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四国まるごとパス&岡山
1日目
トンデモナイが日常に

四国にも登場!私鉄だって乗り放題

今回の旅のルート(Map作成ソフト:白地図 KenMap

 今年もゴールデンウイークが迫ってきた。予定も決めずに早々に有休の予定も入れたので、行き先を決めるだけだ。なにかと話題豊富な中京圏にでも行くかな。でもJR東海エリアから北は、ピーク期に割引きっぷを使えないんだよな、と思っていたら、四国から面白そうなきっぷの情報が飛び込んできた。

 その名も、「四国鉄道まるごとパス」。普通列車乗り放題3回分のきっぷで、18きっぷ四国版といった内容だが、JRのみならず民鉄にまで全線乗り放題という点がミソでありウリだ。九州でも昨秋から同じ内容の「旅名人の九州満喫きっぷ」が売られており、これの四国版ともいえる。

 瀬戸大橋20周年の企画きっぷということで、利用期間は今年4月から6月まで。四国には何度か行っているけど、この機会を逃しちゃいけない!というわけで、行き先は四国に決定。往復の船とバスのチケットを予約し、着々と準備を進めたのだった。


四国の玄関は関西汽船

 5月1日、仕事を終え一旦自宅に戻り、身支度を整え出発した。数日前からこじらせている風邪が辛いが、旅していれば自然に治るだろうという、荒治療的な楽観主義での強行だ。一応、かぜ薬だけは飲んでおいた。

 「眠くなる成分」が利いたのか、小倉までのソニックは夢の中。新幹線口の昭和レトロ風フードコート「小倉食堂」で夕ご飯を済ませ、駅から徒歩5分少々の関西汽船乗り場に向かった。連休中とはいえ谷間の平日なので、大混雑というわけではなさそうだ。

 船旅といえば2等桟敷席でごろごろするのも醍醐味だが、今回は一人旅なので、2等寝台をおごってみた。寝台とはいっても、松山までは6千円少々で、JRのB寝台料金すら下回る。GWなので定価になったが、通常期ならインターネット予約割引もきき、原油高の中でもまだまだ船旅は安価だ。

 初めての2等寝台は、天地方向こそB寝台より狭めだが、ゆとりは充分。プライバシーも保たれ、快適な夜を過ごせそうだ。深夜発、早朝着ながら、売店の営業が夜・朝とも行われ、新たに畳敷きの食事コーナーも設けられていた。短距離航路ながら、充実した船だ。この6月から福岡〜松山間の高速バスの試験運行が始まるが、どこまで関西汽船のシェアを切り崩せるか、見ものである。

 展望風呂ではなく少し狭いが、浴室も完備されている。湯上りのほてった体で、潮風を浴びつつ北九州の夜景を眺め、プシュっと缶ビールを一杯やるのが楽しみな航路なのだが、今回は風邪気味なので自重。はやばやとベッドに入った。


 


▲出航を待つ関西汽船
朝ラッシュの伊予鉄郊外電車

 早朝4時20分、相変わらず早すぎる船内放送に起こされる。5時の到着まで40分。その間に朝食の営業までやるのは立派だけど、ギリギリまで寝たい人間にはちょっと迷惑だ。二度寝したら、寝坊しかけてしまった。5時の到着そのものの早すぎる感じで、出航と到着があと1時間遅ければと思うが、トラックの事情が優先するのだろう。ちなみに小倉行きなら7時まで船内休憩ができ、素晴らしいサービスと思う。

 空港のように美しい観光港ターミナルに降り立てば、市内方面のバスが待っていた。急ぎの旅なら利用したろうが、「まるごとパス」では伊予鉄の電車も乗り放題なので、徒歩10分余りの高浜駅を目指した。始発電車は5時50分なので、朝の散歩にはちょうどいい。

 海岸沿いを歩き10分少々、木造の古めかしい高浜駅着。駅内には、ICい〜カード対応のチャージ機に改札機、近代的な斜め型の多機能券売機まで備えられている。多機能券売機は磁気カードの「い〜カード」対応だったが、すでにIC型へ移行し、使用停止になっている模様。最先端と懐かしさが入り混じるのが、伊予鉄の魅力のひとつだ。

