▲TOP ▲鉄道ジャーニー

北陸三県私鉄めぐり
1日目 あかつきの夜

ゴールデンウイークの旅立ち

 就職して2度目のゴールデンウイーク。自由な身だったころには、大混雑するGWの旅行なんて避けていたものだが、今の自分には貴重な連休だ。旅のムシがうずいてしょうがない。

 そんな今年のGW旅行の行き先は、北陸地方に照準を合わせた。親戚の家がある関係で、小学生の頃は2度も旅行した北陸だったが、それ以来まったくのご無沙汰だ。
 ところが最近になって北陸地方も、鉄道の話題が豊富。路面電車では、福井電鉄の路面電車車両導入に、加越能鉄道の三セク化と新車導入、さらにJR富山港線のLRT化など、活気を見せている。新快速の敦賀延伸や、京福電鉄の復活&三セク化など、他にもぜひこの目で見ておきたいものでいっぱいだ。もちろん、旅としての楽しみも忘れちゃいけない。

 そこで5月3日〜6日の4連休に加え、7日に有給休暇を取得。必死で指定券をゲットし、博多駅では時間をかけて「周遊きっぷ」を購入。「5泊4日」の旅の準備を整えた。5月2日、仕事場を定時退勤。いそいそと旅道具を詰め込み、午後9時、近所の駅へと出発した。





寝台特急は無視され

 近所の竹下駅に着いてみると、なにやら駅が騒々しい。千早駅付近の「人身事故」の影響とかで、鹿児島本線がストップしているそうだ。とりあえずバスで博多駅へ抜けようかと思っていたら、ちょうど次の電車から運行再開とのことで、博多駅へと上った。
 まさに運行再開したばかりの博多駅は、連休前の混雑とも相まって、大混乱だ。各方面の特急の乗車口には階段まで列が伸び、ぎゅうぎゅう詰めで発車していく。もっとも人身事故とあっては乗客も諦めの心境なのか、駅員に時間を聞く人はいても、不満を口にするはいない。ただ、黙々と詰め込まれていく。

 さて、僕が乗る京都行き寝台特急「あかつき・なは」も、当然遅れに巻き込まれている。当初43分遅れで鳥栖に着いたとアナウンスされたが、29分遅れにまで回復。
 「どんな運転したんじゃろうね」
 と、老夫婦は不思議だといった顔をしているが、鳥栖駅では連結作業のための長時間停車があり、その時間を切り詰めたのだろう。しかしその先、「寝台特急闇の時代」を象徴するかのように、遅れはどんどんと広がっていった。他の上り特急や普通が次々に到着しているのを見ると、途中駅でそれらに道を譲っているようだ。
 以上は、ホームの列車と電光表示板から推測した内容だが、放送はウンともスンとも言わない。いくら寝台特急の乗客が減っているとはいえ、今夜は一般B寝台が売り切れの盛況。ホームで待つ人は、不安顔である。いくら経営的に「お荷物」の列車でも、走らせている以上、利用者を惑わせない責任はあるはずだ。
 1時間後、「まもなく入線」が伝えられるもさらに遅れ、ようやく1時間10分後に入ってきた。明日朝の、姫路駅での乗り継ぎ時間は40分。まずアウトだろう。

 まずは最後尾の「なは」編成から乗り込み、「あかつき」編成にかけて車内を観察。売り切れが伝えられてたB寝台だが、全体的には7割程度の乗車率だ。個室車もさすがの人気で、寝台料金だけで1万を超えるA寝台個室すら、ほぼ満室。唯一空席が目立ったのは「なは」のB個室ソロで、6千円をはたいてこちらに乗ってもよかったかなと思う。
 熊本発「なは」編成はJR九州所属、長崎発「あかつき」は西日本所属で、各社の個性が1編成で現れているのは面白い。「なは」の個室は、在来線特急「つばめ」登場の頃に改造されたもので、なかなかお洒落な内装だ。
 もっとも連休前日の今日こそ賑わっているが、平日の乗車率は散々なものだと伝えられる両列車。せいぜい利用して、末永く活躍してもらおう。

 さて、僕の今夜の寝床は、機関車の真後ろの指定席車。「レガートシート」の愛称で呼ばれる、3列の座席車だ。
 3列独立の座席配置は、高速バスの座席配置を多分に意識したものと思われるが、さすが鉄道車両だけに、座席まわりのゆとりは充分。リクライニングはなんと電動で、水平近くまで倒れる。ただリクライニングをさせると、腰にかかる重心の位置が中途半端になり、だんだんと前へすべっていく。このあたりは夜行バスの座席が「専門」らしくうまく設計されていて、いっそバス用の座席を取り付けてもいいのではと思う。
 座席にはオーディオ装置が健在で、きちんと今月・来月の番組表まで備えられているのには感心した。他社の特急では撤去が進むこのテのサービスだが、ある設備は生かす方針のようだ。清掃も行き届いているし、JR西日本は比較的夜行を大事にしているように見える。もっとも、オーディオのメインスイッチは入れ忘れていたようだが…

 またこの車両には、編成唯一のロビーコーナーも設けられていて、自分の座席や寝台を離れたひと時を過ごせる。しかし博多〜小倉間では、通勤電車代わりに乗り込んだ乗客の座席代わりに提供されていて、本来の長距離客が追いやられた格好になるのは、遺憾だ。きちんと指定席特急料金の1,000円を徴収し、今後は乗ってもらわぬようにしてもらう他ない。

 小倉も過ぎ、車内は落ち着いてきたが、機関士のブレーキ操作が下手のなのか、停車・発車の時の衝撃は相当なもの。門司での機関車交換など、普通の人なら「事故か!?」と思うのではないか。運転は、くれぐれも慎重に願いたい。
 ほぼ真っ暗に減光され、その点ではよく眠れそうだ。明日の朝、劇的にダイヤが回復していることを願いつつ、まぶたを閉じた。
 


▲遅れ43分は、縮まり広まった


▲人であふれる特急ホーム


▲高速バスのようなレガートシート


▲今度は乗ってみたい「なは」のソロ

▼2日目[前]へすすむ

inserted by FC2 system