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3日で完遂!スタンプラリー20
3日目

九州の裏街道を行く
特急にちりん&臼杵駅

とびきりのカラフル編成(日向市駅)

お洒落な車内は観光特急の名残

早朝の城下町・臼杵を散策
 せっかくやってきた宮崎県だが、すぐさま上り特急で折り返す。始発特急「にちりん2号」、485系電車の3両編成だ。赤一色だった一昨日の「きりしま」と違い、こちらはブロックパターンで更に派手やかに彩られている。車内も、一部の座席が同じように色分けされていたり、電話ボックスがあったりと、わずかながら他の485系よりグレードの高い車両だ。2000年まで、特急「ハウステンボス」で活躍していた車両である。

 早朝とあって乗客はまばらで、静かな田舎町を駆けていく。宮崎〜延岡間は線路改良がなされていて、ソニックほどではないが、まずまずのスピードだ。平行する高速道路がない分、この区間のアドバンテージは九州一ともいわれ、2枚きっぷの割引率もわずか。高速の延岡延長時には、安穏とはしていられなくなるだろう。

 延岡から先、佐伯までは流動の少ない県境区間だ。この列車もさらに空くかと思いきや、乗り込んでくる人の方が多く、3割程度の乗りになった。赤錆びた線路が痛々しい旧高千穂鉄道を左に、大分県へと走り出す。この区間、線路改良からも取り残されていて、レールを刻む音は小刻みだ。

 大分〜宮崎の県境区間は「民営化効果」から取り残されるどころか、年々寂しくなる一方の区間だ。普通列車は一時期、1日2往復にまで削減されたし、「にちりん」も昼間2時間間隔にまで開いたこともある。現在は1時間間隔に復したものの、博多、小倉方面への直通はほとんどなくなってしまった。車両は、「にちりんシーガイア」としてビュッフェ営業をしながら787系電車が走った時期もあったが、現在はハイパーサルーンと485系のみ。九州新幹線全通時には、なんらかの改善があるものと期待しよう。

 山を越え大分県の佐伯に着くと、その先は海を見ながらの旅。おだやかな海を前にした漁村はのどかで、途中下車の旅もおすすめの区間だが、佐伯〜臼杵間の普通電車も昼間1時間間隔から2時間間隔になってしまい、どうも利用しにくくなってしまった。

 石仏で有名な臼杵駅もスタンプ設置駅で、一旦下車して1時間後のにちりんまでフリータイム。石仏もよいが、市内の伝統的な町並みもよく、大学生時代には何度も通った街だ。勝手知ったる街なので、仁王座から臼杵城址へと、朝の散歩を楽しんだ。

 次の「にちりん4号」は、赤一色編成。5両と、なかなかの長さだが、乗車率は同じ程度だった。佐伯〜大分間も県費で高速化がなされた区間だが、改良は駅付近に限られていて、速達化は5分程度に留まっている。大分県南と県北の交通格差は、年々広まる一方。高速道路とJRの車両交代で、劇的な改善となるのか。次の10年を見守りたい。


都市圏輸送と観光輸送を併せ持つ
久大本線&由布院駅&ゆふいんの森

ちょっと格好悪いキハ220新系列(大分)
観光客を満載にして到着(由布院)
ゆとりのサロンスペース
 大分駅では40分の待ち合わせで、由布院行き普通列車に接続。大分都市圏の普通列車は4方面とも好調で、久大本線の大分口も1時間に2本程度は走るようになった。車両も、高性能気動車キハ200が増えてきている。

 そしてこの列車は、2006年夏に登場したばかりのニューモデル、キハ220の200番台だ。外観は、行き先表示機が幕から、バスタイプの大型LEDに変わったのが一大特徴で、視認性は向上した。見た目にはお世辞にもスマートとはいえず、ファンからの評判は芳しくない。

 しかし車内は近年のJR九州車両共通の、白と木目を基調にした、センスある落ち着いた内装だ。JR四国のお得意だったクロス&ロングシートの千鳥配置を採用しているのも目新しいが、さて利用者はどのような評価を下すのか。

 単行とあって満席で、僕は、ドア横にある木製の椅子に腰掛けた。この席、着席と立席の中間程度の位置づけのようで、さすがに長時間乗るときつい。大分都市圏と呼べるのは由布市狭間町の向之原くらいまでなので、そのあたりまでには「ちゃんとした座席」に移れるかなと思っていたが、これが意外と空かない。さすがは三連休、旅行者の方が多勢のようだ。

 約1時間、硬い椅子に耐え、由布院着。磯崎新氏設計の、黒い木造駅舎に到着した。さすがに、観光客でいっぱいだ。すっかり全国区の観光地となった湯布院だが、地元はもちろん、JR九州の功績も少なくない。ちなみに駅名は「由布院」だが、町名は「由布市湯布院町」だ。書き間違いではないので、念のため。

