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私鉄電車で巡る関西+元日グリーン豪遊の旅
1日目
異文化つなぐ直通運転

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 2010年末、「スルっとKANSAI3dayチケット」を手に、関西の私鉄を巡る旅に出かけた。JRとのダイナミックな競争や都心部での新線開業など、話題豊富な関西私鉄の「今」を体感。同時に、乗客減に悩む厳しさも垣間見える3日間となった。最終日は元日限定のフリーきっぷでJR西日本の特急グリーン車に乗りまくり。まさに鉄道ずくしの年末年始となった4日間の顛末記。


旅の始まりは山陽新幹線

 2010年12月29日、年の瀬も押し迫り、冬休みシーズンに入ったこの日、僕は山陽新幹線の人となった。700系新幹線「ひかりレールスター」。4列座席のどっしりとした豪華な指定席車両が「ウリ」の新幹線である。

 のぞみより快適で安いことから人気を集めた「ひかりレールスター」だが、3月の九州新幹線開業時には、多くが直通新幹線「さくら」に置き換わることが予告されている。春以降も10往復が残るとのことだが、最高速度も「さくら」の300kmに対し「ひかり」は285kmと差が付くことから、「第一線」から退くことには間違いない。

 今回乗車している4号車は、いつもならば車内放送や車内販売の呼びかけをカットして静寂な室内を保つ「サイレンス・カー」に設定されている車両だ。今は帰省ラッシュの時期ということで設定から外されているが、車内販売はいつもの「クセ」なのか声を掛けてこない。このサイレンス・カーの設定も、3月までとのこと。

 さて今回の旅の目的地は、私鉄王国・関西。縦横無尽に駆け巡る私鉄各線は個性に溢れ、それぞれが独自の文化圏を形成しているといっても過言ではない。「アーバンネットワーク」を旗印に、地域輸送に殴りこみをかけてきたJR西日本の攻勢は留まることを知らないが、こまめな地域輸送への転換を図り激しい競争を繰り広げている。

 関西私鉄の魅力に取り付かれた僕は、大学生の頃には船に乗り、年に何度か出かけたものだ。最近でも2年前に、比叡山や神鉄の山岳区間などを乗り潰している。

 あらかた、乗りたい路線には乗りつくしたつもりだったが、「落穂拾い」的に乗りたい路線は残っているし、この間大阪の都心では2つの新線が開業もしている。本当は夏の終わりから秋にかけて訪れたいと思っていたのだが、多忙のため伸び伸びになっており、年末になってようやく実現できた次第である。今年はあまり趣味活動に没頭できなかったので、せいぜい気が済むまで乗りまくりたいと思う。

 姫路を過ぎ、いよいよ関西に突入。新神戸で下車して、3日間の関西私鉄旅のスタートである。

 


▲4列シートが並ぶ「レールスター」普通車


▲サイレンスカーの設定も来年3月まで

3dayチケットの入手に一苦労

  新神戸駅には、N700系「さくら」の座席が展示してあり、九州新幹線開業の雰囲気を盛り上げていた。JR西日本にとっても九州直通旅客が増えれば収益増につながり、PRにも力が入っているのだろう。
 「いくら九州で頑張っても、稼ぎは西日本に持っていかれてしまう」
 と、JR九州の元会長・石井氏がぼやいていたのを思い出した。

 長い長いエスカレーターを降り、神戸市地下鉄の新神戸駅へ。少し時代がかった雰囲気と感じるは、開業以来変わっていないと思われる、サイン類のデザインにもありそう。公企業だけに無駄遣いはできないと思うが、「さすがミナト神戸のお洒落な電車」と思わせるだけの配慮が欲しいと思う。新幹線は全列車停車になり、玄関口としての役割は増してきているのだから。

 今回使うのは、関西圏の私鉄やバス、ケーブルカーにまで乗り放題の「スルっとKANSAI3dayチケット」。広範囲に渡って利用すればするほど、威力を発揮するチケットである。関西で売られているものは、任意の3日間利用できる代わりにシーズン限定。関西エリア外では、連続3日間が条件になる代わりに年中買える。大学生の頃(2000年)は限られた旅行会社でしか購入できなかったが、今ではコンビニ端末からバウチャーを発券できるようになり、便利になった。

