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北陸三県私鉄めぐり
2日目 福井鉄道&えちぜん鉄道 [前]

謎の蜃気楼列車 〜新快速湖北レジャー号〜

 朝を迎えたあかつき号だが、倉敷駅到着は1時間10分遅れと、まったく回復していない。JR西日本には、あまり無理な回復運転はしてほしくないし、少々回復したところで乗り継げないのは目に見えているから、もう諦めの心境だ。
 7時を前にした姫路駅の手前で、朝の放送が始まった。大阪、京都方面へ急ぐ乗客へは、無料で姫路からの新幹線乗り継ぎが認められ、このあたりの手際はスムーズだ。2時間遅れていない以上、規則上は何をしてやる責任もないわけで、改めて夜行を大事にしている会社なんだと認識した。
 僕は姫路で新快速に乗り換え敦賀に向かう予定だったが、新幹線で京都まで先行して特急に乗り継げば、ほぼ当初の予定に乗せられる。しかし姫路〜敦賀間の新快速に「乗り通す」ことも、今回の目的の一つなので、姫路駅にそのまま降り立った。

 姫路駅内の喫茶で軽く朝食を済ませ、8時10分発の新快速敦賀行きを待った。始発駅なので座席の確保は容易だが、案内が分かりにくい。12両の新快速のうち4両が敦賀行きなのだが、どの位置の車両が敦賀まで行くのか、分からないのだ。駅員に聞いてみれば前寄りというが、車外LEDには「近江今津」と出ているし、かと思えば車内では前寄りが「敦賀行き」と案内されている。
 まあいずれにせよ、切り離し作業中に乗り継ぐ余裕はあるだろうと、とりあえず前寄りに納まった。

 加古川までは抑え目の速度で走っていた新快速も、その先は全速力。複々線に入った明石からは、前方を塞ぐ列車もなく快調に飛ばしていく。駅ごとにどっと乗ってきて、12両ながら車内の混雑は相当なものだ。平日は通勤客で、さらに輪をかけたすさまじい混雑が見られるのだろう。
 実感したのは、駅ごとの停車時間のゆとりだ。これだけ多くの乗客が乗り降りしてなお、ワンテンポの間がある。速さが身の上だった新快速にも「改革」として課された、「ゆとりダイヤ」の結果に違いない。ちょっと、もどかし気がしないでもないが、安全のためなら持つべき余裕だろう。

 大阪からも大挙、連休のお出かけといった風情の乗客が乗り込んできた。特に子連れの乗客が目立つのは、すっかり車社会の地方都市から来た人間には新鮮だ。さわがしいが、GWの主役は彼ら。楽しい思い出を作って、将来も鉄道の乗客になってほしい。
 大阪を出て以来、線路端にはカメラの放列が敷かれている。さすが連休初日、日ごろ撮影に出られない人が押し寄せたのかなと思ったが、その数やハンパではなくなってきた。なにか、特別な列車でも走るのだろうか。
 京都では、「前8両は近江今津、後ろ4両が敦賀行き…」というような内容の放送が聞こえた気がしたが、なにせ騒がしくて聞き取れない。どちらも湖西線の列車なのだから、京都で切り離すわけないと思っていたのだが、本当に僕の列車は「近江今津行き」に変わってしまった。敦賀行きが続行するのだろうが、時刻表にそんな列車はないし、こんな運用をする意図が掴めない。どうなっているのだろう。

 とはいえ混雑の中で後方に移る余裕もなく、そのまま今津行きの人となった。西大津では通過列車待ち合わせのためとかで、待避線へ。まさか敦賀行きが追い抜いて行きはしなだろうかと心配だったが、やってきたのは485系の両端ボンネット編成だった。時刻表を見れば、今や貴重な新潟行き特急「ふるさと雷鳥」号。カメラの放列は、この列車のためだったのか!そんな珍しい列車なら、乗ってみればよかった。

