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遠回り韓国
2日目
昭和の街へ


 翌日、起きてみれば12時。さすがにお腹の調子は悪いが、頭は重くない。外に出るのもおっくうで、昼ごはんは出前にした。昨日もだいぶおごってもらったし、出前くらいおごりますよと水を向けてみたが、いいよいいよと、先輩は伝票にサラサラとサインした。出前の店が会社と契約していて、お金もなんと会社持ちなのだとか。残業時の夜食を念頭に置いた決まりなのだろうが、「空腹は最大の不幸」のお国柄を垣間見た。

 具だくさん大盛りうどんを無理して食べれば、元気回復、街に出た。冷たい風が吹きつけ、福岡はもちろん、東京とも比べ物にならない寒さだ。今日の気温は氷点下前後で、現地人でも驚くほどらしい。寒さからかタクシーが盛況のようで掴まらず、駅に向かった。

 ソウル〜仁川を結ぶ京仁(キョンイン)線の、真ん中付近に位置する主要駅・富川。京浜間でいえば川崎、京阪間でいえば高槻といった位置付けだろう。電車線のみの複々線で、本数は少ないが急行電車も走る。運よく急行電車が来て、緩行線なら2駅の駅、松内(ソンネ)へもひとっとびだ。

 「G-BUS」のロゴを掲げた市内バスに乗り継ぎ、向かったのは「富川ファンタスティックスタジオ」。日本統治下に置かれていた30年代から、戦後復興期の70年代の町並みを再現した映画・ドラマのセットだ。現地では「野人時代セット場」の呼び名でも通じる通り、ここで撮影された代表作は、2002〜03年に放映されたドラマ「野人時代」。反日的な内容も垣間見られるドラマだったが、視聴率50%を超える人気だっただけに、当時留学生だった僕は寮生と共に見ていたものだ。

 入り口をくぐれば、そこは「昭和の街」。RC造5階建てのデパート「和信百貨店」や、日本式の懐かしい商店が並び、路面電車まで再現されている。ところどころ「妙な日本語」が見られるものの、細かい点に目をつぶればよくできたセットだ。

 これだけ寒くてはもうシーズンオフなのか、話に聞いていた食堂や売店などがほとんどなかったのは残念。路面電車も、しばらく動いている気配はない。それでも撮影は行われていて、その一角だけは盛り上がっていた。

 スタジオ見学を終えて出れみればもう夕方で、富川の新都心・松内でショッピングを楽しんだ。京仁線の駅からはだいぶ離れているものの、地下鉄の延伸工事が進行中。デパートやショッピングセンターのみならず、マンション(韓国ではアパートと呼ぶ)も林立していて、しかも韓国ではお馴染みの飾りっ気のないマンションではなく、外観の意匠にも気をくばった高級タイプが多い。発展著しく、そのうち川崎みたいに政令市の地位を得るかもしれない。

 韓国が寒いのは分かっていたのにコートを持ってこなかったのは、衣類が安い韓国で買おうという考えだったため。ファッションモールに入り、目を皿のようにして探せば、通勤にもプライベートにも使えそうなコートを見つけた。6万ウォンとお安めで、とりあえず他も探してみたものの食指が動かず即決。なかなか格好良く、その時は気に入った。

 が、旅行中にボタンが一つ取れ、二つ取れ…結局、ほとんどのボタンが消失。しかもベルトの金具が弱く、これも数日でダメになってしまった。ちゃんとした所で買えば多少の当たり外れはあっても「最低限の品質」は確保されている日本に対し、そうでないのが韓国。物を見る目がなければ、安くて良いものは手に入らない。

 コート代はカードで支払ったが、手持ちの現金は少なくなってきている。ここまで新生銀行の国際ATM引き出しを、いくつかのコンビニや銀行ATMで試してきたのだが、どこも通用しなかったのだ。こんなことじゃ困るなと思っていたが、ようやくコンビニ「Buy The Way」のATMで引き出せた。どうやら引き出せるか否かは、コンビニの違いではなくATMの機種によるようだ。今後は「My Cash Zone」を目印に。

 ただ帰国後確認したところ、銀行での両替よりだいぶレートが悪かった。悪名高き、仁川空港の高手数料込みのレートよりは安いかもしれないので何とも言えないが、金浦空港や市中銀行に寄る時間があるのならば、そちらに頼った方が良さそうだ。

 夜ご飯は、松内の新市街地のお店で、カムジャタンをつついた。僕のお気に入りの韓国料理の一つで、カムジャ(じゃがいも)と言いつつ、主役はゴロゴロと入った骨付き豚肉。いただきますと手を付けてみれば、なんだか妙な味。まずいとは言わないが、食欲はそそらない。
 「昨日までずいぶんおごってもらったから、ここの計算は私が!」
 と支払ったが、店を出た途端、権先輩と友人ともども、
 「すまん、入る店を間違えた!」
 「なんなんだ、あの味は」
 僕の舌も確かだったようだ。

 タクシーで富川に戻り、権先輩も平日の疲れを取らねばということで、一緒にチムチルバンへ行った。ガウンを着て入る低温サウナでごろごろ横になれる、気楽な韓国人のレジャーだ。個人的には、服にまとわりつく汗の感触が苦手で、併設の風呂に浸かる方が気持ちいい。近所に何軒かあるチムチルバンのうち、先輩も始めて来てみたという店だったが、温度がさっぱり上がらずに温まらなかった。どうも今日は、何かとはずれの日らしい。


 


▲まさに昭和の繁華街
(富川ファンタスティックスタジオ)



▲残念ながら路面電車はお休み


▲新しいショッピングセンターも続々


▲外れカムジャタン


▲新生銀行もOKのマイキャッシュゾーン

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