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隣街、釜山 vol.2
2日目
釜山の未来交通に乗る

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朝はスパでまったり

 2日目は7時に起床。1号線の凡一駅まで徒歩7分のホテルだが、ビーチリゾートへと走る2号線の門峴(ムニョン)駅へも約10分と近く、朝の街に歩き出した。途中には韓国で初めてドライブスルーのマクドを見て驚いたが、これまた初見のセルフのガソリンスタンドと併設されていてさらに驚き。やはり2年半という時間は、いろんな変化を感じさせる。

 2号線の電車に揺られ20分、センタムシティ着。世界最大の百貨店との誉高き巨大ショッピングゾーンだが、早朝8時の目的地は「スパランド」だ。さすがは高級百貨店で入場料は1万4千ウォン(千円強)と高値だが、9時までと20時以降は9千ウォンに割引になる。

 施設の高級感は特級ホテル並み。アクアリウムのリゾート感あふれるチムチルバン(ガウンを着て入る蒸し窯サウナ&岩盤浴)がメインで、ガウンのまま行けるレストランやカフェもある。広々したリラクゼーションルームにはDVD鑑賞室もあって、釜山在住なら月イチで日がな1日を過ごしてしまいそうだ。

 温泉はというと、女湯には露天風呂なんかもあるらしいのだが、男湯は街中のサウナ並みで残念。勤め人風の人が多く、遅い出勤前にひとっ風呂といったデパートマンたちかもしれない。

 このままゆったりしていたいが、大切な1日が終わってしまうので、11時には一念発起して冬の街へ。

 地下鉄で西面に抜け、早めの昼食にとお邪魔したのは光化参鶏湯(カンファサムゲタン)。参鶏湯は、ひな鶏のお腹にもち米を詰めて煮込んだ、高級料理だ。韓国らしくずらりと並ぶ付け合せに加え、食前酒として出てくる人参酒(ちょっと強め)も含めて1万2000ウォン(千円弱)。辛いものや肉類にやられた胃には、やさしいあっさり味。鶏からの出汁を大切にした味は、水炊きに近いといえるかもしれない。

 


▲南国リゾートのようだったスパワールド


▲疲れた胃にもやさしい参鶏湯

韓国初の新交通に乗る

 腹ごなしに西面の街をぶらぶら。つい1週間前にH&Mがオープンしており、のぞいてみる。男性服のコーナーでコーディネートすれば、イマドキの韓国男子ができあがりそうな品揃えだ。つまりは韓国の流行に合わせた品ぞろえで、世界的ファストファッションといえども、いやだからこそか、その国の流行に合わせたセレクトになっているようである。

 西面だけでも4軒は見かけた「エンジェルカフェ」で一休みした後はこんちゃんと別れ、地下鉄2号線の人になった。短い旅行とはいえ、趣味活動もないがしろにはしない。ソウルでも地方でも鉄道建設が活発な韓国。釜山も例外ではなく、この2年半の間に2路線ができた。いずれも無人運転の最新システムである。

 そのうちの1本が、西面からおよそ15分の沙上(ササン)駅を始発駅とする釜山金海(プサンキメ)新交通。鉄の車輪で走る高架鉄道だが、小型車両の2両編成で無人運転。韓国では「軽電鉄(キョンジョンチョル)」と称するが、日本だと新交通システムの「ゆりかもめ」などのイメージに近く、本稿では新交通と訳することにする。

 地下鉄2号線の駅からは、長い連絡通路と動く歩道を歩くこと、5分かかる。地下鉄では磁気乗車券が残っているが、新交通はICカードのみの対応。1回用のきっぷはトークン型で、入場時はタッチ、出場時は穴に入れて回収されるというシステムだ。

 ホームに上がると、ちょうど電車が折り返してくるところだった。誰も操作していないのに線路を切り替えて器用に戻ってくる様は、少し不気味でもある。さらりと座席を埋めて、沙上駅を離れた。加速は鋭い。