 高架の湖西線を、快調に飛ばす新快速。もともとが高規格の路線だけに、JR宝塚線のような「無理」な「無茶」はない。むしろ、160kmくらい出してもいいんじゃないかと思うほど、余力がある。
 車窓右手には琵琶湖、左手には比叡山が見えてきた。車内のほとんどは行楽客だけに、みな車窓に見入っている。この新快速も、週末は志賀に臨時停車。「湖西レジャー号」の愛称を付けられ、行楽客を運ぶ。大阪の都心からでも1時間足らずで自然を満喫できるのだから、関西は恵まれた大都会だ。
 一方で、この環境かつ利便性を持ちながら、宅地化が進行していないのも、よいことながら不思議だ。湖西線開業前に比べれば当然、都市化は進行しているのだろうが、まだまだ開発余地は大きいように思う。平行道路は大渋滞で、これが原因なのか、それとも何らかの規制がかかっているのだろうか。

 この列車の終点、近江今津でようやく、後続の敦賀行きの乗り換え案内が流れた。中型時刻表には一切記載のない続行新快速なのだから、案内くらいは徹底してもらわないと困る。旅慣れたはずの自分さえ、焦ってしまったではないか。
 4両の敦賀直通は、8両の今津止まりの乗客も合わせ、相変わらずの混雑。ロックをを掛けられていた出入り口脇の補助席が使用できるようになったので、そこに腰掛けた。あまりよい座り心地ではない。永原から近江塩津間に、昨年までデッドセクション(直流⇒交流の電源切り替え区間)があったのだが、それも知らずげに新快速は通過。北陸本線と出会った。
 塩津では米原方面へ同一ホームでの乗り継ぎが可能だが、米原方面から乗り継いでくる人の方が多く、さらに混雑。通勤電車のような雰囲気で、新疋田へのループ線へと駆け抜けていった。特急やローカル電車の車窓だったこの風景が、新快速から眺められるとは、敦賀ももはや関西なのだろうか。

 山を抜け、敦賀へ到着。姫路から3時間以上、快速電車ながら「はるばる来たぜ」といった気分だ。わずか4両とはいえ、全員が降りればホームは人波で埋まった。
 この先、特急や普通で福井、金沢方面を目指す人が多いのかと思っていたが、ほぼ9割以上が改札を抜けていったのが意外だ。どうせ特急は大混雑だし、敦賀までなら新快速で充分、という人たちが列車を埋めていたのだろう。



▲2列車併記のヘッドマーク


▲明石海峡大橋を見ながら快走


▲山へ!


▲人溢れる敦賀駅新快速ホーム

元祖LRTはよりLRTらしく!〜福井鉄道福武線〜

 敦賀で特急「しらさぎ」に乗り継いだが、さすがはGW。少ない自由席は、ぎっしり満員だ。デッキは狭く、立つスペースが極端に少ない。そう感じるのはデッキやフリースペースが広い九州の特急に乗りなれているからで、こちら北陸の方が、本来の「特別急行列車」だろう。683系型車両は、お気に入りの車両の一つ。座れさえすれば、快適な列車だ。
 1駅目の武生で降り、ここからは福井鉄道福武線に乗り継ぐ。福井鉄道は基本的に郊外電車だが、福井市内では路面区間もあり、郊外電車が堂々と市内を行進する姿が名物だった。今風に言えば、LRTの奔りとも言える存在だ。それが昨年2006年に路面電車タイプの車両を導入、よりLRTらしくなった。その様子を見てみようというわけだ。

 それはいいのだが、JR武生駅を降りてみても福鉄の駅がよく分からず、迷っていたら電車を1本逃してしまった。ショッピングセンター・アルプラザの後ろに隠れていて、分かりにくかったのだ。福井〜武生を結ぶ都市間電車の福鉄だが、ターミナル駅ともいうべき武生新駅(新武生でないのが面白い)はプレハブ造、それもグレードが低いタイプのプレハブで、貫禄に乏しい。
 窓口で、同じく福井を中心に活躍する私鉄・えちぜん鉄道との共同フリーきっぷ・1,200円なりを購入した。こんな地域限定のフリーきっぷを簡単に探せるようになったのも、インターネットのおかげ。昔の情報源は雑誌「旅と鉄道」か、JR時刻表の「各地のフリーきっぷ」ぐらいだった。

