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0日目【12月28日】
現在地を確かめたい

久留米→羽田→南千住


 旅に出る動機は、いくつかある。「日本の現在地を確かめたい」、これも僕が旅立つ理由の一つだ。

 地方都市に住む僕にとっては、東京の最先端も一つの確かめたい現在地である。八年前には、電子マネーがあらゆる場所で使えることに驚いたし、普段はテレビの中の世界でしかない最新スポットも、足を運べば実感として伝わってくるものがある。今の僕が日頃感じることができるのは、あくまで九州の一地方都市の姿。疲弊する地方経済や、田舎の過疎の問題は身近だが、中央の今と比べることで相対化できるものでもある。韓国人の友人と会話する中で、「今の日本ってこうなんだよ」と話す内容を間違えたくないという気持ちもあり、なるべく年に一回は東京へ足を運ぶようにしている。

 そして3・11以降、東北の今もまた、確かめたい『日本の現在地』になった。 少しずつ再建へ進みつつある街も、甚大な被害や原発事故で再起できない街も、同じ日本の一つの現実であり、現在地だ。昨年の年末年始には関東から東北まで北上、部分的に再開している鉄道を乗り継ぎ、厳しい現実を目の当たりにしてきた。自然災害に、あるいはエネルギーに対して、同じ日本に住む僕はどう向き合っていけばいいのか、多くのことを考えさせられた。

 時は巡り一年後の年末、昨年と同じく関東から東北まで、さらに北海道まで北上する旅を企てた。一年間で、日本の現在地はどれほど動いたのか。この目で確かめたい。

 そんな計画を職場で話していたところ、同期のザキが興味を示した。日数もお金もかかる旅、まず来ることはないだろうと思いつつ「興味あるなら来いよ」と誘ってみたところ、数日して、行きますというまさかの返事。驚いたけど、よし、共に確かめに行こうじゃないか。二ケ月前には飛行機を抑え、下調べに宿の予約にと、着々と準備を進めた。


▲広野町まで運行再開した常磐線(2011.12.30)


▲災害廃棄物と仙台空港に着陸する飛行機(2012.1.4)

▲イルミネーションに彩られた福岡空港


▲輸送力抜群のジャンボジェット
 迎えた旅立ちは十二月二八日、仕事納めの日である。夕方五時過ぎ、年末の挨拶もそこそこに職場を飛び出し、昨晩までにまとめておいた荷物を背負って、靴も北国仕様に履き替え、西鉄久留米駅へ。電車には乗らず、駅前の居酒屋へ飛び込む。同期の忘年会に顔を出すため、急いだのだ。去年も、同じパターンで旅立った。ザキも合流、一時間ばかり飲み、仲間たちに見送られて長い旅が始まった。

 西鉄電車と地下鉄を乗り継ぎ、福岡空港へ。通勤電車続きでさっぱり旅気分は盛り上がらなかったが、航空会社のカウンターに立ち、荷物を預けていると、ようやく遠き地へと旅立つ気分が盛り上がってきた。飛行機は、二階建のジャンボジェット。帰省ラッシュが始まっており、一階席の僕はテーブルもない非常口座席で混雑に耐えていたのだが、ザキの座った二階席はガラガラだったという。引越せばよかった。

 羽田着、十時半。この時間はモノレールの快速便もなく、各駅停車で浜松町に着いた頃には深夜の時間だ。ただ年末の金曜日、東京の街に深夜の雰囲気が訪れるはずもなく、山手線は新橋、有楽町と酔客を飲み込んでいく。みな楽しそうな雰囲気なら良いのだが、何か面白くなさそうな酔っ払いも多く、一触即発の空気も流れる。大荷物で迷惑を掛けがちな僕らは、逆鱗に触れないように静かに過ごす。

 上野駅で、常磐線に乗り換え。土浦方面への終電ということで、間に合おうと必死な乗客が多く、殺伐とした空気がただよう。定刻発車の予定だが、遅れている他線の接続を取るため、途中終着の次の快速を待ち接続させると放送が流れているのだが、酔客の耳には届かない。ぎっしり満員の状態で発車するも、三河島駅ホームに横になっている人がいるということで、日暮里で数分足止めを食らう。疲れた酔客のイライラした空気に緊張しながら、十二時前の南千住駅に降り立った。明日の朝は常磐線で北上する計画なので、少しでもゆっくり寝ていられるように南千住泊りにしていたのだが、金曜夜に都心を横断するのは危険だ。今後同じパターンで移動する時は、山手線の西側に宿を取ろう。

 苦労してたどり着いたツイン五千円の安宿は、リフォームしたばかりのようで清潔感がある。木造家屋ならではの音漏れさえ気にならなければ、極めて快適な宿だ。風呂に入り夜食を食べ、荷物を整理していればもう午前一時。明日は六時半起きである。


▽1日目に続く
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