 準備が整い、駅も開かれたので、「四国まるごとパス」を取り出し改札に向かった。「まるごとパス」は四国内での限定発売だが、JR四国のショッピングサイト「夢四国」では、四国限定の切符の郵送を、送料無料で取り次いでくれる。おかげで事前に入手できて、まるごとパスを売っていない伊予鉄の駅から旅をスタートできる。

 ところが駅員さんからは、あれ、ウチは私鉄ですが?という顔が返ってきた。券面の伊予鉄の文字を見せると思い出したようで、どこにでもあるような日付のスタンプを入れてもらう。こうした反応、伊予鉄すべての社員さんに見られて、周知が進んでいないのか、よほど「まるごとパス」の利用が少ないのか。3日目以降に乗る、他の鉄道会社での反応が楽しみだ。

 3両編成の始発電車に乗り込む。京王電鉄で活躍していた中古車だが、車内には次駅と最新ニュースを伝えてくれるLEDが設置され、ここでも古さと新しさが同居している。1駅目の梅津寺はとりあえず飛ばし、雰囲気のいい駅があったら降りてみようと思っていたが、さっそく次の港山駅で下車。ホーム上に立つ小さな駅舎にひかれた。

 こぶりな木造駅舎だが、カードの端末に券売機と、やはり最新機器一式が備えられている。飲料水の自販機も「い〜カード」対応。ホームまでのスロープも備えられ、バリアフリーも抜かりなかった。少し歩けば海で、渡し舟も出ているようだ。まだ6時を過ぎたばかりの時間、路上のワン公だけが元気だった。

 下り電車で1駅戻り、梅津寺下車。遊園地「梅津寺パーク」前だが、それよりこの駅を全国的に有名にしているのが、「東京ラブストーリー」最終回のロケ地になった駅ということ。ドラマをそんなに見ない僕でも、「あ、あの景色!」と分かる風景だ。ホームの柵には、訪れた人たちが巻きつけていったハンカチが揺れていた。

 行ったり来たりの途中下車。今度は上りに乗り、三津下車。12年前、柳井からの防予汽船を降り立ち、初めてこの駅へたどり着いた時には、その時代がかった、しかし風格を帯びた木造駅舎の姿に感嘆したものだ。その姿は、一時代が巡っても変わらない。ただ、港とを結んでいたアーケード街は撤去されたようだ。アーケードが田舎街にまで普及している四国といえども、時代の流れは全国他地域と変わらないらしい。

 港町の空気を吸い、駅に戻れば7時前。そろそろ松山市内への通勤ラッシュが始まる時間で、高浜線もこの電車以降、15分間隔の運転となる。次々に改札を通過していく利用者の9割以上が、ICい〜カードの所持者。老若男女、何食わぬ顔で「ピッ」とカードをかざしていく。福岡ではようやくこの5月からICカードが始まるが、ずいぶん先を越されたような気持ちになる。

 ラッシュも、地方にありがちな高校生ばかりという様相ではなく、社会人もかなり多い。逆に小学生の姿が目に付くのも、特徴といえるだろう。全体に学生のマナーが良いのに感心で、小学生の頃から電車通学に慣れ親しんでいれば、自然と公共心も身に付いていく…のかもしれない。

 古町駅で降り、同じ駅で接続する路面電車に乗り換え。郊外電車と市内電車という違いはあるが、どちらも同じ伊予鉄道ということもあり、一体の駅舎になっている。お互いのホームと駅舎はゆるやかなスロープで結ばれ、バリアフリーな乗り換えを実現しているが、ここで乗り換える人はあまり多くないようだ。

 郊外電車が混雑している反面、路面電車や市内の通りは余裕がある、というかガラ空きだ。市内までダイレクトに結ぶ、伊予鉄郊外電車があってこそかもしれない。松山市駅(地元では「市駅」と略す)まで出て、地下街でモーニングを食べた後は、横河原線のラッシュを見ようと一駅、石手川公園駅へと下った。市駅の隣駅とはいえ無人で、適当な扉から降りてブラブラしていたら車掌が飛んできた。さぞかしKY(空気読めない)な客に見えたことだろう。

 石手川公園駅は、ホームの半分が鉄橋上にかかっているユニークな駅。春に来た時には満開の桜が電車から見えた記憶があり、ホーム上から花見ができそうだ。

 乗らずに見送った8時5分発の市内行きは長い4両編成で、それでもぎっしり大混雑で市駅へ向かっていった。次の16分発は3両編成だが、前の電車からあまり間もないためか、楽につり革を探せた。とはいえ50万都市としては、「山」が高い通勤ラッシュといえそうだ。