 さて湯布院での時間は、40分弱。男一人で観光する街でもないし時間もないので、駅近くの乙丸温泉館で温泉に浸かった。わずか100円、観光地湯布院だけど、こんな庶民的な顔もある。

 由布院から大分の折り返しは、特急「ゆふいんの森」。この列車も、スタンプ設置の列車だ。本当は博多〜由布院間くらいは楽しみたい列車なのだが、行程の都合でこの区間しか乗れなかった。

 「ゆふいんの森」の主たる役割は、福岡方面から湯布院への観光客を送り込むこと。このことは、3往復のうち1往復のみが別府行きで、残る2往復は由布院止まりであることからも分かり、由布院〜別府間はガラガラになるのが常だ。3連休最終日とはいえ、博多から到着した「ゆふいんの森」からは、今日も大挙して観光客が降り立った。

 ところが今日は、由布院から乗り込む人も相当数に上り、6〜7割の乗車率に上った。さすがは3連休、北九州や関西方面へ帰る人も多いようだ。これだけの乗客がいる三連休なのに、JR九州内の指定席料金は「繁忙期」どころか「閑散期」として設定されていて、指定料金はわずか300円。安く乗れるのはうれしいけれど、500円とっても罰は当たらない気がする。

 さて、いつもなら閉店準備といった風情になるビュッフェも、第2のピークを迎えた。それでも折角だから、昼ごはんは車内で食べたい。待つこと10分ほどで、ようやくパリパリ焼きそばが出てきた。ビュッフェ横のテーブルつき「ボックスシート」が空席だったので、食堂車気分で使わせていただいた。

 この「ゆふいんの森3号」は「T世」ことキハ71系による運行だ。JR発足間もない89年の登場だから、もう18年にもなるが、内装のリニューアルや機関換装を繰り返していて、古さは感じさせない。個人的な感覚でしかないが、「V世」ことキハ72系よりも人気が高い気がする。

 ただエンジンのお疲れは出ているのか、小野屋駅に到着した列車は、エンジン不調のため進まなくなってしまった。前記のような事情で大分から「ソニック」に乗り継ぐ人が多いため、すぐさま車掌が乗り継ぎ客数の調査に回り始めた。僕もソニックに乗り継ぐ予定ではあるのだが、所詮遊びの旅。申告は控えた。

 さいわい不調も収まったようで、約10分程度の遅れで走り始めた。ソニックにも接続するようで、まずはめでたし。大分駅での乗り継ぎは別ホームで、乗り継ぎマラソンはせわしなかった。


青と白の競演
ソニック&中津駅

また顔つきの変わった青いソニック(中津)

やさしい顔の白いソニック(中津)

なにかと重宝するフリースペース
 息を切らし乗り継いだソニックは、883系の7両編成。長い編成に助けられ、通路側ながら空席を見つけるこができた。スタートダッシュはすばらしく、大分〜別府を9分で結ぶソニックの威力には、毎度感服させられる。別府からは温泉帰りの乗客も乗り込み、ほぼ満員の盛況になった。

 883系も登場12年になるが、全編成のリニューアルが完了し、白くつややかな内装から年齢は微塵とも感じない。派手すぎとも思われた赤・青・緑の耳型ヘッドレストも、落ち着いたナチュラルな色彩に改められた。僕はリニューアル後の内装の方が好感を持てるが、以前のソニックが完全に消えてしまったのも、寂しいといえば寂しい。特に子供への受けは抜群の車両だっただけに、鉄道趣味界の今後を考えた時は痛手かも。デッキ部はリニューアル前そのままの姿を留めているが、アンバランスな感は否めない。

 博多〜大分間のスピードアップもこの列車の大きな功績で、「2時間切った」のキャッチフレーズとともに、1時間59分運転を誇った時期もある。「ゆとりダイヤ」で現在は2時間1分となっているが、高速バスに対しては10分少々のアドバンテージがある。ただ高速バスには天神直行という強みがあり、勝負は互角。おかげで料金競争も熾烈だ。4枚きっぷの価格1万円は、正規価格に対して実に6割引。いずれにせよ、国鉄時代には考えられなかったことだろう。

 緑豊かな国東半島の付け根を駆け抜けること45分、大分県北の主要都市、中津に到着。次の列車は35分後なので、スタンプを押せば後は駅前を歩くくらいの余裕しかない。

 次のソニック32号は、885系の「白いソニック」。1両短い6両編成のため、混雑は輪をかけてひどく、デッキのフリースペースに収まった。閑散期には気分転換の場として、混雑時には立つことよりも快適な簡易座席として使えるこのフリースペースも、JR九州オリジナルの考え方。特に特急が快速代わりに利用されている福北間や博多〜佐賀間などでは、重宝する空間だ。