 走り始めても、本当に鉄車輪なのかと思うほど静かな走りで、新交通らしい。おかげで防音壁も低く、韓国の電車ではあまり見られない、街の風景を楽しめる。

 無人運転なので、前後に開かれた車窓も特徴の一つ。当然、先頭と最後尾は人気の席…なのは間違いないのだが、単に端っこでゆったりできるのが理由のようで、前後の風景に注目する人はいなかった。日本の新交通なら景色を楽しむ人も少なからずいるものだが、鉄っちゃんとしては少しさみしい。

 


▲きっぷはICカード内蔵のトークン


▲全自動で折り返してくる電車


▲前面・後面展望も思いのまま

金海市の新しい都市景観

 釜山圏の玄関口、金海空港での乗り降りは10人ほどと、思ったほど多くない。釜山市内へは乗り換えがある上、あの乗り換え通路の長さでは従来通りバスを使う人が多いものと察する。

 空港周辺の工業団地を抜ければ郊外というより農村のたたずまいで、農家すらポツポツとしか見当たらない。地下鉄3号線との接続駅・大渚(テチョ)では乗り換え客を迎えたが、農村から工場地帯へ移り変わるくらいで、生活感に乏しい車窓が続く。

 首露王陵(スロワンヌン)駅あたりで金海の住宅団地に入り、乗り降りも多くなってきた。釜山~金海のインターシティとしてだけでなく、金海の市内電車としても機能しているようだ。通常サイズの地下鉄を作ってしまえば運転間隔が開くのだろうが、小型車両を生かした5分間隔の運行は、地方の電車としては便利この上ない。終点・伽耶大(カヤデ)まで21駅、40分。なかなか乗りごたえのある路線だった。

 帰路は、蓮池公園(ヨンジコンウォン)駅で途中下車。電力不足の韓国、節電中なのか駅の照明は抑え目で、暗い。各駅にはGS25のミニコンビニがあったようだが、11月にすべて店じまいしたようで、空き店舗の姿はさみしい。新交通は想定より少ない乗客に泣いており、商売にならなかったのだろう。駅員の姿もなく、完全無人の駅は少し怖い気もした。

 駅と同名の公園を目指す。その名の通り、蓮の浮く池を囲んだ都会のオアシスで、散策やジョギングを楽しむ人が多かった。時折走る新交通もいいアクセントになっており、一つの都市景観になっていた。



▲いままでの韓国にはなかった風景


▲蓮池公園を望みながら

ゴムタイヤの地下鉄4号線

 大渚駅で3号線に乗り換えた。3号線は先週、百人以上の負傷者を出す追突事故を起こしているが、事もなげに走っていた。

 3号線の美南(ミナム)駅を始発駅として走るのが、地下鉄4号線。ゴムタイヤ式の小型車両で、こちらの方が日本の新交通システムのイメージに近い。釜山金海新交通は少し割高な運賃だったが、4号線は既存地下鉄の運賃体系に組み込まれている。地下鉄用の1日乗車券も利用OKだ。

 電車は青を基調にしたさわやかな車体…のようだが、ホームドアに囲まれていて、全容は掴みにくい。電車内や駅舎内も青がテーマカラーになっており、さわやかな雰囲気である。

 完全無人運転なので、もちろん前後の展望も思いのまま。地下鉄のトンネルではあるけれど、カーブが多く、思いのほか楽しい眺めだ。

 終点近くでは地上区間もあるらしいが、夕暮れも間近なので、今日は4駅目の忠烈祠(チュンニョルサ)駅で下車。釜山の地下鉄はエスカレーターが未整備の駅が多く、旅行中も体力を消費してしまうのだが、4号線は地上までエスカレーターが通じている。

 忠烈祠とは「文禄・慶長の役」で戦死した英霊を祀った施設で、そう言われると日本人として居心地が悪いのもまた事実。雨も降ってきたので、軽く一回りして4号線で戻った。

 