 中心駅たる市駅でほとんどが降りるのかと思いきや、この先大手町や古町まで行く人も多いようで、半分くらいは車内に残った。3方面から線路が集う市駅は、相互の乗り換えが便利なように、それぞれの電車の発着時間を近接させているが、その分改札には一気に人が集中しがち。ICカード改札3台、磁気券用の自動改札機1台では、やや不足のようだ。


 


▲古びた木造駅舎の高浜駅


▲真下は海!梅津寺駅


▲中心部にも大きな踏切(松山市駅)


▲市内へ向かう通勤電車(石手川公園駅)



坊ちゃん列車と時代かおる市内

 そのまま乗りとおし、ふたたび古町駅で下車、この駅始発の「坊ちゃん列車」を待ち受けた。レプリカながら、忠実に明治の「マッチ箱汽車」を平成の路上に再現した、衝撃の列車も登場から7年。何度か見ていたが乗車は今回が初めてだ。この列車に限り「まるごとパス」は効力外で、明治風の制服を来た車掌から300円なりの乗り切りチケットを買った。

 連休中とはいえ、中日の平日の早朝に古町から乗る人はおらず、僕だけを乗せ発車。2軸車独特のゴトゴトとした走行音を響かせ、古びた専用軌道を走る。レプリカとはいえ、機関車牽引の客車列車自体が日本では貴重な存在になってきた。まして2軸車の乗り心地が今の世で味わえること自体、奇跡だと思う。

 宮田町から先は路面区間。日本では前代未聞の「路面汽車」となって、市街地のど真ん中で汽笛を鳴らしながら、堂々の行進だ。JR松山駅前で観光客風の夫婦2人を乗せ、お堀端から大街道へと、松山最大の繁華街へと踏み出した。

 面白いのは、通行人がこちらに何ら関心を示さないこと。運行開始から7年も経てば、それはありふれた日常の風景だ。しかしその日常の風景が、トンデモナイ。同じ軌間の他都市の路面電車へ持っていて、デモンストレーション運行すれば話題沸騰だろう。

 登り勾配を必死に登り、後続の市内線電車に追い上げられつつ道後温泉着。こちらも明治風に再生した駅舎が出迎えてくれ、タイムスリップしたショートトリップを楽しめた。坊ちゃん列車の機関車の転回(転車台を使わず、機関車そのものが回る!)や客車のつなぎ換えは、すべて人力で行われ、これも見ものの一つ。真夏や雨の日は辛そうな、なかなかの力仕事だ。

 GWで賑わう道後温泉商店街を歩き、重文の温泉・道後温泉へ。10年少々では変化しない、堂々かつ繊細な木造建築物だが、今回見たかったのは、温泉前の道路だ。これまで目の前を車道が走っていたため、観光客は車の間をぬって写真を撮っていた。それが温泉の裏側を回るように車道が改修され、温泉前は石畳の歩行者専用道になったのだ。車に邪魔されず、落ち着いて観光できるようになった。体調不良につき中には入らず、そのまま引き返す。

 大街道で下車、山の方へ目指すは「坂の上の雲ミュージアム」だ。研究室時代の後輩である地元人のおすすめだけで、予備知識なしでやってきてみた。ミュージアムのコンセプトも、設計者が安藤忠雄氏であることも、来てみて知ったことである。

 段のついたガラス窓が重なる外観はあまり好きにはなれなかったけど、三角形の独特の建物形状をらせん状に上がっていくフロア構成や、広狭と開放度で緊張感をコントロールする空間構成はさすが。展示内容も、一つの小説が題材というよりは、それを通してあの時代と日本を見るといった内容だ。そこそこ重いテーマではあると思うけど、楽しむ気持ちで眺められる展示内容だった。

 2階の喫茶コーナーは、お金をかけないようにか、受付でコーヒーの「素」を買ってドリンクメーカーで作るセルフ方式。これが思ったより美味で、丘の緑を眺めながらの一杯は、都心と思えぬ安らぎだった。