 行橋でも大勢乗せて、いよいよ快速電車のような雰囲気になったが、今日の乗客のメインは博多方面よりも、小倉で新幹線に乗り継ぐ乗客たち。人波にもまれるように、雑踏の小倉駅に降り立った。

レトロタウンから都会のローカル線に
門司港駅&香椎線

威風堂々の重要文化財(門司港)

頭端式ホームで乗客を待つ(門司港)

湾の向こうには100万都市の灯火(西戸崎)
 雑踏の特急ホームや新幹線コンコースに比べ、普通電車がメインのホームは日常の延長。いつもの通勤電車、811系に乗り、鹿児島本線の始発駅、門司港へと上った。

 いつも乗っている811系電車とはいえ、登場時のことを思い返せば新鮮だ。89年当時といえばすでに鹿児島本線に快速が走っていたが、車両は狭いボックスシートの415系か、新しいがロングシートの415系1500番台のみ。そんな中現れた転換クロスシートの811系は、「これに乗車券だけで乗っていいの?」と思ったほどだ。

 その後の増備は3両編成の813系にシフトし、4両固定の811系とともに、3・4・6・7・8・9両編成を組み、柔軟な車両運用を可能にした。いずれも転換クロスシートで、一方ではロングシートの415系もラッシュ時の輸送用に現役で活躍中。一時は撤退した快速にも復帰している。ロングかクロスか、論争の火種となりやすい座席問題は、当地でも熱い。

 小倉北区から門司区へ、山まで迫る住宅を見ながらゆらゆらと門司港駅へ。頭端式のホームの奥にそそり立つのは、重要文化財・門司港駅舎だ。重文指定は民営化の1年半後。以後、駅舎は雰囲気を壊さぬようリニューアルされ、周辺の「門司港レトロ地区」の整備へと発展していった。

 僕がこの駅をはじめて訪れたのは、夜行急行「かいもん」に乗るために訪れた小学6年生の時。ライトアップされたその姿は、幼心に建築って美しいと思ったものだ。今、建築技術者として仕事をしている自分の原点とも言える駅で、思い入れは大きい。

 門司港には、今や「九州鉄道記念館」まで生まれ、鉄道好きとしても見逃せない街になっている。この先の行程の都合で、今すぐ折り返しても、1時間ほど散策してもゴールの時間は同じなので、ゆっくりと門司港周辺の町並みを散策した。

 小倉まで普通電車で戻り、例によって自由席開放されたソニックの指定席に乗り、香椎へ。福岡市東区の中心として賑やかな香椎の街だが、ここから内陸は宇美へ、海辺へは西戸崎へと走るのが、香椎線だ。西戸崎がスタンプ設置駅となっているので、往復する。

 車両はキハ147系が、やはりワンマン運転で活躍中。香椎線はこの車両ばかりで、鹿児島本線や、長者原で交差する「福北ゆたか線」を行き交うスマートな電車に比べると、見劣り感がある。通勤帰り、買い物帰りの客でさらりと埋まるものの、せいぜい乗車率50%程度といったところで、午後6時という時間を考えると寂しい。

 国鉄時代は1時間に1本程度だった列車本数は、民営化後に20分間隔へ増発。その点では、民営化効果がもっともよく現れている路線とはいえるだろう。ただ車両面では、ジョイフルトレインの「アクアエクスプレス」や、キハ200系が活躍していた頃を考えると、現状はちょっと寂しい。キハ200系の高性能は山岳路線で生かすべきという現実的な判断があったからこそなのだが、香椎線の条件に合わせた「中性能」程度の新車導入を待ちたい。

 そこそこ都市圏路線らしさを漂わせていたのも奈多までで、ここで一気に空いた。まだ福岡市東区内とはいえ、博多湾越しに見える市内の明かりが、なんだが別世界のようだ。都会のローカル線という言葉がぴったりだが、車両の更新時期には817系電車にも負けないような、「海の中道線沿線に住んでみたい!」と思えるような、そんな車両を期待している。

 揺られること25分、西戸崎駅着。コンクリート打ち放し、ガラス張りで、内部からの照明で浮かび上がる姿が洒落た駅舎は健在だ。この時間、こんな駅でも、スタンプは順番待ち。参加者の多さを物語っていた。

将来安泰・有望な純通勤路線
筑肥線&唐津駅

筑肥線の新顔はブッラクフェイス(唐津)