 ややあって福井から到着した電車から、大挙して乗客が降りてきた。改札では、無人駅から乗った乗客から運賃を受け取っているが、250円以上の区間になる乗客には、
 「お帰りも乗られますか?」
 とわざわざ聞き、500円の1日乗車券を勧めている。土日限定のこの1日乗車券、福井〜武生間の運賃が390円であることを考えれば破格値だ。しかも5月3〜5日の間は、こども運賃が無料ということで、子連れの乗客も大勢。損害は小さくなかろうが、この先鉄道を利用してもらわねばならない、大事なお客様。10年先を見据えた、「損して得取れ」である。

 電車は、かつて名鉄岐阜市内線で活躍していた路面電車の車両。岐阜県の路面電車冷遇行政は時代錯誤だったと思うが、まだまだ新しい電車を譲渡された福井鉄道には、ラッキーな出来事だったろう。
 平行する北陸本線を横目に、武生新を発車。家々の立て込んだ住宅街を走り、路面電車型の電車が似合う風景だなと思ったが、ほどなく田園地帯に飛び出した。郊外電車そのものの車窓だ。PC枕木が並ぶ線路の状態は悪くなさそうだが、跳ねるように揺れ、運転士の体も右へ左へと振れる。ちょっとおかしい。

 沿線数少ない名所の西山公園駅には、臨時で駅員が出ているというので、なにかイベントでもあるのかなと下車してみた。木造の味のある駅舎を出ると、公園は丘の上。風流な庭園を登っていくと、「つつじ祭り」の真っ最中だった。茶室では茶会も開かれていて、いい雰囲気。なんでもこの公園にはレッサーパンダ君もいるそうで沿線の見所のひとつだが、男一人で行ってみても寂しいだけなので、次の電車に乗るため駅に引き返す。20分間隔なので、待つほどもなく乗れる。
 各駅停車が20分ごとに走るダイヤは便利に見えるが、1998年までは急行、普通が30分毎に交互運行していたことを考えると、減量されている。関西私鉄と同様、スピードで勝るJRが増発したため、点輸送から線輸送への転換が進んでいるようだ。

 次の電車は真っ赤な塗装でやってきたので、
 「名鉄時代の復元塗装かな?」
 と思ったが、コカコーラの広告電車だった。これはこれで、お似合いである。
 郊外の駅には、路面電車的雰囲気のものと、駅舎と駅前広場を持った鉄道タイプのもが混在していて、面白い。乗客は福井市内に向け増える一方で、満席の盛況だ。
 ホームはほとんど、路面電車型の車両に合わせて切り下げられており、路面電車型の電車になじんでいる。ただ朝夕には鉄道線型の車両も運行されており、これに乗るときにははるか高いステップを登らなくてはならない。路面電車型車両とてステップは高く、バリアフリーへは一歩遠のいたと言えるかも。単行の部分低床型電車もあるのだが、輸送力を持った完全低床型電車の導入が待ち望まれる。

 市街地に入ると正真正銘の路面電車となり、違和感がなくなった。信号待ちが多く、定時運行を守るには苦難が多そうだ。橋の架け替え工事を行っている関係で、余計に信号待ちが多いようだが、完成後には優先信号の導入などでスピードアップを図ってほしい。
 市役所前駅ではスイッチバックして、福井駅前駅へ。武生新〜田原町に福井駅前への支線が分かれている格好だが、昼間は田原町行きが、一旦福井駅前へ寄り道する格好になっている。二方面への需要を満たすには仕方ない運行形態だけど、せめて武生新から福井駅前へスルーで入れれば、まだもどかしさは少ないだろうと思う。
 福井駅前への道は幹線道路から外れ、両側に商店街が並んだ道を行く。この街路を、歩行者と電専用のトランジットモールに!という構想は以前からあり、実験も行われたようだが、現地を見ればなるほど実現可能なロケーションだ。反対も多いというが、ここでぜひ、国内初のトランジットモールを見たい。

 駅前では新たな乗客も迎え、市内電車としても活躍している。賑わいの少ない幹線道路を走り、終点田原町に到着。えちぜん鉄道と共同の木造駅で、ここはまさに郊外電車ターミナルの雰囲気だった。



▲出発前は念入りに清掃


▲単行の低床車は待機中


▲風流な西山公園


▲スノージェットをくぐる路面電車

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