 主要駅でバウチャーを本券に交換するシステムなのは以前と同じで、さっそく新神戸駅の有人改札に申し出たところ、
 「いつもは売店で交換するんですが、年末年始はお休みなんです…」
 と困惑されてしまう。さすがは市営地下鉄、売店も公務員の暦どおりにお休みなのだ。しかしさすがは融通のきく関西で、定期券窓口の開いている三宮までの便宜乗車を認めてくれた。

 三宮まで乗った地下鉄は、2000系電車。緑の壁、ヨロイ戸と、どことなく阪急電車を連想させる内装だ。ポールがすくなくすっきりした車内や、セパレートのない座席、カバーのついた照明からも、公営地下鉄ながら関西を強く感じる電車である。福知山線事故の際、つかまる場所の少ないJR西日本の207系電車と、そのデザインを指示したとされる会社側が批判にさらされたことがあったが、問題だとすれば多くの関西の電車も同じだろう。

 閑話休題。三宮駅の定期券売り場で、ようやく3dayチケットを手に入れることができた。割引クーポンもどっさり付いており、使いようによっては電車以外でもかなりお得に旅できる。

 


▲新神戸駅で実演展示中だった「さくら」のシート


▲どこか素っ気無い神戸地下鉄のサイン

「鉄人」に出会いウォーターフロントへ

 再び西神線に乗り、新長田駅で下車。地上に出ると、高層マンションが出迎えてくれた。歳末とあって、こぎれいな商店街は大勢の買い物客で賑わっている。併設のJR駅は普通のみの停車だが、快速停車を求める署名活動が行われており、それも頷ける賑わいがあった。

 さて、地下鉄新長田駅には「鉄人28号前」なる副駅名が付いていたが、なんでも駅近くに鉄人の原寸大モデルがあるのだとか。案内に従い歩いてみると、なんとまあ、天高くそびえる鉄人がいるではないか。

 これ、神戸出身の漫画家・横山光輝先生の功績をたたえ、モニュメントや博物館を作り、活性化と震災復興を図ろうという「神戸鉄人PROJECT」の一環で、一過性のイベントではなく永続展示なんだとか。2009年完成とのことだが、今日も多くの人がカメラを向けていた。

 駅に戻り、もう一つの地下鉄・海岸線へ。ミニ地下鉄で始発駅が既存線から遠く、予測より少ない乗客に留まっている点は、どことなく福岡の七隈線と思いがつながる路線である。
買物帰りの乗客で賑わってはいたが。

 ハーバーランド前で下車。ハーバーランドから神戸駅は歩いて近いという記憶を頼りに降りてみたのだが、近いも何も、エスカレータを上ればJR神戸駅の目の前だった。同駅名の三宮は離れ、別駅名の神戸は近い。なんとも分かりにくい海岸線だった。

 JR駅をくぐり高速神戸駅へ。阪神・阪急・山陽の乗り入れ車両で運行され、「車両のない鉄道会社」として名を馳せた神戸高速だが、現在は阪急阪神HDの傘下になっており、駅名板も阪神スタイルに変わっている。会社の枠組みこそ変わらないものの、内情には大きな変化が起きている。

 神戸高速から阪神線へ3駅のり、神戸のターミナル・三宮に到着した。

 


▲アーケードを出るとそびえる「鉄人」


▲阪神スタイルになった高速神戸駅のサイン

ミナト神戸から古都奈良へ

 三宮駅の「定位置」海側ホームには、近鉄5800系電車が待っていた。運行開始から2年、すっかり定着した阪神・近鉄の直通電車。しかし僕にとっては、未だに見慣れない光景である。直通電車には大阪難波まで乗ったことはあったが、神戸から奈良まで直行してみたくなり、13:44発奈良行き快速急行の人となった。

 5800系は、通勤時間はロングシート、データイムにはクロスシートとして使える「L/Cカー」。クロスシートそのものは山陽直通特急でお馴染みだが、やはり長距離の乗車にはクロスシートがありがたい。

 頭端式ホームの先端部に乗ったので、ガラガラのまま発車。ホームが極端に狭く「日本一危険な駅」と言われた春日野道駅も、すっかり改良されスピードを上げて通過してゆく。「ビッ、ビー」とならされる警笛は、車のクラクションのようだ。