都市型通勤電車も末端ではガラガラに

人気少ない高架駅(唐津)
 香椎駅に戻り、鹿児島本線下り普通電車で博多駅に出れば、午後7時をまわり11分。このまま帰れば明日も無理なく出勤できるのだが、スタンプポイントはまだ1駅、唐津駅が残っている。唐津くらい、福岡市内の自宅から往復しても、いっそ車を飛ばしても難ない距離にあるので後日に回してもいいのだが、「3日で完遂」の命題を打ち立てた以上、できない相談だ。一念発起し、地下鉄博多駅へと降り立ち、240円のきっぷを購入した。博多〜姪浜間は福岡市営地下鉄の区間。フリーきっぷがあろうとも、別計算となる。

 さすがは福岡の中心を走る地下鉄だけに、香椎線とは比べ物にならない混雑だ。そんな車内を掻き分け、何やら車内アナウンスを真似しながら歩く不審な男がいて、車内が凍りつく。英語のアナウンスまで完璧で素人には見えないから、劇団員かなにかの実践練習なのだろう。勝手にそう納得した。

 いつもの地下鉄だが、電車はまだ3編成しかない、少数派の303系。筑前前原以西のワンマン運転に非対応なので唐津行きには入らないものと思っていたのだが、こうして朝夕は足を伸ばす列車もあるようだ。座席は1席ずつ独立しているのが目をひき、同時期の815系電車に通じるところがある。もちろん6両固定編成、4扉という大都市仕様の電車は、JR九州だとここ筑肥線だけの存在。他路線の車両とは、そもそものスタートが違う。

 姪浜を出れば、JR筑肥線に。地下鉄との直通開始は83年からとはいえ、路線そのものは古いので、昔ながらの駅舎が見られる駅と、新しい施設の駅が混在している。九大学研都市や前原の駅舎は真新しく、大都市の勢いを感じさせるが、下山門や今宿だと、ディーゼル時代の筑肥線を連想させる雰囲気が残っている。

 前原を出れば、後はローカル線的な雰囲気。昼間ならば玄界灘の海原が広がり、がらがらのロングシートから眺めるのもオツなものなのだが、この時間では漆黒の闇。それでもところどころに漁火が灯り、旅気分にさせてくれた。

 筑肥線は地下鉄直通と、約1時間の中距離輸送を両立しなければならない、特殊事情がある路線。国鉄時代から「地下鉄直通」重視で、特急の大衆化が深度化したJR化後も、特急の運転実績はない。快速は一度消えたのち、土休日限定で2003年に復活。もっぱら103系が使用され、快速区間ではモーターをうならせ迫力ある走りを見せてくれる。

 ただロングシートというのはチト辛いし、姪浜からは各駅停車なので天神、博多、空港まではやや時間がかかる。中古車でもいいから特急運転できないものか、せめて地下鉄区間での快速運転は実現できないかな… と、次の20年の成長に思いを馳せた。

 博多から1時間20分、国鉄標準設計の高架駅、唐津着。みどりの窓口でスタンプをペタリ。全ページ…揃ったぁ!

 景品はスタンプ帳を郵送して後日受け取ることになるが、ひとまず4駅のスタンプでもらえる「JR九州列車シール」を貰うため、駅員さんに申し出た。3日間の苦労を労われた。折り返しの空港行きも同じ車両、同じ車掌で、
 「すぐ引き返してるね!」
 と突っ込まれた。

 帰りの列車は、なぜか筑前前原駅で10分停車。前原以西での単線ダイヤと、姪浜以東の地下鉄ダイヤに合致させるため、時間調整を行う列車もあるようだ。都市型ダイヤではない。

 再び地下鉄に戻り、22時21分、博多着。短くも長い旅は終わった。

エピローグ
博多駅4番乗り場

残念ながら親子は見学のみ(博多)

京都へ旅立つ青い特急(博多)
 近所の駅に帰るため、JR博多駅に上がると、ちょうど京都行き寝台特急「あかつき・なは」の発車時刻だったので、見に行ってみた。
 3連休最終日にも関わらず、待つ人はわずか。入ってきた列車も、かなり空いているようだ。しかも唯一の家族連れの乗客だと思っていた4人は、記念撮影に来ただけだった。関心を持ってくれているだけ、救いだけど…

 思えばJR化後、食堂車の廃止、運行区間の短縮、列車そのものの廃止など、寝台特急は縮小の一途。九州から関西・東京を結ぶ列車は、とうとう1往復ずつになってしまった。この1往復とて、さていつまで安泰でいられるのか、心もとない。
 JR20年、わくわくさせられる列車が多く生まれたけど、一方であたりまえと思っていた旅が、随分とできなくなってしまった。10年後、20年後、後悔する前に、乗れるうちに、乗っておこう。
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