 傍らの丘を登れば、大正時代のフランス風洋館の萬翠荘もあるが、残念ながら改修工事中。エントランスを見るだけでも手の込んだ建物と分かり、ぜひ次には訪ねてみたい。お堀方面に歩いてすぐの県庁舎も、昭和初期の立派な庁舎建築で、貴賓室なども見学できる。中世の城のようなホールから、道路を走る「坊ちゃん列車」を眺めていると、いつの時代にいるのか分からなくなるようだ。


 


▲再現ながらも雰囲気満天の坊ちゃん列車(道後温泉)


▲貴重なバッファー式連結器も再現


▲坂の上の雲美術館のロビー

松山ライバル鉄道事情

 松山市駅に戻り、郡中線の電車で郡中港へと向かった。ずいぶん前に一度乗った路線だが、あの時は夜だったので初めてに近い。平日の昼前というのに3両編成、それもほとんどの座席がふさがっており、えらく盛況だ。

 どうしたことかと思っていたら、古泉駅にオレンジ色のジャンバーを来た人が大勢待っていて、乗客も9割方降りてしまった。駅近くに「エミフルMASAKI」なる、中四国最大のショッピングセンターがあり、それもこの4月26日にオープンしたばかりなのだとか。市街地の衰退が心配にはなるものの、電車で来られるのは環境を考えるとよい点。店側でも、駅からのシャトルバスを運行したり、無料乗車券を配布したりしているようだ。

 次の松前駅で下車。読みが自分の名前と同じ、ただそれだけの理由で降りてみた。ここも古い木造駅舎が建ち、駅員さんも詰めていてタイムスリップしたかのよう。「まさき」「まさき」「MASAKI」と立ち並ぶ駅名版が、何だか気恥ずかしい。

 終点、郡中港駅は、JR伊予市駅のまん前なので、JRで松山方面に引き返してみた。伊予鉄とは松山までライバル関係になるが、データイム15分毎の伊予鉄に対し、JRは普通列車が1時間に1〜2本、それも松山駅が街外れとあっては、勝負にならない。

 この駅までは電化されているが、宇和島方面からの直通なのでキハ32型の単行ディーゼルカーだった。「エミフルバブル」とも無関係だが、中間駅の駅勢圏は伊予鉄とまったく違うため、そこそこの乗客が集まる。特に「坊ちゃんスタジアム」最寄りの市坪からは、大勢乗ってきた。

 松山で軽く昼食をとり、さらに予讃線を上る。7000系電車の2両編成で、昼下がりにも関わらず車掌が乗っていた。ダイヤ改定直後にのみ売られている四国版時刻表には、ワンマン列車には注釈が入れてあり、これを見ると、九州に比べてワンマン列車が少ないのが分かる。四国運輸局が2両以上のワンマンを認めていないらしく、1両で運びきれない列車にはすべからく、車掌が乗っているのだ。経営的には厳しいだろうが、乗客にとって安心感があるのには間違いなく、「ワンマン天国」の九州人としては評価したい。

 7000系電車は1両運転対応、トイレもないレールバスのような電車だが、足は早い。あっという間にトップスピードに達し、ほぼフルノッチで駆けていく。予讃線電化は1993年だが、特急は従来での気動車でも充分早かったので、普通列車への恩恵の方が大きかったのではないかと思えるほどだ。

 予讃線はこの間、瀬戸内海とつかずはなれず、水平線を見ながらの旅となる。2両編成とあって余裕は充分。混んでいると落ち着かないボックスシートとロングシートの千鳥配置だが、これだけ空いていれば足を伸ばしてゆっくりできる。日常を離れての旅、万歳。



 


▲古びた駅にもICカードリーダー(松前駅)


▲走れば速い7000系
四国にも誕生・鉄道名所

 約1時間、今治着。愛媛県2番目、四国でも5番目の都市で、駅も立派な高架だ。高速バスの便には恵まれていないため、特急列車の乗降も多い駅である。

 駅前の大通りを見て、驚いた。片側3車線もある道路が、まっすぐに延びている。もちろん車通りはそんなに多くなく、1車線をパーキングチケットによる駐車場、1車線をその出入りに使っているため、実質の走行レーンは1車線しかない。並木はきれいだが、これだけの土地を準備するだけでも大変な労力と資金が投じられたはずだ。