 特急停車駅の御影は、止まるのではないかと思うほどのゆっくりしたスピードになるが、通過。需要は充分な駅なのだが、近鉄の車両は阪神より大きく、カーブのきつい御影駅には止められないというのが真相である。さらなる高架化も進む阪神だが、ミニマムな施設も健在なのだ。

 停車駅ごとに乗客を飲み込み、尼崎からは阪神なんば線へ。西九条までは支線の「西大阪線」として以前から存在していた路線で、ミナミ直通の電車が走るようになった今も、まだまだ本線筋といった風情にはなっていない。そして平日ダイヤの今日は、なんば線内各駅に停車していくのが、なんとももどかしい。線内各駅での乗降も多いのだが、快急・普通の2本立てで走ってほしい区間である。

 広い広い淀川を渡り、高架線に上がれば西九条。防音壁に囲まれた高架橋を走ったかと思えば、一気に地下へ潜る。地下区間の各駅へは、また訪れてみよう。

 近鉄難波改め大阪難波駅ホームには、溢れんばかりの乗客が待ち受けていた。この駅から本営業開始といった風情である。平日昼間時間帯に特急のない奈良線では、快速急行が事実上の最優等列車になる。

 上本町駅から地上線に出て、鶴橋からはさらに多くの乗客を飲み込み、雑多な街並みを走る。同じ市街地でも、阪神沿線とはどこか空気が違うように感じる。

 急勾配を登ると、眼下には大阪平野の街並みが広がる。トンネルを抜けた生駒の街は、住宅地的な雰囲気。大和西大寺駅を出れば、左手に平城跡を望む。ミナト神戸から、古都奈良へ。異文化を串刺しにして走る直通列車、なかなかの乗り応えがあった。

 地下に潜り、古都観光のターミナル駅・奈良に到着した。

 


▲すっかりお馴染みになった、三宮で見る奈良の門司


▲快適なL/Cカーのクロス状態


▲大阪平野を見下ろす

2大古都を結ぶ観光特急

 奈良は、言わずと知れた観光都市である。今日街を歩かずとも、いずれ誰かと来る機会はあるだろう。目的は関西の私鉄巡り、先を急ぐのがより自分の旅らしい。

 しかしせっかく来たのだから、一箇所だけは名所も見ておこうと思い、奈良公園の方向に向かって歩き出した。すると、いるわいるわ。公園の中から路上にまで、視界の中は鹿だらけ。写真やテレビでは何度も見たことがある光景だけど、実際目の当たりにすると衝撃的である。

 東大寺の大仏殿へ。世界最大の木造建築として知られる国宝で、細やかな装飾が積み重なった壮大さに圧倒される。均等に並んだ柱の間に鎮座する大仏様に、旅の無事と新年の多幸を祈った。

 坊様は外国人からの質問に流暢な英語で答えられており、さすがは奈良である。坊様だけではない、ガイドも売店の方もみな英語に堪能で、古都は国際都市なのだ。

 16時30分の特急に乗り、京都へ。近鉄での特急はJRと同様、別料金が必要な列車で、京都までの特急料金はワンコインの500円なり。3dayパスでも、別払いで特急に乗れる。40分弱の道のりは有料特急に乗るほどの距離ではないと思うが、さすがは古都同士を結ぶ路線で、観光客の需要が旺盛なようだ。

 中間2両が2階建になっているビスタカーだが、指定されていたのは先頭の平屋車両。リクライニングを倒し、短い時間をくつろぐ。

 左手に平行する単線の線路はJR奈良線で、近年は「みやこ路快速」を30分ごとに運行し、ライバルとして成長している。そういえば、あれだけ市内にいた外国人観光客を近鉄車内では見かけず、「ジャパンレールパス」が使えるJRに利用者が流れているのか。

 快調に走っていた列車だが、突然ガクンとスピードが落ち、信号停車してしまった。先行列車に迫ったのかと思ったら、右側に座った人から「あ、ワンちゃん!…あ、追いかけてる!」と声が上がった。どうやら、ワンちゃんが線路へ「不法侵入」したのが信号停止の理由だったようだ。4分遅れる。

 京阪接続の丹波橋ではほとんど乗降がなく、頭端式の京都着。奈良も京都も、終点であることは路線図からも明白なのだが、放送では
 「この電車この駅までです」
 とはっきり言い切るのが、なんだか印象的だった。

 


