函館で進行方向が変わったことにも気付かず、熟睡から目覚めたのは南千歳到着前だった。夜汽車初体験だったというザキは、あまり眠れなかったと浮かない顔だ。僕も夜汽車に慣れるまではだいぶ時間がかかったが、最近よく眠れるのは、酒の力によるところが大きい気がする。
札幌までは時間があるので、車内をひとめぐり。三両を連ねた寝台車は満席で、閉じられたカーテンがずらりと並ぶ様は、なかなか見ることができない光景だ。指定席は、かつて釧路行き夜行急行「まりも」に連結されていた「ドリームカー」で、夜行バスに対抗すべく整えらたリクライニングシートは、見るからに寝心地が良さそう。寝付けない時のために、サロンコーナーがあるのも親切だ。すべての指定席がドリームカーならこちらでもよかったが、増結指定席は普通の座席で、寝心地には天地の差がありそうである。寝台に逃げておいてよかった。
のびのびカーペット車は、船の桟敷席よろしくカーペット敷きの広間になっていて、枕、毛布も付いて五一〇円はお値打ちだ。ロフト状の上段もあり、壁に囲まれていて限りなく寝台車に近い。ぜひ乗りたくて一ヶ月前から狙っていたのだが、上段はおろか下段すら取れなかった。シーズンオフに、いずれ乗ってみたい。新幹線函館開業を控え、いつまで走ってくれるのか心もとないが。
まだ眠りの中にある、北の百万都市・札幌着。ホームに降り立つと、青森からさらに一段階、厳しい寒さに襲われた。充分な厚着をしてきたつもりだが、まだ足りないらしい。街歩きは大丈夫だろうか。
今回の旅行で確たる目的があったのは関東〜青森までで、札幌へ来たのは貴重な夜汽車の「はなます」「北斗星」に乗りたかったのが大きな目的だ。わずか二日の滞在になる北海道では、特に予定を決めていない。ここまできっちりスケジュールを組んでの旅だったので、二日間は自由きままに過ごしてみようと、あえて予定を組まなかった。
朝六時台では行先も限られるが、市場なら開いているだろうと、地下鉄を二駅下って豊水すすきの駅へ向かう。電力需要のピークが冬になる北海道は、全原発停止の影響を受け、節電期間の真っただ中。暑苦しいほど暖房を効かせるイメージのある北海道だが、地下鉄の駅も車内も、寒いといえるほど控えめの暖房だった。照明の間引きも多い。
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▲ユニークな2段式カーペット車
▲自由席車は昔ながらの夜行列車
▲力強いディーゼル機関車にひかれ札幌着
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