 市役所や市民会館は1箇所にまとまっており、これらは丹下健三氏の設計によるシンボリックな建物群だ。それはそれとして、街らしい賑わいはどこに?と思い歩いていると、大丸百貨店に出た。前には四国らしい大きなアーケードが延びている。勢いのある街には見えないが、規模は大きな繁華街だ。

 アーケードを抜ければ港で、なるほど鉄道より海運を中心に発達してきた街ということが分かる。今治城は復元天主ということで、外から見るだけに留めておいたが、都会度と自然のバランスが良くて、住みやすそうな街という印象だった。

 ちょうど降り立ってから1時間後、15時44分発の電車も2両ツーマンだったが、下校の高校生で混雑。足は早い7000系電車だが、単線に毎時1本の特急と普通が走っているものだから、交換待ちでの停車は結構多い。松山〜高松間200km弱を2時間半で結ぶ特急に対し、普通電車は5時間近くかかる。

 伊予西条で下車し、昨年11月にオープンした「鉄道歴史パーク in SAIJO」に足を向けた。他社の鉄道博物館に比べればだいぶ小ぶりで、展示車両はDF50と0系新幹線のカットボディのみ。十河信二記念館と観光交流センターまで合わせて見ても、1時間の途中下車で充分な内容だ。

 とはいえ決して軽い内容というわけではなく、新幹線の生みの親・十河信二氏の展示は充実していて、新幹線に賭けた熱い思いを感じることができる。半分のカットボディとはいえ、新幹線車両も間近で見ると迫力があった。見学者数は予想より多く好調というが、この広さでは企画展などを行いにくいと察せられ、リピーターをどう呼ぶかが課題だろう。

 ふたたび7000系で予讃線を上り、観音寺で6000系の普通電車に乗り換え。わずか2編成しかない電車で、ラッキーだ。96年製ながら国鉄顔を持つ電車で、オール転換クロスシート。しかし経費節減のため増備車は他社からの中古車で賄われるようになり、少数派となってしまった。清潔な車内は、いたって快適だ。

 すれちがう電車は4両編成で、高松の近郊区間といった様相。ただ街が続くわけではなく、駅も無人ばかりで車掌が駆け回る。九州に例えるなら、観音寺が荒尾で、多度津が鳥栖といったところだろうか。

 多度津からの普通電車は国鉄時代からの121系電車で、いろんな電車に乗れて「車両運」がついている。やや背丈が低めのクロスシートが並び、国鉄とJRが入り混じる雰囲気だ。丸亀からは高架区間になり都市の電車の雰囲気だが、高架駅の宇多津でも車掌が切符を集めていたのには驚いた。もちろん日中には駅員が詰めているのだろうが、夜間の無人化はこんな都会の駅まで進行していたのだ。ワンマンにできず車掌を減らせない分、駅員を切り詰めているのかもしれない。

 坂出まで来れば、さすがにこの時間でも人が多く、乗り換えた岡山行きの快速「マリンライナー」も、座席にありつけず。中間の車掌台に腰掛け、海を渡る夜景を眺めた。周囲の乗客は、はっとするほどきれいだったコンビナートの夜景にも、闇の水面などにもまったく関心を示さず、普通に過ごしている様は、関西の新快速と何ら変わらない。7分にもわたり海を渡るなんて鉄道は世界的にも稀だと思うが、トンデモナイ日常はここにもあった。

 児島着。今日は児島のユースホステル泊の予定で、遅くなった旨電話で連絡したところ、ありがたくも迎えに来て頂けた。鷲羽山の麓までゆうに10分以上あり、歩いてもタクシーに乗っても大変だったろうと思う。GW中というのに、ホステラーは僕を含め3人。別々の部屋に通されたので、他のホステラーとは風呂場で一言交わしただけで終わってしまった。一人旅の寂しさを癒すため、1泊はYHや「とほ宿」を組み込むのを旅のスタイルにしているが、なんだか余計に寂しくなる。

 設備はオンボロだけど、寝て起きるだけなら充分。窓の外には瀬戸大橋の灯が、うっすら灯っている。週末限定で行われているライトアップは、今夜はなくて残念だったが、明日の朝が楽しみだ。行きかう船の汽笛を子守唄に、おやすみなさい。

 


▲やたら広い今治の駅前通り


▲大切にされている2両の展示車両


▲独特な7000系の点対称配置の座席


▲カーブを切り夜の瀬戸大橋へ

▼2日目に続く

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