▲東大寺


▲それこそ至るところに鹿・鹿・鹿


▲ビスタカーの魅力は豊かな吹き抜け空間

大阪モノレールの快適な待合空間

 壮大なJR京都駅ビルを通過し、地下の地下鉄京都駅へ。阪急との乗り換え客の見込める四条駅は「コトチカ」と呼ばれる商業スペースになっており、市営地下鉄といえどもエキナカビジネスに本腰を入れ始めたようだ。クリスピードーナツを誘致できたのは、話題作りという点では大成功で、長い行列ができていた。

 阪急京都線の烏丸駅へ。お目当ては、3扉クロスシートの9300系電車だ。京都線特急がJR新快速への対抗から停車駅を増やし、従来の2扉車では対応できなくなったことから生まれた電車である。ところが、やってきた快速急行はロングシート車。逆方向ホームの電車を何本か見てもクロスシート車は見かけなかったので、通勤時間帯はこんなものなのかなと思い、そのまま乗車した。

 後から調べたところによれば、次の通勤特急を待てば本命の電車が来た「ようだ」。そうとは知らず、ロング車でつり革に掴まったままに揺られ続けるのも退屈だなと思い、高槻市で各停に乗り換え、茨木市で降りた。モノレールの空中散歩を楽しむためだ。

 大阪モノレールは、大阪から放射状に延びる私鉄各線を数珠状につなぐ路線。ちょうど電車が出てしまった後だったが、改札内に洒落た待合スペースを見つけ、自販機のラテを飲みながら時間を過ごすことができた。カフェと見まごうかのような空間で、ネットコーナーや「モノレール文庫」まである。寒いのさえ我慢すれば、快適な待ち時間を過ごせること請け合いである。

 沿線は住宅地で、少し暗い夜景を見ながら門真市へ。こちらにも、洒落たギャラリーコーナーがあった。これらは、大阪モノレールが理念として掲げる「人にやさしい鉄道」を目指した取り組み「駅リビングplan」と呼ばれるものの一環。毎日の通勤も、心豊かになれそうである。

 京阪門真市駅に降りると、ちょうどこの先の目的地、中野島線方面の各停があったので、そのまま乗り込んだ。天満橋までは、私鉄でも有数の複々線区間で、真ん中の急行線を走る電車には何度か乗ったが、緩行線は初めてだ。

 この区間の駅の数が、きめ細かいこと、きめ細かいこと。加速して、惰行に移る間もなくブレーキをかけて停車の繰り返しである。森小路駅ではエレベーター工事が進んでおり、駅利用者の数を基準に設置工事が行われていることを考えると、乗降客も多いようだ。各停の電車が細やかにカバーしているからこそ、優等列車がのびのびと走ることができるわけで、発見があるものである。

 


▲便利な地域の足・大阪モノレール


▲門真市駅のギャラリーコーナー


▲途中駅での乗客の動きも興味深い京阪の各駅停車

京阪中之島線乗り歩き

 京橋で乗客をごっそり降ろし、天満橋駅からは地下の中野島線へ。2008年10月に開業した、新しい路線である。既存の淀屋橋方面とは分岐する形になり、郊外から向かった電車は都心で2方向に分かれる形になる。

 乗客数が予想の半分に満たないと話題の路線だけに、電車の本数も少ないのかなと思っていたが、通勤時間帯とあって数分おきに電車があるようだ。そこでフリーきっぷの威力を生かし、各駅で下車してチラリと様子を見てみることにした。

 なにわ橋駅は、改札口まわりの大きな吹き抜け空間が豊か。木材を活かした内装で、温もりも感じられる。木目調の内装は他の各駅にも共通していたが、ホームの壁面は、大江橋駅が木+石、渡辺橋駅は木+金属、中野島が木と、各駅で個性を出していた。いずれも素材の風合いそのままというのも、特徴的である。

 車両は本線の電車が乗り入れているのだが、中之島線開業に合わせて快速急行として導入された3000系電車は、出色の車両だ。3扉、3列座席のクロスシートだが、座席は優等列車らしく柔らかい。天井や座席には、限りなく黒に近い紺を使い、グレーの内壁で暗くなりそうなところに、肘掛けに入ったオレンジのラインが絶妙なバランスを醸し出す。私鉄無料特急の中でも、最もデラックな8000系特急と伍して走る快速急行にふさわしいグレードだった。

