▲ヨーロッパの田舎の駅のようと評される遠野駅
▲こんなかわいい手作りの飾り付けも
▲お値打ちだった「あえりあ」のコース料理
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駅に戻れば初詣から帰る人も増える時間帯で、電車も座れるか気を揉んだが、四両編成だったおかげでゆっくり座れた。ちなみに一時間前には、窓を向いた座席が特徴の快速「ジパング平泉」号も走っており、この電車に乗るようプランニングしていたのだが、世界遺産への初詣をゆっくり過ごすことを優先した。昔の僕ならば絶対に列車優先にしたと思うが、思考と嗜好の変化だろうか。ジパング号のポスターを見たザキは「これ、乗りたかったっすね!」と言っている。もう立派な鉄っちゃんだ。
花巻で釜石線の快速「はまゆり」に乗り換え。二〇〇二年までは急行「陸中」として走っていたが、車両はそのままに快速格下げになったおかげで、僕ら格安きっぷ派にも身近な存在になった。急行向けのリクライニングシートに乗ってみたくて、指定券五一〇円を投じたが、自由席も同じ座席だった。キハ110系はJR世代の車両とはいえ、もう二十年選手。創生期の車両らしく、座席やトイレの造りの「ごつさ」に少し国鉄臭さも感じる。「急行」という列車種別そのものも、過去帳入り目前である。
リクライニングシートでくつろぐこと一時間、遠野着。今日の泊りは駅のプチホテル、フォルクローロ遠野である。石造りの重厚な駅舎の二階にあるホテルで、一度泊まってみたいと思っていた。ツインルームしかなく、シングルユースもシーズンは割高なので、今回のような二人旅の機会は逃せない。一泊朝食付11,760円は、この旅で一番「豪華」な宿である。ゆったりした部屋にベッド、窓の外には雪に覆われた駅前広場。居心地も環境も、すこぶる良好だ。
正月の小都市とあって、飲食店はほとんど開いてないとの事前情報を得て非常食は買っておいたが、ダメもとで街へ出てみた。深夜の装いのような駅前通りを歩いていると、山へ灯篭の明かりが続いているのが見える。吸い寄せられるように登った先は南部神社で、人っ子一人いない夜の神社の雰囲気も、静かな遠野の夜景もよかった。
光に吸い寄せられたおかげで、麓の高級ホテルのレストランを見つけたのはめっけもの。バックパッカーまがいの男二人組が歓迎されていないのは分かったけど、旅の恥はかき捨てである。しかし二千百円のコースは、地元の食材を使ったもので、地酒の濁り酒も交えて満足できた。これも神のご加護だろうか。
広めのベッドに倒れこみ、二〇一三年の初日は更けていった。
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