旅に出る動機は、いくつかある。「日本の現在地を確かめたい」、これも僕が旅立つ理由の一つだ。
地方都市に住む僕にとっては、東京の最先端も一つの確かめたい現在地である。八年前には、電子マネーがあらゆる場所で使えることに驚いたし、普段はテレビの中の世界でしかない最新スポットも、足を運べば実感として伝わってくるものがある。今の僕が日頃感じることができるのは、あくまで九州の一地方都市の姿。疲弊する地方経済や、田舎の過疎の問題は身近だが、中央の今と比べることで相対化できるものでもある。韓国人の友人と会話する中で、「今の日本ってこうなんだよ」と話す内容を間違えたくないという気持ちもあり、なるべく年に一回は東京へ足を運ぶようにしている。
そして3・11以降、東北の今もまた、確かめたい『日本の現在地』になった。 少しずつ再建へ進みつつある街も、甚大な被害や原発事故で再起できない街も、同じ日本の一つの現実であり、現在地だ。昨年の年末年始には関東から東北まで北上、部分的に再開している鉄道を乗り継ぎ、厳しい現実を目の当たりにしてきた。自然災害に、あるいはエネルギーに対して、同じ日本に住む僕はどう向き合っていけばいいのか、多くのことを考えさせられた。
時は巡り一年後の年末、昨年と同じく関東から東北まで、さらに北海道まで北上する旅を企てた。一年間で、日本の現在地はどれほど動いたのか。この目で確かめたい。
そんな計画を職場で話していたところ、同期のザキが興味を示した。日数もお金もかかる旅、まず来ることはないだろうと思いつつ「興味あるなら来いよ」と誘ってみたところ、数日して、行きますというまさかの返事。驚いたけど、よし、共に確かめに行こうじゃないか。二ケ月前には飛行機を抑え、下調べに宿の予約にと、着々と準備を進めた。
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▲広野町まで運行再開した常磐線(2011.12.30)
▲災害廃棄物と仙台空港に着陸する飛行機(2012.1.4) |