 中之島駅からは、JR大阪環状線の福島駅へと歩いた。歩いて10分ほどの距離である。その中間には、JR東西線の新福島駅もある。そして東西線も中野島線も、並行して同じ京橋駅を目指す。東西線も中野島線も、想定より少ない乗客…。中野島よりずっと生活感があり賑わう福島駅界隈の雑踏に紛れながら、少し考えこんでしまった。

 


▲豊かな空間が広がるなにわ橋駅


▲シックでゴージャスな3000系電車

都心の世界の大温泉

 福島から西九条までは、JR大阪環状線でリレーした。3dayパスの旅でも、ルートによっては所々でJRをはさむと、時間の節約になる。大阪環状線内なら、運賃も初乗り120円と安い。

 東京の中央線からは引退した、オレンジ色の201系電車がやってきた。大阪では車内外の抜本的リニューアルも実施され、まだまだ末永く活躍しそうである。ただ私鉄各線の電車に乗り慣れた後では、加速の悪さがなんとももどかしかった。

 西九条駅で降りて、昼間は通過してしまった阪神なんば線の新線区間の駅にも乗降してみた。

 ドーム前駅は、京セラドーム大阪目の前の駅。今後もネーミングライツでドームの名前がころころ変わることを見越して、単純な名前にしたに違いない。イベント時にはどっと乗客が押し寄せる駅だと思うが、エスカレーターの容量はこれで足りるのかな?と気になった。ホームの空間は一部が2フロア吹き抜けになっていて、壁面にはずらりと煉瓦が積み重なっている。地下とは思えない空間である。

 一方の桜川駅は、ホームの両面で壁面の材質を変えているのがユニーク。近鉄と阪神の境界駅は大阪難波だが、乗務員の交代はこの駅で行われており、難波で折り返す近鉄特急もこの駅まで入ってきているので、近鉄に乗っ取られたかのような錯覚も覚えた。

 大阪難波駅から、長い長い乗換通路を歩いて南海なんば駅へ。なにやらなんば駅の大改装が進んでいるようで、見慣れない姿に変貌しつつあったが、また後日来る機会もあるだろうと先を急いだ。

 新今宮駅で下車。年末を前に、寒さもこの冬一番と言われる天気の中、路上で夜を迎える人も多く、浮き足立った旅行者に、厳しい日本の一方の現実を見せつける。今夜の宿は、この界隈の1500円の宿。いわゆる簡易宿泊所という所である。以前、同じ界隈の2200円の宿に泊ったら思いの外快適だったので、さらに値段を切り下げてみた。

 場所と値段から、この種の宿の「本来の役割」は明らかなのだけど、宿泊予約サイトにも登録されており、外国人バックパッカーにも積極的にアピールするなど、より多くのターゲットを得ようという動きも盛んなようだ。こちらもその一つで、近くのスパワールドの割引券を売るなど、観光客の獲得にも躍起である。

 靴を持って、あてがわれた8階の部屋に上がる。和室3畳。テレビも空調も無料だし、冷蔵庫もある。ドアも集合住宅タイプで頑丈。宿では寝るだけの乗り歩き旅行ならば、充分すぎる部屋である。一休みもそこそこに、スパワールドの割引券を持って街に出た。JR新今宮の高架をくぐれば、すぐの場所である。

 ビルにジェットコースターが絡みつき、さすがは関西、奇抜だとの名声も高かったフェスティバルゲートは、残念ながら解体工事中。一方、並んで作られていたのが、「スパワールド世界の大温泉」である。通常は3,000円というべらぼうな入場料がかかるのだが、宿の割引券ではなんと900円!激安じゃんと喜んでみたが、1,000円への大幅値引きセールをやっていた。この値段なら、さすがに大賑わいである。

 東洋一とも言われる巨大温泉施設で、今日はヨーロッパゾーンが男湯。ヨーロッパ各国をモチーフにした浴槽が並ぶが、「ヨーロッパの日本的(大阪的?)解釈」といったところで、外国人にも面白いかもしれない。

 さっぱり温泉らしいお湯ではなかったけれど、2時間ばかり楽しみ、ホカホカの体で宿に戻った。

 


▲関西では現役の「オレンジ色の電車」


▲こちらも大きな吹き抜けのドーム前駅


▲こんなユニークな試みも


▲取り壊し直前のフェスティバルゲート

▼2日目に続く








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