち込まず、船内での「消費」に協力したいところである。

 大阪発便では、阪神地域から明石海峡にかけての夜景も楽しみの一つ。海上から望む阪神間に続く街並みや、六甲山の碇マークはフェリーならではである。明石海峡大橋の通過時間は21時と無理がない時間で、虹色のライトアップが美しい。新幹線やLCCでは味わえないひとときが流れていく。

 今回乗った1等は、定価だとネット予約でも1人当たり11,300円になるが、カーテンで仕切れるベッドの2等洋室なら6,500円と格安。今なら同額で、テレビ付きの特2等にランクアップできる。同室の人との語らいも楽しい雑魚寝の2等は、さらに安い5,300円である。

 また船会社のパックも格安で、九州からだとUSJ入場料付き1等往復で19,800円。大阪観光ならば、2等往復に1,000円分の電車チケットが付いて8,500円なんてプランもある。詳しくはCLTのホームページで。

 昨夜の睡眠時間は短かったので、10時過ぎには部屋の明かりを落として早寝。朝を迎えてもゴロゴロ過ごしていたら、展望プロムナードの朝食販売に間に合わなかった。船内放送の「お早目に」の案内には、素直に従っておいた方が良さそうだ。

 天候に恵まれた今回の旅だったが、門司で降りれば雨。連絡バスで運ばれるだけなのでさしたる影響はなく、JR門司駅で下車して、遅くて高い快速電車で久留米に戻った。3月までは、小倉から久留米への高速バスがあったのだが、4月から1日2往復へと大幅減便になってしまい、船のアクセスも悪くなったのは残念だ。

 久留米到着、11時半。日曜日は、まだ半日を余している。


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