▲トンネル内の風景も新鮮


▲日本の新交通のイメージに近い

何が起こるかわからない

 こんちゃんのケータイにかけてみれば、国際市場周辺をうろうろしているらしく、1号線でチャガルチへと下る。

 疲れから席でウトウトしていると、
 「あの~僕、障がい者なんですが、帰りの電車代がなくて。百ウォンでもいいので、恵んでくれませんか」
 という声が近づいてきた。韓国の地下鉄は物売りから寄付を求める人まで、いろんな人が入れ替わり立ち代わり現れるのだが、規制がきびしくなったのか今回の旅では彼が唯一だった。

 実はお小遣い稼ぎの人もいるって話を聞いたことがあるけど、この少年はどうなんだろう…と思いつつ、そのまま目を閉じていると、電車は駅に到着。と同時に、悲鳴が聞こえた。目を開けると、彼が電車とホームの隙間に落ちているではないか! しかも運転士は気付いていないらしく、電車がそのまま出発しようとするものだから周囲もパニック。日本も韓国も、扉が完全に閉まらない限り電車は出発できない…という鉄っちゃんの知識が頭をよぎり、とっさに自分の体を扉に体を挟み発車を阻止。彼は、他の乗客に救助された。

 「気を付けて下さい」
 車内放送で運転士が呼び掛けただけで、何事もなかったかのように電車は出発してしまうのだから、やっぱり適当というか、大らかというか。ぱっと見、日本と変わらない近代的な電車ながら、やっぱり韓国の地下鉄は、何が起こるか分からない。

 



最後の夜まで食べまくる

 チャガルチ駅で、こんちゃんと再会。昼過ぎの国際市場周辺は、昨日の夜と比較にならない人出だったそうで、どのエリアで何を売っているかはほぼマスターしたとのこと。替えのパンツを忘れていたので、露店でなにか面白いものがあれば買うように頼んでいたのだが、あったあったと差し出されたそれは5万ウォン札柄というシュールなものだった。いくらだったか聞いても、5万ウォンとしか教えてくれない。

 韓国に対する見方でこんちゃんと一致しているのが、折り畳み傘の品質がよいこと。1万ウォンあればワンプッシュで大き目、丈夫な折り畳み傘が手に入り、韓国に行く度に買い替えている。さすがはこんちゃん、広大な国際市場で傘屋の場所も抑えてくれていたおかげで、今回も命題を果たすことができた。

 17球で80円のバッティングセンターで汗を流した後は、お土産を求めチャガルチの農協ハナロマートへ。お土産用ではない、普通のお菓子やレトルト食品を土産にするのが僕の定番。割安で品揃え豊富なハナロマートは留学中もだいぶお世話になった店で、おすすめである。

 夕飯は、昨夜かなりの客で賑わっていたことを確認済みのサムギョプサル(豚の3枚肉の焼肉)店へ。まずは国産厚切りを3人前。肉の味がじんわり出てきて、文句なくうまい。続いて「カンナ削り」と称する極薄輸入肉。こちらは韓国風「豚しゃぶ」といったところか。ヘルシーで、別の種のおいしさがあった。韓国焼酎によく合うのもこのメニューで、ぐいぐい進んだ。

 左隣の席は関西弁のご夫婦で、すっかり韓国慣れした雰囲気だ。ただ今回の2泊3日では、街中で日本人を10人も見かけなかった。ソウルに比べ日本人が少ない街とはいえ、福岡から大挙押しかける日本人の姿は、よく見ていた街だったのだが。一方の右隣の席のロシア人夫婦は流暢な韓国語を話し、お酒の勢いもあって韓国語の日ロ交流を楽しんだ。

 南浦からロッテデパートのイルミネーションを眺めれば、もう10時過ぎ。一旦ホテルに戻り、凡一のHOF(ビアカフェ)で締めた。昼はカフェ、夜は飲み屋に代わるHOFは、韓国ではポピュラーな業態。学生時代は学生街のHOFで毎晩のように盛り上がったものだけど、入った店の客の世代は幅広く、人気の店だったようだ。生中を2杯飲み干し、2日目はフィナーレ。明日はロビーに8時半集合である。

 


▲夜の週末、南浦にはさらに人が溢れだす


▲厚切りサムギョプサルは味わいがある


▲ロッテ前のイルミもきれい

▼3日目








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